第8パート:八幡平 ― 地熱が息づく場所で
■放送本編:
東北新幹線・はやぶさ。
早朝の車窓に、春霞の岩手山が見える。
ノートPCの画面には、AI制御モジュールの稼働ログが流れていた。
その画面を睨みながら、一ノ瀬直也は無言のままデータをスクロールしている。
■ナレーション:
東京からおよそ500キロ。
向かうのは岩手県・八幡平。
地熱を活用したAIデータセンターの実証モジュールが初めて稼働を迎えようとしている。
八幡平の山中。
硫黄の匂いを含む春風の中、白い蒸気が山腹から立ち上る。
防護ヘルメットを被った一ノ瀬直也が、スタッフと共に地熱井の奥を見上げていた。
■放送本編(続):
「AIを動かすために、自然の熱を借りる。
地球が “生きている証” である大地の熱を電源に代えて、それが、AIの “計算資源” を走らせる。
そのAIの “計算資源” が、今度は自然の熱の力そのものを更に増幅していく。
そうやって、未来を形づくる “環” をつくりたいんです。」
■ナレーション:
大地の息吹が、テクノロジーを支える。
その構想は、一ノ瀬がGAIALINQを語るとき
いつも口にする “理想” のひとつだった。
■放送本編(締め):
地熱井から立ち上る蒸気が、朝の光を浴びて虹色に散る。
カメラがその光を抜けて、彼の横顔を捉える。
■ディレクター内省:
……はい、また出たよ “絵になるカット” 。
何やっても、何言っても、ドラマのラストシーンになる男。
「地球が “生きている証” 」って、ポエムのようでいて、誰より現実的な言葉なんだよな。
普通なら “きれいごと” で終わる話を、コイツは “事業計画書” にして現実に落とし込んでしまう。
見てて思う。
たぶんコイツ、思いとか感情をエネルギーに変える回路を持っている。
他の人がため息をつくところで、彼だけは「じゃあやるか」と立ち上がる。
……そんなモンスターみたいな思考回路。
編集席の若いADが呟いた。
「なんか、ヒーローマンガの主人公みたいですね。」
違う。
これはマンガじゃなくて、現実のヒーローなんだよ。
だから怖いんだ。




