新・近接武器、剣について
お久しぶりです。下書きに眠っていたのを書き終えました。
本小説の一番初めの考察対象は剣でした。
「なぜモンスターと戦う世界で、対人専用兵器である剣という武器がメジャーとなったのか」というテーマで2000文字程度書きました。
剣は歴史の中で対人用として開発され、そのサイズも人体に対して有効なように設計されているため、モンスターとだけ戦うのであれば他の武器や他の形状になっているのではないかという内容です。
私としては軽いジャブというか、この小説ではこういう事を話していきますよという導入のつもりだったのですが、この話題に関して多くの反応を貰いました。
直接感想という形で読ませていただくこともありましたし、別の場所で引用、議論がされていたログも何か所で見ました。
しかしながら、残念なことにそれらの中では納得のいく答えを読むことはできませんでした。
私が本編で出した「携帯性と汎用性に優れた武器だから」という説が良い物であると言うつもりもありません。すでに書いてある通り、穴だらけです。
だからこそ読んでくれた人が反論しようと思い立ってあれこれ考えてくれたのではないかとも思いますが、実はこの問い、こういった形式では答えは出ない類いの問題です。
今回はあれから5年たち、ファンタジー小説のほぼすべての話題に触れた今、再度この問題について考えてみようという話になっています。
・抱える問題はガンダムと一緒
何故この問題には答えが出ないのか。
それは剣を持つというのが書き手、読み手側の都合によってつくられた設定だからです。
何故ファンタジー小説の登場人物が剣を持つのかという問題は、何故ロボットアニメでは主人公が巨大人型兵器に乗って戦うか、と同じ種類のものと言えるのではないかと考えています。
この巨大人型兵器についての質問は、特にひねくれ始める中学生くらいの時に、多くの人が一度はロボットアニメ好きの友達にしたことがある、されたことがある、もしくは調べてみたことがあるのではないでしょうか。私はあります。
ロボットアニメというジャンルが誕生して50年、様々な巨大ロボット兵器が登場しましたが、何故巨大ロボットが必要なのか、そして何故ロボットは人型なのかという問題を普遍的に説明した作品は私が知る限りではありません。
そもそも人体という形は弱点を前面に大きくさらけ出す構造上、あまり戦闘に適した形態とは言えません。巨大化は弱点を広げるものと言えるでしょう。
そして、二足歩行というのも巨大化に適していません。なぜなら、巨人についての話でも書きましたが、接地面は身長比の2乗になるのに対して体積は3乗で増えていくからです。
使用している金属がよほど少なさそうな、巨大ロボットよりもずっと軽そうな戦車でさえ、履帯によって接地面積を増やしています。
兵器と言う視点から見れば、巨大人型ロボットである必要性は無いのです。
そこで機動戦士ガンダムではミノフスキー粒子という架空の物質によって近接戦闘をせざるを得なくなったという設定が作り出されました。他にも宇宙空間で姿勢制御がしやすい、人型の方が人に与える感情的に有利、汎用性や地形の踏破性能が高いという説も見ることができます。
こうなっていれば、まぁそういうことならと中学2年生くらいのひねくれた視聴者も引きさがります。
またフルメタルパニックという作品でも、ネタバレになるので伏せますが、全く違う方向性で人型である理由が語られています。
巨大人型兵器が設定上欠陥を持っているというのは製作者側は知っていて、それを埋めるような設定を作っているのです。
このようにそれっぽい設定があるロボットをリアルロボットと言います。
リアルロボット系作品はメカの項目一つ一つに数値が設定されていることも多く、それを読んだりメカ同士で比較するのも楽しみ方の一つとなっています。
とはいえ、こういった設定による回避はその作品のみでしか通用しません。
作品のみとはどういうことかと言うと「じゃあなんで銀河英雄伝説とかスターウォーズなどの作品では巨大人型兵器が登場しないのか」という事です。強いなら使えばいい、開発すればいいじゃんという話になってきます。
