プロローグ2
◇ ◇
今日午前九時二十分頃、関西電鉄奈良線の御駒トンネル内で崩落事故が起こりました。怪我人や巻き込まれた人の数などは今のところ不明です。更に新しい情報が入りましたらお伝えします。
繰り返します、午前九時二十分頃……。
◇ ◇
――足が痛い。さっき電車から飛び降りた時にどこかにぶつけたみたい。
でも走れないほどじゃない。
安心して前に踏み出したとき、人にぶつかった。泥まみれの地面にしりもちをついた。わたしは慌てて周囲をまさぐった。
大事な原稿をバラまいてしまったんだ。
頭の上に金切り声が飛んだ。
「ちょっと!! ジャマしないでよっ! さっさとどいてよ!」
「ご、ごめんなさい」
薄暗がりでどうもお互いの姿が見えない。怒鳴り声の他にも人の気配はするけれど、細かくは判らない。
どうもぶつかったのは女の子で、相手も当然、相当パニックになってる様子だった。彼女を避けると、小さな男の子が後に続いている。ふたりはしっかりと手を握り合っていた。
わたしは改めてトンネル内を見渡し、散々たる雰囲気に息をのんだ。気分を落ち着けようと、散らばった原稿を拾い集めた。すると、先ほどの女の子が一緒に拾ってくれた。
「あ、ありがとう。手伝わせてごめんなさい」
「こっちも悪かったんだから。ちょっとォ《お姉ちゃん》、ダメだよ! さっさと行かないで手伝ってよ!」
「あ? あーもう! しょーがないなぁ」
わたしは回収できたものを胸にかき抱き、お礼する。
実は双子だった姉妹は、弟と思われる幼子の手を引き、去ろうとした。姉の足踏みがイライラを伝えた。しかしわたしは、
「そっちはダメ! ガス臭かったよ? わたし、そっちの側からここまで来たから」
「何言ってんの! まだ遠そうだけど、なんとなく明かりが見えてるし。きっと出口でしょう!」
それ以上何も言えなくなり、わたしはリュックから取り出したチョコレートを男の子にあげた。
「ね、頑張るんだよ? 泣かないでね? お姉ちゃんにしっかり付いて行くんだよ」
「うん!」
ほどなくして三人の向かった先で大きな爆発音がした。
そのまま、わたしは意識を失った。
……。




