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あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


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8/41

熱い偏見

「配信終わったばっかりだけどさ、めっちゃ関係のない話していい?」


ん?なに?

マシュマロが5通くらい届いてたのに、それに一切答え無かったこと?


「んや、それは次回配信のネタだから取っておいてるだけ。

本当はすぐ聞こうと思ってたんだけどさ、中々言い出しにくくて。」


配信の失敗について?


「それは要改善だけども、今回は特殊なゲームだったから仕方ない面もあるって。

そんなんじゃなくてさ、今更ちょっと聞きにくくて。」


うん?僕の年収とか?

確かにデルタが配信用にゲーム買うってなったら僕の財布から出すことになるもんね。


今回は無料ゲーだったけど、週刊連載枠みたいに同じゲームやり続ける時が来たら、大作をプレイした方がいいもんね。


デルタにゲームを買い与えるぐらいは別に問題はないよ。

デルタは食費とか服代とか掛からないし、僕もたまにプレイするし。


「それはありがとう。

いや、もっと普通に疑問があってさ。


あの、モーさんってさ…。」


うん。

僕が今26歳だから…31か32歳だったんじゃないっけな。

昔、僕が赤ちゃんの頃から7歳ぐらいまではこの家で育っててさ、近所に実家のあるモーさんによく構って貰ってたんだよ。


「話してるのをみるとそんな感じするわ。

そのモーさんってさ、男?女?」


…言ったね?


「え…?


失礼だとは思うけど、マジで分からなかったんだよなぁ。

髪が長めの男にも見えるし、髪の短い女にも見えたんだよ。

服装もさぁ、ワイシャツに大きめのカーディガンに、ジーンズだろ?

どっちでもあり得る服じゃん。


声もハスキーがかってよく分からないし、イントネーションも変な関西弁のせいでよく分からないし。


どっちなの?

別に性別で対応は変えないけど、分からないとモヤモヤするって。」


…口に出してしまったね?


僕は我慢してたのに。


「呪いの言葉みたいにいうなって。

お化け脅かしてもいいことないぞ。」


実はね…僕にも分からないんだ。

幼馴染なのに。


「…おぉ。」


ずっとどっちでもあり得る服装をしてきているし、趣味は純文学。

それも性差がないだろう?

身長もね、167cmなんだって。

どっちでもあり得るもの。


「幼馴染なら、学生時代の制服とかあったろ?」


私服の私立通ってたんだよ。

流石に式典の時の服装はしらないからさ、そこでも判断つかなかったんだよね。

僕もデルタと同じだよ。

疑問に思った頃には、聞ける時期を逃していたのさ。


「おぉ…。

タケやんの両親は?

流石に知ってるんじゃないの?」


モーさんとウチの両親は会ったことないと思う。

親戚みたいなとは言ったけど、ばーちゃんの幼馴染で親友の人のお孫さんなんだよ。

血の繋がりがあるわけじゃないんだ。


僕とモーさんは幼馴染ではあるし祖母同士は仲がいいんだけれど、親同士は他人っていう半端な仲だったんだよ。

そんで、両親の仕事がひと段落した時に僕はそっちに移ったから、しばらく会ってない時期もあるし。


「マジで謎のままじゃん。

そして俺の比じゃなくて、超聞きづらいじゃん、今更。

もっと小さな頃なら無邪気に聞けたのに。


あ、モーさんってあだ名だろ?

名前は?フルネームは何ていうの。」


澤野 森。

さわのもりっていうんだ。

珍しい名前でしょ?森って。

そこからとってモーさんって呼んでるんだよ。


「わっかんねぇ…。

いい名前だとは思うけど、珍しい名前過ぎてどっちかわかんねぇ!


あれ?

タケやんと5歳差なんだろ?

んで、タケやんは中2で漫画の持ち込みをはじめて、その時の担当がモーさんなんだよな。


って事は20歳には編集部にいたって事だ。


早くね?