つまり巨大人型兵器が巨大かつ人型である理由を説明するには、必ず頭に"その作品では"とつくことになるのです。
もちろん作中の設定によらない普遍的な理由を述べることもできます。
元も子もありませんが、制作側からすれば人気のシリーズ(もしくはジャンル)だから、その方がおもちゃが売れるから、迫力のある絵作りができるから、ロマンがあるからという理由があることでしょう。
そして消費者からすれば、かっこいい、メカメカしいのが好き、という単純な理由があります。
ここら辺には、宗教と芸術の関わり合いを書いた話と同様の物があります。
売り手と買い手の都合と嗜好が合致していて、それで現実世界でお金が動くから、作品の中の主人公は巨大人型兵器に乗って戦うのです。
合理的と言えば合理的で納得できる説明ですが、身も蓋もない嫌われるタイプでもあります。
つまり、こういった舞台設定についてはある程度スルーされるべきで、お互い、作品ごとに理にかなった設定など本来は誰も求めていないのです。ただそれだと作品の説得力が落ちるという理由で、様々な設定が生まれていったのだろうと考えられます。
何故と聞かれたら制作側は答えるしかありませんし、逆に言えば設定に深みを持たせられるチャンスでもあります。
・
前置きが長くなりましたが、これがあの、"近接武器、剣について"を読んでいて出てくる違和感の正体です。
冒険者たちが剣を持っているのはファンタジーだからです。ファンタジーは騎士道物語に起源を持ち、ゲームという媒体を通して我々の前に現れました。
だから主人公たちは一見不合理な剣という武器を持って、出なくてもいい旅に出て、挑まなくてもいい怪物に挑むのです。
すべては読み手と書き手の合意の上でスルーされている要素です。
それに対してわざわざ疑問を投げかけ、そして、一つの作品上の設定に収まるような理由をさも普遍的なように語ったからこそ――これはこの小説全般でそういうスタンスなので見逃して欲しいところなのですが――、色々な議論が生まれたのだと思います。
しかし、だからこそ、ある程度のリアリティを求めるタイプの作品であるならば、剣を持つ理由は説明されなければならない要素であるとも言えるでしょう。
ロボット作品ではジャンルがリアルロボットとスーパーロボットに分かれていて、前者はリアリティを重視するために事細かに設定が付き、後者ではノリと勢いを重視するために省かれます。
昨今の傾向的には"リアルファンタジー"が広く好まれています。
魔法が打ち出される原理やそのエネルギーの正体が長々と語られる作品は、非常に多く見ることができます。これはロボットが発射するビームがどのようなエネルギーがどのような機構から打ち出され、どれくらいパワーがあって、どのような性質を持っていているのかという話と同じ種類のものです。
であるならば、剣を持つ理由も同様に語ってもいい、語られなければならないということになります。
元は私も"前提としてスルーしているけどよく考えたらおかしい"の一例として、この話題を出したかっただけなので、そこまであれこれ書こうとは思っていませんでした。メタ(高次元の)視点での疑問を作中の設定によって上手く拾おうというのがこの小説の趣旨の一つです。
しかし、何故と聞かれたら製作者側は答えなければならず、答えたくなってしまうのが製作者というものです。
そんなわけで、本当に色々な意見がありました。
もともとメタレベルでしか答えがでない(ロボットアニメのロボットは何故巨大なのかというような)質問に、低次なフィールドでの答えを要求するという非常にねじれたテーマではあるのですが、せっかくいろんな考えを貰ったことですので、それについて考察してみたいと思います。
ここからは、何故冒険者が剣を持つかと言う質問は、メタレベルでの回答以外では答えは出せない、作中で設定が語られるべき代物であるという事を述べていくパートだとも言えます。
