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あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


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心霊写真

「おかえりー。


何その封筒。

原稿用紙とか?」


漫画家もイラストレーターも、僕が経由してきたあらゆる仕事は外に出ない適正が必要な仕事なんだ。


家!ラブ!なメンタリティを持つ人間しか就けない選ばれし職業なんだよ。

それをこんな、仕事の用も生きる為に必要な食糧の買い出しでもないのに出かけるなんて珍しいんだぞ。


「…タケやん、それはもっと運動とかした方がいいよ。

ペラペラのコンバースだけじゃなくって、動きやすい靴とか買ったら?」


歩くより速いスピードで動くと身体に気を失う程の電気が流される呪いが掛けられてるから無理なんだよ。


「はいはい。

くしゃみしたら死ぬじゃん、それ。


んで、それなにってば、封筒。

もし健康診断の結果とかならプライバシーは守るけど、何かは答えてくれたっていいじゃん。」


あ、プライバシーを守る気持ちはあったんだ。

風呂でも関係なく話しかけてくるのに。


「中には入ってないし。」


見えないから分からないんだよ。


この封筒ね、あれだよ。

デルタを使い捨てカメラで撮ったやつ。

あれ現像してきたから受け取って来たのよ。


「おぉ、アレね。

上手く写ってるかな。

キメキメのポーズ、魅せてやんよ。」


嫌な予感はするんだよ。

なんせ写真屋のお爺さんからこれを受け取る時、怪訝な顔をされたもんでね。

そんなんめちゃくちゃ霊が写りまくってるか、このご時世に資料の部屋撮りをわざわざフィルムで行う変人と思われたかのどっちかだろうね。


さ、見ていこうかと、僕が封筒から無造作に写真を出そうとすると、デルタから待ったが掛かった。


「タケやん、いけないぜそれは。

俺だってVtuberやる為にな、色んなやつの企画を見るようにしてんだよ。


いくら2人きりだから、配信してないからってエンタメ性を失っちゃあダメだ。


そんなん、化野デルタのトレーディングカードみたいなもんだろ?


絞れよ。

絞りながら見ていけよ。」


最近カードゲームの開封動画か何かにハマってた?

まーいいさ。

僕だってエンタメを生業にする男だから、異議はないよ。

その芝居がかった言い方は鼻につくけどな。


じゃあ封筒の中を見ないように手だけ入れて一枚ずつ引き抜いていくよ。


「おう、楽しみだな。」


ぺらっと。


んー…。


デルタはこの写真に何か見えたりしないの?

僕には本当に普通の部屋だけど。


「なんの変哲もない普通の部屋の写真だな。

幽霊が立ってたのは間違い無いから、なんか不気味に感じるけどさ。」


立ってた幽霊は自分だろ、不気味に感じるんじゃないよ。

幽霊からみても普通の写真なら、本当に何にもないんだろうね。


…マジでお金の無駄だった気配がしてるよ。


「まだ分からないって。

タケやんが俺のことが見えないから、レンズの外に俺が立っているのに気が付かないでシャッター切った可能性だってあるから。」


じゃあ次行くよ。

ほい。


…なんも写ってないじゃんか。

やっぱアレなんだね、シュミラクラ現象なんだよ、心霊写真なんてのは。

目の位置に2つ、口の位置に1つの何かがあればそれだけで人に見えるってやつ。

目に映らないのに写真に映る訳がないもの。

光を感知するって意味では同じ仕組みなんだから。


「心霊写真なんてねぇか。

いやぁ、危なかったなぁ、俺のあまりのイケメンっぷりに、タケやんがドキドキして気軽に話せなくなるところだったぜ。」


はいはい。

幽霊がこんなに身近にいるのに、心霊写真を完全に否定するのも変だけど、こうやってパラパラめくってみても何にも写ってないわ。


デルタは電子機器に干渉できるって事は、弱電流の化身みたいなもんなのかね。


じゃあ、ロレンチーニ器官を持ってる生物とはコミュニケーション取れるかもよ。

試してみたら?

