第9首
第9首お届けできました。
第9首
真夜中に
物音がして
目が覚めた
誰かが弾いてる
私のピアノ
短歌解説
私が間接的に関わった実話です。
私の住んでいるH荘のわりと近所に新しいアパートが建ち、そこにSちゃんというサークルの後輩が住み始めました。しかし、運悪くそのアパートに霊道が通っていたのか( 第5首で話したゆらゆらが見えたところの近くに建ったのです)、もしくはSちゃん自身が霊をひきつけやすい体質だったのか、住み始めて1週間もしないうちにポルターガイスト現象が始まったようです。ラジオのスイッチが突然入ったり、テーブルの上に置いてあったコップが倒れたり、そして買ったばかりのグランドピアノが鳴り出したりと、様々な現象に見舞われたようです。
でも、おおらかで細かなことを深く気にしない性格のSちゃんは、「ま、いっか」とそのアパートに住み続けました。
アパートの部屋の中にグランドピアノがあると話したので、Sちゃんはもしかして音大生と思った人もいるかもしれません。
いえいえ、違います。Sちゃんは音大生ではありません。
ある日、サークルの時にSちゃんが、「先輩、私グランドピアノ買うんです。通販で」とうれしそうに報告してきました。
「グランドピアノ? 高いだろ。よく買えたね」
と、言うと、
「安かったんですよ。8千円。来週には届くんです。だからピアノを置くために部屋を片付けないといけないから、今大変なんです」
と、Sちゃんは笑いました。
『8千円でグランドピアノ? 詐欺なんじゃないのか?」
そう思いましたが、すでに代金を払い込み済みだと言ったので、言わないでおきました。
次の週、通販会社から無事グランドピアノが届きました。詐欺ではなかったようです。 ただし、通販カタログに載っていたとおりに、80センチくらいの少し大きめなおもちゃのピアノでした。
カタログをよく見ていなかったSちゃんの失態でした。
私は、グランドピアノが8千円で買えると思い込んでいたSちゃんの純粋な心に、ある種の恐怖を感じました。
残り91本
とにかくH荘の近辺では怪奇現象が起こりました。最近、H荘があった場所の付近に行くことがありましたが、家やビルが建ち並び、すっかり変わっていました。