そのため批判的な論調となってしまいますが、今までと変わらず、"こうでなくてはならない"というような考えは持っていません。ご了解ください。
・前提
まず前提として、どのような状態を想定するかという事を決めておきます。
これはなろうファンタジーによく登場する一般的な冒険者が置かれている境遇、というものを設定したつもりではあるので、そこに対しての異論はあまり見られなかったように思います。
本小説一話の中で想定した冒険者は次のようなものです。
「剣を主な武器として持っている。
冒険者は基本的にモンスターを対象に戦闘を行う。
旅をする必要がある。
様々な地形で戦闘を行う必要がある。」
実はここに色々手を加えてこの問題を回避するのが一番楽だろうとは思うのですが、よく見る冒険者の性質に当てはめて考えたいというのが第1話の主旨でしたので、とりあえずはこのままいきます。
あとは冒険者は我々と同等がそれ以上に賢く、ある程度の時間を生きてきた業種である、という前提を付け加えたいと思います。
もちろん個々のキャラクターで見たらその限りではないでしょうが、その世界で冒険者という職業が一般的なら、その団体は歴史の中である程度合理的な選択をし、セオリーを生み出しているはずです。
戦術や価値観、"型"と呼んでも良いですが、とにかく冒険者は私たちより真剣にモンスター退治に取り掛かり、「どうしたらより安全に、より効率よくモンスターを狩ることができるのか」という事を日々考えている存在とします。
「そういう存在でなければそれはリアルではない」とするのは異論はない事だろうと思います。
自分の命がかかっているのに雑な理由で武器は選択しないだろうし、そういった経験や知識が蓄積されて冒険者という業界が出来上がり、社会に組み込まれていくだろうと考えられるからです。
・何故剣ではダメか
このページの始めでも軽く触れましたが、何故冒険者が剣を持つことが不思議なのか、一通り書いておきます。
剣は対人戦闘を行うために生み出されたという歴史があります。これは斧や槍の発生と比較しても明らかで、他の道具よりもずっと後に登場しました。
もちろん必要技術の高さと言う要因もありますが、剣は斧や槍、弓といった他の武具と比べ、その他の使用用途が見当たらない道具です。
一方で、剣を生産する技術が無くても、対人戦を行うために剣を生み出した文明があります。
それはアステカです。
中南米の文明は鉄やそれに類する金属を持っておらず、また立地的に孤立していたため、冶金技術を所持していませんでした。しかし戦争を積極的に行わなければならない、部族を形成する民族にありがちな統治構造をしていたため、強力な対人用武器を作ることになります。
それがマカナというこん棒に黒曜石の刃を並べて作った剣です。マカナは四肢を切り落とすことができるほど強力で、エリート戦士が所有していたといわれる武器です。アステカの指導者は原材料である黒曜石を管理することで統治を強固なものにしました。
アステカのように剣に適した素材が無くても、対人戦闘を頻繁に行う民族は無理矢理剣を作るのです。そしてそのマカナという剣はやはり欧州アジア各地域が生み出した剣と同等のサイズを持ち、また他の用途に使用されたような記述は見ることができません。
このことからも剣は対人戦闘のために作り出される武器と言えます。
ここから、何故モンスターとばかり戦う冒険者が剣を持つのかという疑問が出てきました。
人と戦わないのであれば、もっと適した武器を選択すべきなのではないか、という事です。
なにせ少しのミスで命を落とす、文字通り命がけの世界なのです。
万全を期して準備され、武器も最も適したものが選択されるはずです。冒険者はモンスター退治の専門家として社会的な立ち位置を得ている場合がほとんどなので、あやふやな理由では困ります。
現代に置き換えるならば、スズメバチの駆除を思い浮かべてみてください。
駆除を担当する業者さんは、それ専用に開発された白い防護服をばっちり着込み、専用の道具と手順を用いて、素早く安全に巣を撤去していきます。