無二の親友が出来るかも。


「あはは、そうな。

犬とか猫もこっち見てね?って瞬間はあるんだけど、そういう専門器官を持ってるヤツらだったら、より感知してくれるかもな。


ところでさ、その、ロレン?なんとかってやつ、どんな生物が持ってんの。」


エイとかサメ。


「え?」


あとは古いタイプのウナギとか。


「仲良くなれる気がしねぇ。」


あはは。



タケからデータが送られてきた。

なにやら、使い捨てカメラで撮影した画質の粗い写真をスキャンして、それの上からデルタ君を描き出したもなんやって。


「幽霊ってコンセプトだから、こういう写真に絵を描いたやつの方がぽくない?

グッズとか、サイン用のポストカードとかでどうかな。

モーさんの意見も聞かせてよ。」


心霊写真風イラスト入りポストカードか、確かに面白いな。


しっかし…見慣れてないもんで、こういう写真の時点で少しの不気味さはあるわ。

タケもあえてポップに描かずに、繊細な線と掠れた塗りで構成しているしで。


まぁ、デルタ君はマジ幽霊なんやから、先にそっちにビビれやって話なんやけどな。

あの子、ボクからしたら弟の友達って感じやし、ノリがそこらへんのアンちゃん過ぎてなんも怖くないもん。


タケの漫画家復帰に協力してもらってるしなぁ。

今更オバケ!とはならんやろなぁ。


ふぅん、タケの家の無機質な家具と、デルタ君のデザインは意外と合うなぁ。

あ、これとかもええやん。

あれやな、知らん家族の目線が黒塗りされてる後ろにデルタ君とかも描いて欲しいかもな。

やっぱ心霊写真の醍醐味は、日常に紛れ込む異質感だと思うねん。


販売データでそういうのあるし、今回のやつが評判良かったらそんなんも出してみても良いよな。


お、懐かし。

タケはまだこの机使ってたんか。

違うか、婆さんの家を引き継いだから、古い家具をそのまま使ってるってだけやな。


思えば小さいころから絵を描いてたような気がするわ。

本人はちゃんと勉強した事ないって、恐縮したように言うけど、描くことをやめていた時期なんてない。


その大半は漫画に充てた時間だったんだから、漫画家として成功とまでは言わんけど、半端に終わらずやり切ったと言える所まではやって欲しいと思うわ。


ん?この写真…。

イラスト部分とは別に…人に見える箇所があるやんけ。

はは、タケのイタズラか?

ボクを脅かそうとして混ぜやがったな…。


…結構リアルだけど…心霊写真ではないやろ、これ。

最近見ないような、キメキメのツンツンヘアーってのも分かるし、歯を見せて笑っているのも分かる。

こっちを向いてピースサインを見せるその指にはシルバーアクセが見えている。


いや、陽気すぎるやろ。

この心霊写真の幽霊。

確かにデルタ君のキャラ的にこんな感じの見た目だろうと想像出来るけども。


もしかしたら、タケの想像上のデルタ君なのかな。

それぐらいしっくり来る。


それにしても。

こいつ…どっかで見たことあるな。

会ったこと、ある気がする。


どこでだったっけか。


イタズラはともかく、デルタ君のファン向けグッズとしては良いと思う。

この線ばっかりだと気色悪すぎるけれど、ポップなグッズとダークなグッズを両方作るのは悪くない。


タケにメール打っとくか。


そろそろデルタ君に何か読ませたボイスの販売とか、収益になりそうなもんもやらな。

あの子ら、良くも悪くも商売っ気ないからなぁ。


次何やるって言ってたっけな。


…いや、そろそろ、直接伝えなな。

メールはやめとこ。

あいつらん家に行くわ、直接。


めちゃくちゃ風邪ひきました

こんな時期に

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