余ったカレー
「設定じゃなかったんや…。」
固まるモーさんに改めて僕とデルタの話をすると、頭を抱えてしまった。
そりゃそうだよなぁ。
お化けって言われたってねぇ、困っちゃうよねぇ。
僕だって半年ぐらいかけての、心霊現象を食らい続け慣れてからのコミュニケーションだったもの。
「カレー余ってしもたやんけ…。」
あ、そっち?
「お供えしてくれたら俺は嬉しいけどなぁ。」
あ、そうなの?
お供えとか欲しいタイプの幽霊だっけ?
お供えってなんか意味あるの?
「あるよ、こう、なんか、こう、気持ちの問題で。」
意味ないじゃん、それ。
「まぁ、お供えでええわ。
その後タケの朝ごはんにでもしてや。
はぁー、いるもんなんやな、お化け。
思ってたんとちょっと違ったけど。
デルタ君はなんで幽霊のくせに性格が明るいねん。
気になるわぁ。
未練があるなら固執して暗くなるもんやないの?」
それがねぇ、記憶がないんだって。
未練を覚えてたら暗かったんじゃないの?
「そういうもんなん?
えぇ…記憶障害って…脳のなんとかじゃないの、その原因って。
脳とかないやん。
まぁ、存在自体が不可思議やから、そんなん些細なことか。
いつか思い出せたらええなぁ。
あれ、いや、思い出したら暗くなんのか。
楽しくやるなら今のままの方がいいのか。」
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
楽しく過ごすのが悪いとは思わないけれど、死に切れない程の何かを忘れてしまうのは、多分辛いんじゃないかなって思う。
本人はどう思ってるか知らないけどね。
「せっかく知恵が一人分増えたからさー、モーさんにもなんかアイデア出して欲しいんだけど。」
あ、そうね。
何をしたら幽霊が記憶を呼び起こすって僕にはわからないもんね。
確かに案は多ければ多いほど可能性があると思うよ。
「んや、なんか配信のネタ頂戴。」
あ、そっち?
「いやー、ゲームやったり歌ったりする予定ではあるんだけども、多ければ多いほど良いじゃんか。
アイデアなんて。」
それはそう。
やることのストックはあればあるほどいいよね。
どうせ暇だしなー、デルタはー。
「なー。」
あれ、そういえば、モーさんはなんでデルタを見つけたの。
12人しか配信見てなかったのに。
「デルタ君を見つけたわけちゃうのよ。
ボクは常にタケをエゴサしとるから、それに引っ掛かったんよ。」
「あー、タケやんのファンっぽい人がスパチャくれたもんな。」
あぁ、なるほど。
それなら分かる。
流石に僕もそこそこのキャリア絵を描いてるから、ファンの一人や二人いるもん。
ってか、僕のエゴサしてんの?
「しとる。
ボクがタケの一番初めのファンやからな、愛は重いよ。
ははは、受け止めてや。
んー、せっかくタケのファンが絵に気がついて見てくれているなら、二人でやる回とかあってもええんちゃうん。
絵しりとりとかもあるし、お題が表示されてどっちが上手いか対決するゲームとかあったやろ。」
「それは楽しそう。」
んー、分かるけど、まずはデルタが自分で頑張った方がいいんじゃないの、こういうのって。
「それもそうやけど、今は一杯いるからなぁ、Vの人。
せっかく宣伝に使える奴が隣におんのにそれを使わんのは舐めプやろ。
早い方がいいとは思うよ。
そっから一人で頑張ったらええけど、まずは見つけてもらわなあかんし。」
そういう考え方もあるか。
やっぱモーさんはマネジメントとかの人なんだねぇ。
どう?デルタ的には。
「二人でやれるヤツがあるならやりたいな。
タケやんと遊べるだけでも嬉しいし。」
おぉ…真っ直ぐ言ってくれると、ちょっと恥ずかしいや。
じゃあやろっか。
別に嫌な訳じゃないし。
「配信時間決まったら教えてや。
ボクも見るから。
そんじゃあそろそろ帰るわ。
また寄るからね。
デルタ君もまた。
タケをよろしくね。」
うん、色々ありがとう。
カレーは明日も食べるから。
気をつけてね。
「アイデアありがとなー。
またいつでも来てくれよな。」
僕の家だけどね。
デルタの家じゃなくて。
法的には。
◆
「絵かー。
上手く描けるかな〜。」
デルタはなんとなく僕と遊ぶのを楽しみにしている感じがする。
確かに二人で同じ何かをってのはやったことはないし、僕も少し楽しみだ。
「あ、タケやん、コソ練無しな?」
しないよ。
っていうかやりようないわ。
そういうのは格ゲーとかで言ってよ。
「あはは、そうな。
あ、そうだ、どっちにする?
調べたらさ、しりとりも画力対決もちゃんと見つけたわ。」
…そりゃあ画力対決でしょ。
しりとりは二人でやっても仕方ないし。
「二人でやるもんでしょ。
しりとりって。
ま、いいけど。
じゃあ画力対決の方な。
SNSで告知しておこうっと。
どっちが上手いかは観てる人に判断してもらおうなぁ。」
ふふふ。
画力なら負けることはない。
こちとらプロよ。
お笑いとか歌とか絵とか、何故か格闘技もそうだけど、普通に生きてて比べようもないもののプロってのは、センス良ければとか、才能があれば素人同然でもプロに勝てるって思われがちだけど、そんな訳はないんだぜ、デルタ。
あんまりプロを舐めるなよ、デルタ。
家主の威厳を存分に浴びさせてやるぜ、デルタ。
「タケやん、なんか悪い顔してんな。
なんだよ。
あ、あれか。
負ける訳ないってか?
そりゃそうだよ、プロに勝てる訳ないじゃん。
そんな事は思ってないって。
なんなんだろうな、あの謎の自信をもった人たち。
俺も昔そういう人に…あれ?
そうだ。
そんな気持ちになったことが…ある。」
どこで記憶の扉が開いてんだよ。
もっとなんか、こう、劇的に、ドラマチックでロマンチックな出来事があった後に言うセリフだろ。
「あはは、そうな。
いやぁ、まぁ、俺にとってはタケやんと同じ遊びが出来るのって、結構ドラマチックでロマンチックなんだけどな。
結構長い事話しかけてたのに、仲良くなれたのは最近だしさー。
なんにせよ、楽しみだわ、俺。」
おお、うん、そうな。
こいつ…たまに、こう、真っ直ぐ気持ち伝えてくるの…なんなんだよ。
照れる。
うん、僕も楽しみかも。
だからと言って、負ける気はしないけどな…!
性能の差というものを見せつけてやろう…!