手作りか既製品かは様々だとは思いますが、薬剤がないから他の害虫用スプレーで代用しようとか、遠距離から放水して撤去しようとか、ゴミ袋で作った防護服を着ようとか、そういったことはおそらくしないだろうと思われます。
これはなにもスズメバチだけではなく、自然界に生きる動物を相手取る人々すべてがそうです。
罠狩猟なら適した罠を適した場所に仕掛けるでしょうし、釣りなら狙う魚によって仕掛けや場所、竿の動かし方を変えると言います。
命を脅かされることが少なくあらゆる技術が進歩した現代でもそうなのですから、更に危機的状況で活動する冒険者がいい加減な理由で武器を選択するはずがありません。
冒険者がいい加減な理由で剣を選ぶはずがないので、おそらくはちゃんとした理由で剣を使っていて、ではそれがなんなのか、というわけです。
本小説の一話では対ゴブリン戦専用の小ぶりの剣、ゴブリンソードが生まれるのではないかということや、人型のゾンビのようなモンスターが沢山襲ってきて剣や剣術が開発され、そこから普及したのではないかと書きました。
武器のサイズは武器の威力と密接にかかわっているので、一般的な剣、いわゆるロングソードと言われる程度のものが普及しているならば、そのようなモンスターが沢山いる状況でなければならないと考えたからです。
また、旅をするので様々な状況に対応できそうな剣が選ばれたという経緯もありそうです。
しかし、当然のことながら「設定による要素」を持ち出した強引なこの答えに納得しなかった人は多かったようで、それ以外の理由を考えていただきました。次からはそれらの意見を検討していきます。
複数の理由を合わせて考えていた意見もありますが、基本的には道具としての性質やその道具を選ぶ理由は武器に限らず、一つの目的に特化することが重要、つまり汎用性よりも専門性が重視される傾向にあるので、一旦は除外します。
・武器として優秀
一番多かったのはこの意見です。
剣という武器は斬るという攻撃方法の他に、払う、突くなどの攻撃ができるために、武器の機能として優秀なのではないかということです。
私自身は武器と呼べる類いのものを見ることがあっても、握ったことも振ったこともないし、ましてやそれで敵と戦ったこともないので実際のところ何とも言えないのですが、例えばハルバートと呼ばれる武器ではダメなのでしょうか。
ハルバートとは槍の横に斧が付いた、日本語だと斧槍と書かれることもある武器です。
一般的な説では、突く、薙ぐ、叩き斬るという動作ができて、更に馬上の人間をひっかけて引きずり下ろすこともできるという優れた武器とされていますが、反面扱いが難しいとも言われています。
この武器で活躍したのがスイスの傭兵です。スイス傭兵は中世から近世のヨーロッパで戦局に影響を与えるほど強力な軍隊です。スイス傭兵が描かれた絵を見ると、ハルバートやパイク、フレイルを持っているのが分かります。
武器として剣が優秀なら、何故彼らは剣を持たなかったのでしょうか。そして、何故冒険者はハルバートではなく剣を選択したのでしょうか。
スイス傭兵がハルバート、パイク、フレイルを持っているのは、基本的には鎧を着こんだ騎士を敵として想定しているからです。彼らも万能だからハルバートを選んだわけではなく、おそらくは敵を絞って、専用の道具としてハルバートを選択したのでしょう。
武器としての優位性を理由として語るのは、少々物足りなさがあります。
・取り回しの良さ
これは本小説でも理由の一つとして挙げたのですが、冒険者は旅をする上、洞窟や森など、自由に武器が振り回せないから剣を選んだ、という意見も多く見られました。
確かに槍に比べたら短いので、その点では剣が優れているとも言えます。
しかしこれも疑問です。
例えば武士の武装です。
武士は太刀の他に、破損に備えて脇差と呼ばれる刃渡りの短い刀をもう一本携帯し、屋内戦や森の中ではそれを使用したようでした。
どうやら太刀は狭いところでは使えないらしいというのが分かります。おそらくですが、ロングソードも太刀も長さとしては同程度でしょう。
