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あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


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先輩だからよ

うちにはテレビがない。

国益放送の集金が威圧的過ぎて置く気をなくして捨てたからだ。


その代わりにゲーム機で使う用の壁掛け大きなモニター、映画とかを見る用の家庭用プロジェクター、仕事用PCが接続されている小さめのモニターがある。


その中の、壁掛けのモニターでネット経由のニュースを流していると、デルタが声を掛けて来た。


「行方不明なぁ、可哀想に。

えぇ、この辺じゃん、怖っ。」


違ったわ、声を掛けられてはいなかった。

独り言。

我が家で頻繁している、単なる心霊現象だった。

姿が見えない相手だから、喋ってる内容を聞くまでは独り言だか話しかけて来てるんだかが全然分からない。


エンターテイメントの様に行方不明ニュースを眺めているらしいデルタ。

不謹慎極まりないとツッコもうかとも思ったけど、幽霊が人の生き死にを語るのってそもそも不謹慎じゃないのかもしれない。


それにしてもなんでそんな真剣に見てるんよ。


「あっ、この子か。

んー、この子、もう死んでるわ。

残念だがなぁ。


つっても誰かに教える訳にもいかねぇし、信じても貰えねぇだろうけど。」


…うわ、怖っ。

初めて幽霊感出して来たじゃん。


陽気な野良の深夜DJ扱いして来たけど、そうじゃん、お化けじゃんこいつ。


何でわかんの、死んでるかどうかなんて。


「こないだ会ったんだよ。

俺は暇な時にそこら辺うろついてるだろ?


そん時に昼間っからバスを待ってるガキがいたんだよ。

バスを待ってるのは変じゃないけど、何本もバスを見送ってるから気になって声を掛けたんだ。


その子と激似だから間違いないと思う。」


おぉ、お化けが子供に声掛けんなよぉ。


「いや、俺の声は電子機器を通さなきゃ普通の人には聞こえないからな?

振り返れば幽霊、そうじゃなけりゃあバスマニアの子供。

それだけのこった。


そんでだ。

幽霊っつっても何パターンかいるんよ。


俺とかは、場所に縛られてるパターン。

いわゆる地縛霊ってやつだな。


んで、前に話したおばちゃん、覚えてるか?」


あれのこと?

スーパーの安売り教えてくれる主婦系幽霊。


「そうそう。

あのおばちゃんはいっつもスーパーにいるけど、場所に縛られてる訳じゃなくって、チラシを確認するって行動に縛られてんのよ。

普通に通勤を続ける奴もいるし、殆どがこのパターンなんだよ。


生きてる頃の習慣が抜けねぇっていうか、やりたい事をやり続けてるというか。


そうしないと気持ち悪いって、生きててもあるだろ?

毎日シャワーを浴びるとか、毛布を足まで掛けるとかさ。


それが顕著なのが幽霊なんだよ。」


うん。

じゃあその子はバスマニアの子供ではあんの?

幽霊だけども。


「幽霊ってな、変なんだ。

普通の人は死んだら居なくなる。

そう出来てる。


それを無理矢理捻じ曲げてそこらにいるのよ。

何かに固執したりしてな。


おばちゃんは生活から抜け出せない。

俺も…多分なんかあるんだろう。

その子は、死ぬ直前の記憶から抜け出せねーみたいなんだよなぁ。


だからバスに乗りたい。」


何でバス?

…あ、これ普通に怖い話だ。

覚悟してなかったから、足元がふわふわして来た。


「帰りたかったんだよ。

普通の事だろ。

死ぬ直前に、家族の元へ帰りたいって思ったんだ。


多分そのバスは家の方へ向かうヤツなんだろうな。

だけど、バスに乗って帰りたいって考えた訳じゃないから、そこまで来たら満足するんだよ。


ただ、帰りたかっただけだから。」


そんなの…救われないじゃないか。


「おおよ。

幽霊なんてそんなもんだよ。


停滞してんだ。」


停滞か。

停滞ね。


その子はまだそこにいるの?


「は?いや、俺言ったよな、声を掛けたって。

帰したよ家に。

着いた途端消えちゃったから、多分納得したんだろうなぁ。」


あ、そう、へぇ!

やるじゃん、凄いなデルタ。

良かったぁ。


「まぁ、俺からしたらタケやんの方がすごいけどな。

俺だって幽霊なんだから、停滞してたんだよ。

それをな、無理矢理身体を与えて動き出させたんだから。」


やめろよぉ。

油断して怖い話聞いて、ふらついた心に褒め言葉は、なんか耐えられない。


恥ずかしい。


「ありがとな、タケやん。

始めたばっかりだけどさ、俺、ちゃんとやるから。


とりあえず、タケやんにモデリング代金支払うまではな!

所でさ、具体的な金額聞いてなかったけど、いくらぐらいのもんなの?」


え?怖い話の次にエモい話して、今度は金の話?

僕の情緒がちぎれ飛びそうなんだけど。


まぁいいや、えーとね、前にも払うって言い張ってたから、モーさんに試算してもらったんだけど…。

そのメールどこいったかな。

これだ。


とりあえずモデリングの基本料金は70万ぐらいに設定してんだって。

んで、僕のイラストレーターとしての料金、諸経費が乗っかって…380万くらい、だって。


「高っけぇ!な!

俺だってざっと調べたけど、そんな高くなかったぜ?

なんなんモーさん、ボッてんの?


仲良くなったと思ってたのに!」


そもそも僕のイラストレーター単価が高めらしいし、ほら、張り切って差分描きまくったじゃん。


そのせいだって。


「タケやんのせいもあるじゃん!

値切り交渉を………いや、いいや、言い値で払うよ、頑張って。


ここまでだって6000円は貰えたんだし。」


カッコいいけどさ、6000円のスパチャで6000円貰える訳じゃないからね?

50%とか60%しか貰えないから。

そこから税金も支払うし。


あ、控除とかもないよ。

デルタは存在しないはずなんだから、僕の稼ぎとして扱うからさ、元の稼ぎと合わさるから。


「うっそぉ、取られすぎじゃない?

じゃあ、今稼いだのって2000円くらい?」


そんなもんじゃない?

あと、1900倍稼げば返せるね。


「寿命が先に来るわ。」


デルタはもう死んでるから、僕の方のね。


「タケやんが死んだら、俺が世話するから。

幽霊の先輩として。

それでトントンにして。」


世話とかいいからその時はとっとと成仏させてくれよ。

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