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第49首

第49首お届けできました。

第49首


唐突に

海に行くぞと

飛び出した

友の姿が

フッと消えた


短歌解説

 私の実話です。

 大学時代の友人とラインをしているときに思い出しました。

 ラインをした友人とは別の人物なのですが、友人のYが、井上陽水の「東へ西へ」の歌詞の中に出てくる「花見の駅」のすぐ近くのアパートに引っ越しました。そのアパートからは海が直ぐ近くにあり、周りに人家も少なく、たまに電車の音がするぐらいの静かな環境でしたので、集まって騒ぐにはもってこいの場所でした。

 その日も、サークルの仲間が集まって、安い酒を飲みながらバカみたいな話をして盛り上がっていたのですが、唐突に友人のFが「海に行くぞ~」と立ち上がりました。真夜中だし、もう10月の半ばでしたから寒いし、「行かない」と誰しもがFに向かって言いました。

 するとFは、「俺は行くんだ~」と叫んで出て行きました。

 酔っ払っているから海なんかに行ったら危ないと思った全員が、Fを止めるために、慌てて後を追いました。

 真っ暗な松林の中の海に抜ける小道で、Fが私たちの10メーター前をふらふらと歩いているのを見つけた私たちは、彼に追いつこうと急いだときでした。

 私たちの目の前で、Fがかき消すようにフッと消えたのです。皆が、「えっ!」と驚きの声をあげました。私はFが消えた場所より更に先の方に、人影らしいものを見たのですが、そんなに早く移動できるとは思いませんでした。

「いたぞぉ」

 私より先に歩いていた友人が、そう叫びました。

 なんとFは、松林の中を横切っている1.5メートルほどの深さの溝の中に落ちていました。

 Fは、「うう」と呻いていましたが、酔っていたので余計な力が入らなかったのが幸いしたのか、ケガはありませんでした。私たちはFをアパートに連れ帰りました。

 その後、私はさっきFの前方に人がいなかったか皆に訊きましたが、誰もそんなものは見ていないと言いました。

 もしかすると、Fはあの得体の知れない人影に海に行くように囁かれたのかもしれません。もし、あの溝にFが落ちていなかったらと考えるとゾッとしました。


残り51本

 井上陽水が作った架空の駅だと思っていた「花見」という駅が、実際にあると知ったときには驚きました。残念ながら、廃線にともない現在はありません。

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