アニメやゲームのように、都合よく大剣でも槍でも振り回せるほどのそこそこ大きな洞窟や遺跡、そこそこ木と木の間が空いた森が戦場になればよいですが、今回はそういう話ではありません。
冒険者が剣を使用できない状況を想定していないのはおかしいのです。
・携帯性や耐久性
携帯性という面で優れていると考える人もいました。
ただ普通に考えれば、長い物というのは基本的には携帯性はよくありません。
傘を考えてみれば、折り畳み傘で雨をしのげれるならそれで済ませたいと思うことでしょう。展開していない傘でも四六時中持って歩くのは行動を制限されます。
ナイフや斧の方がよほど軽そうですし場所もとりません。
あまりきた意見ではないのでまとめてしまいますが、生産性や耐久性、メンテナンス性という面ではどうでしょうか。
これもまた、刃渡りの短い武器の方が優れていそうですし、人ひとりと戦うとボロボロになるといわれる、史実の太刀を思い浮かべてみると難がありそうです。
・攻撃以外の使用用途が色々あってそれに適している
ちょくちょく見かけたのがこの意見です。
冒険者は色々なフィールドで様々な活動をするので、剣が適しているという意見です。
挙げられていた意見の中では、柴を払って道を拓いたり、モンスターや動物の死体を解体することができると言われていました。
今までの流れ的にお分かりかと思いますが、これも不自然です。
話に聞く限りでは、刃というものは欠けやすいものです。
刀はすぐボロボロになるという話はよく聞きますし、サバイバルナイフで薪を割るときはよほど注意しないと刃こぼれするという話があります。木をどうにかしようという人は、斧や鉈を使っています。
そもそも心理的に、雑な使い方ができる道具ではありません。
また、解体もそんな刃物一本でできるほど楽な作業ではなさそうです。
切る対象によって包丁の種類は様々で、用途が違うと著しく作業効率が下がり、やはり刃を痛める原因になります。
解体専用のナイフセットというのがどうやらあるらしいというのも、よく聞く話です。
もちろんこれらの用途に使うのはその冒険者の自由でしょうが、いざという時に欠けている危険性がある、もしくは切れ味が落ちているようでは困ります。
・象徴としての剣
ここからは実際的な用途ではなく、二次的な設定になってきます。もともと独自の設定があって、それに沿う設定というような形です。
とある意見には、力の象徴だから剣を持つ、見栄としての一面があるとありました。
この意見は順序が逆になってしまっています。
これはおそらく、ヨーロッパや日本で騎士や武士の地位が戦闘力によって保証されなくなった時代、つまり近世に入ってからの話を連想してのことでしょう。
何故サーベルや刀が力の象徴になったのかと言えば、それはこれらの職業が中世で力を発揮し、その代名詞として剣が扱われるようになったからです。
つまりその世界や社会で剣や刀が力の象徴となるには、予めそれを使って何かしらの実績を上げていないといけないのです。
芸術の中には様々な物品が象徴、アレゴリーとして扱われますが、全て実機能に関連するものです。
モンスターに対して何故剣が有効かという話をしているのに、モンスターに対して剣が効果を上げた後の話になってしまっていると言えます。
もしもこの設定を使うのであれば、その世界の前時代に先代勇者が剣を使って古の魔王を討伐したなどの伝説が必要になってきます。
とはいえ、それでも実際に戦いに剣を用いる冒険者を取り上げてこの質問をしているので、これでは不十分と言えるかもしれません。
・訓練が容易
剣は習得が容易だからというのは、そこそこ見かけた意見でした。
剣という武器が他の武器に比べて扱いが容易であるというのは聞いたことがありませんが、武道の中ではそうなのでしょうか。
これは個人的な感想ですが、満足に扱うにはどの武器でも相応に訓練が必要そうです。
また斧やナイフといった身の回りにある、使い慣れているであろう道具の方が、習得しやすそうというのも素人考えでしょうか。
武器カテゴリーごとの専門性という問題はいくら論じても仕方がないので一旦おいておくにしても、習得難度という面で見た時、その技術がメジャーかどうかのが一つの指標となってきます。