大学在学中の年齢じゃん。

高卒で出版社って相当珍しいだろ。

しかも大手だし。」


あー、短大だったんだって、モーさん。


「めちゃくちゃ偏見だけどよぉ、短大に男は行かねぇだろ。」


めちゃくちゃ偏見じゃん。

僕も珍しいから聞いてみたんだけど、元々は司書資格を取りに短大へと進んだんだって。

そんで在学中に縁があって繋がりが出来たから今の職場にって感じらしいよ。


「資格の為の進学で短大パターンもあるのかぁ。

マジで性別情報ゼロなんだな。

手詰まりか。


タケやんが身体を触って確かめるしかないな。

頼んだぜ。」


無理だって!

何言ってんだよ。

50%の確率で犯罪者に堕ちるギャンブルなんて出来ないよ。

得るものもないのに。


そんなこと言うなら、デルタがやれよ。


「無理だろ、身体がないからな、俺には。」


汚なっ。

お化けの強みを活かしてくるじゃん。

幽霊なりになんか方法はないの?

魂の色が性差あるとか、そんな設定はないの?


「ねぇよ。

あったらこんなこと聞いてないって。」


それもそっか。



彼らが揃って、明らかな問題点のある配信の反省もせずに、中身のない話をしている裏で、少しだけ2人が話題に上がっていた。


[悲報 ダリア様、腐バレ]

[朗報 黒鎌氏、同志]


発端は彼女がデルタの配信にスパチャしたことからだった。


同業者だというのは気がついていたけれど、ノリで始めた2人は、彼女がどういう立ち位置のVtuberかなんて全く知らなかったが、彼女は登録者138万人を誇る超人気Vtuberであった。


そんなダリアをイジる為だけに切り抜かれた、デルタの配信とそのコメント欄。


「大変おいしく頂きました。最高か。¥5000」


ぱっと見、料理系の配信に向けたコメントっぽいが、映し出されていたのは50人も見ていない弱小新人Vtuberと、そのママであるちくりん。


彼らはいつも通り話しているだけだったのだが、そのやり取りは、なんというか、好きな人は好きだったらしい。


ダリアをイジる為の切り抜きはファンの目にはきちんと触れたらしく、次の日に配信されていた彼女のコメント欄では、デルちく派ですか、なんて腐り散らかしたコメントが散見されていた。


始めは無視していた彼女であったが、そのコメントの一つに彼女の崇拝するイラストレーター、ちくりんを中傷するものがあった。


[ちくりんの漫画、話はウンコだろ。]


ちくりん本人としては、不甲斐ないけれど、これはよく言われていたし、自覚もあるので漫画家を辞めている今となってはなんのダメージもない。


そう、本人は。


「は?ちくりんのストーリーは、最高なんですけど!」


反応してしまったのだ。

珍しく、リスナーに喧嘩を売るような言い方で。


控えめに言っても最高ではないと自負している漫画、それも7巻しか出ていないのに、よくそんなに語れるなってくらいの熱量を持って2時間に渡り語るダリア。


そしてヒートアップした彼女は、いかに2人の仲が尊いかったかの話もし始めた。


あまり多くはないちくりんインタビューすら読み漁っていた彼女は、時折語るちくりんの孤独感に共感し、同情もしていた。


そんな彼が珍しく表に出てきと思ったら、友人と楽しそうに悪態をつきあっていたのだから、堪らなかった。


「ちくデル!それ以外は認めない!

かかってこいやデルちく派のザコども!


論破してやる!」


ヤケクソな叫び。

それが切り抜かれ、広まった。

キャラ崩壊と、デルタとちくりんのやり取りの切り抜きとと共に。


138万人のファンを持つ、その力で。



「なぁ、タケやん。」


なに?まだ眠いんだけど。

配信って体力使うのなぁ。

一昨日の話なのにまだ眠い。


「あのさ、マシュマロ、大変なことになってるんだけど。」


マシュマロ。

匿名でメッセージを送り、受け取り手がそれを返すサービス。

Vtuberを始めるにあたり、デルタは質問箱として開設していたそれは、第一回配信の後は5通しか来ていなかった。


大変なことってなんだよ。

15通くらい来たのか?

良かったなあ、デルタ。

ママ嬉しい。


「いや…その10倍ぐらい来てる。」


それが第二回配信を終えて、次の次の日の朝。

200通もメッセージが急に届いていた。


なにこれ。


「なにこれぇ。」


なにこれ。

視聴者数より多いじゃん。


なんで?

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