カオリちゃんを助けなきゃ♡前編
週末金曜日
2件の
ギャラ飲みが終わった午前2時過ぎ。
六本木からタクシーで移動して、西麻布の24時間営業の隠れ家居酒屋の個室で4人三次会をしていた。
テーブルには冷めた唐揚げ、枝豆、強めのサワーとハイボールが散らばっている。
リカ「はぁ〜マジ疲れた……。今日の客、2時間目から急に上から目線になって『うちの会社、来期上場予定なんだよね〜』って。聞いてるこっちが疲れるわ(笑)」
サユリ「上場予定言うやつ、9割がただの夢見てるだけだよね。現実見ろって感じ」
セナ「ふふっ、でもチップはちゃんと出してくれたから良しとしよう。今日はまあまあ稼げたし」
みんなでグラスをカチンと合わせた直後、カオリがスマホを両手で握りしめたまま、ふわっとした表情でため息をついた。
リカ「カオリ、さっきからずっとスマホ見て元気ないね。どうしたの? 今日の飲みでなんかあった?」
カオリ「……うーん、実はちょっと相談したいことがあって……」
サユリ「えー、遠慮なく言っちゃいなよ。吐き出せ〜」
カオリはハイボールをちびちび飲みながら、モジモジと指を絡ませて話し始めた。
カオリ「最近……『田中』さんって人が、マジで怖いんだよね〜……」
セナ「田中?」
カオリ「うん。この前オープングルチャで一緒になった回あったじゃん。セナ姐さんと同じテーブルだったやつ。あの人、田中って絶対偽名じゃんって思ったんだけど……最初は本当に優しくて」
リカ「待って、そこで信じちゃうの? カオリらしいっちゃらしいけど(笑)」
カオリ「えへへ……だって『俺が守ってあげるよ』とか言ってくれて、なんか嬉しくて……。個人的に連絡取るようになってからも、最初はチップ付きでご飯おごってくれたりしてたんだけど……」
サユリ「で? いつからおかしくなったの?」
カオリ「3回目くらいから『俺だけ特別扱いしてほしい』って言われて……この前『チップ無しで会えない?飯も割り勘で』って誘われて断ったら……『お前が吉原で風俗やってること、家族にバラすぞ』って……」
一瞬、テーブルが静かになった。
リカ「は?? それ完全に脅迫じゃん! カオリ、マジでヤバいよそれ!」
サユリ「待って、カオリ本当に吉原で働いてたんだ?」
カオリ(目を伏せて、声が小さくなる)「……うん。派遣だけじゃ全然生活できなくて、月に何回かだけ……。セナ姐さんには前に『お金欲しいけど怖いかも〜』って相談したことあったよね」
セナ「覚えてるよ。すごく迷ってるって言ってたもんね」
カオリ「そう……。実家、めっちゃ厳しいし弟もまだ小さいから、バレたらもう……。LINEブロックしたら別のアカウントから『今、上野駅前にいるよな?』って写真送ってきて……もう怖くて夜も眠れなくて……」
リカ「最低すぎる。女の弱み握って脅すとか、虫ケラ以下じゃん」
サユリ「偽名使ってる時点で怪しかったのに、そこまでやるか。カオリ、優しすぎるのも考えものだよ」
カオリ(目がうるうるして)「……ごめんね、せっかく楽しかったのに暗い話して。みんな疲れてるのに……私、いつもこうやって心配かけちゃうよね……」
セナ(静かに微笑みながら、カオリのグラスにサワーを注いで)
「謝らないで。むしろ話してくれてありがとう。
……カオリ、その偽名田中、私が綺麗に片付けてあげるね」
カオリ「え……セナ姐さん?」
セナ「大丈夫。もう心配しなくていいよ。
ただ一つだけ協力してほしいんだけど……来週の木曜の夜に、『アフターで少し話したい』って田中に返事してあげてくれる? 場所は私が指定するから」
リカ「セナ……なんか今日も完全に姐御モード入ってる」
サユリ「セナに頼ったら急に安心するよね。なんか守られてる感がすごい」
カオリ(少し涙目で、でも嬉しそうに)
「……うん。セナ姐さんがそう言うなら、信じるよ〜。
なんか……話したら、すっごく気持ちが軽くなったかも……。セナ姐さん、ほんとにありがとう……」
セナ(カオリの手を優しく包み込んで)
「女の子同士、守り合わなきゃね。
ギャラ飲みも吉原も関係ないよ。私たち、同じ夜を生きてる仲間なんだから」
リカ「うわ、なんか泣ける……私も何かあったら絶対セナに相談するわ」
サユリ「私も。セナ教の信者になりそう(笑)」
みんなで少し笑い合いながら、疲れた体を預けるようにグラスを合わせた。
カオリのふわふわした表情に、ほんの少しだけ明るさが戻っていた。