例えば野球やサッカー、テニスといったメジャーなスポーツは、習うことも上達することもその他のスポーツに比べれば容易いと考えれます。
なぜなら競技人口が多く、その分場所も機会も豊富にあるからです。
もちろん心理的なハードルや、金銭的なハードル、向き不向きと言った問題もありますが、例えば同じオリンピック競技であるホッケーや馬術などの、どこでどう習ったらいいか見当もつかない、ルールすらちょっとあやふやな物に比べたら、ずっと上達速度は早いでしょう。
それと同じで、剣術が発達しているなら、剣の訓練が容易だという事ができます。
つまり元々剣が武器として発達していて、そこにモンスターが現れたなら、冒険者がとりあえず剣を選択するのも頷けます。
ただこれも設定の範疇に入ってしまうわけで、全ての小説に適用できるとは言いづらいのではないでしょうか。
・金属の退魔特効
魔物に金属そのものが有効、ということを書いている人もいましたが、これは設定の最たるものと言えるでしょう。
私が1話で書いたゾンビ系のモンスターへの対抗策として武装したのと同じ形です。
このほかにもモンスターに有効な剣術や戦術といった存在も、その小説の世界観を特徴づける大きな要素となることでしょう。
・山賊、犯罪者等との対人戦闘を考慮
"基本的にモンスターとしか戦闘しない"という前提を崩すことになりますが、個人的にこれが一番汎用性のある設定なのではないかと思ってます。
たとえば同じ冒険者相手でも信用できないだとか、モンスターの脅威が山賊と同等だというような世界であれば、冒険者は対人性能に優れた武器を持ち始めることでしょう。
ただそうなっていくと、冒険者の特性であるモンスター専門家としてあり方や、騎士や衛兵といった領主側の軍隊との社会的役割の区別をどうつけるかといった問題が出てきます。
冒険者がモンスターにも人間にも強ければ、騎士の存在価値がなくなってきます。そんな状態で冒険者が反乱を起こせば、領主は簡単にその地位を追われてしまうことになるでしょう。
剣が対人戦闘最強武器だとしたら、逆に、騎士にしか剣の所持が許されない世界はどうでしょう。冒険者たちはモンスターを狩るための道具を装備するでしょうし、領主側と冒険者ギルド側の関係も複雑なものになりそうです。
さらにそこへ、"なろうファンタジーによくでてくる極東から来た剣士"が現れると、キャラ付けや話が生まれてきそうです。
・まとめ
この小説内で何度も、ライトノベルでは読み手書き手双方の負荷を下げるためにゲーム的設定は使用されるべきであり、許されるべきだと書いてきました。
軍人ではない登場人物が特別な描写なく剣を持つというのは、まさしくゲーム的設定です。
おかしいおかしいと騒ぎ立てるようなものではありませんし、もちろん冒険者が何の疑問も持たずに剣を持つ世界であっても、魅力あるストーリーやキャラクターに傷がつくことはありません。
もしかしたらまだ普遍的な理由付けができる設定が残されているかもしれません。
しかしモンスターを相手にする主人公が特殊な武器を使っているという設定を上手く使って特色を出している小説にも出会ったことがありますし、この考察の中でも面白そうな設定になりそうなものがあったのではないかと思います。
定番の要素を定番でなくすというのは、ヒットや流行を作り出す一つの手段としてよく語られます。
今回は様々な設定に普遍性がないと書き続けましたが、それだけ特色が出せる部分でもあるということです。
剣を持たせなくてもいいかもしれませんし、剣でなければやっていけない世界も作れます。
剣に関わらず、もし世界を構築している最中であるならば、"当たり前"を一回崩してその他の要素と掛け合わせることで、斬新な設定を生み出すことができるかもしれません。
この小説に影響を受けて作品を書き始めた、と嬉しい報告をもらったり見ることがありました。ありがとうございます。
完結マークがついていますが、また何かネタがあれば書きたいので、よろしくお願いします