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~恋愛経験値とはなんぞや~

「でも、言霊...かぁ。昔、アイツがなんか、そんなようなこと言ってたわね...」


「アイツ?アイツって誰ですか...?」


ハルは、少しギクッとして、ごほんっと咳払いをした。


「お願いです、私、本当に知りたいんです!」


「こ、今度、ソイツに会わせてあげても、よくてよ...」


ハルは先ほどまでの態度とは違い、思春期の少女のようだ。


「なんでハル、急にしおらしく...」


「う、うるさいわね!アイツのせいよ!」


顔を紅潮させて、ハルは怒ったように言うが、それも本気の怒りではなく、照れているように見える。"アイツ"とは。


「ていうか、ケミィ、これからは、あなたも少しくらい見た目に気を配りなさい。」


もう、縛る者はいないんだから。


とハルは呟いた。


「見た目、ですか...私、おしゃれには疎くて...」


本当のことである。


前世でも、おしゃれについての知識は全く持っていなかった。季美子はおしゃれには程遠い場所に生きていた。おしゃれを教えてくれるような友人がいたならよかったのだけれど、生憎、周囲の人間は皆、おしゃれに疎い者ばかりで、おしゃれに興味がなかったわけではないのに、自分はその空気に甘えていたのだ、と思った。


「あなたねぇ、そんなんだと、恋愛経験値が上がらないわよ...」


「恋愛、経験値...?」


初めて聞く言葉。


「あなたにはそれすら浸透していないの?!...まぁ、仕方ないわね。教えてあげる。これ、見て。」


ハルが指で空中にハートを描いた。すると、目の前に、ハートのマークが現れた。


「なにこれ、かわいい...」


「ほら、このハートの真ん中、見て。数字があるでしょ。これが恋愛経験値。」


「これを集めると、どうなるんですか」


「この国ではね、恋愛経験値に応じて、国から何かボーナスが貰えたりするの。ボーナスと言っても様々で、カタログから商品だったりを選んだりするの。」


「ポイントカードみたいですね...」


「なにそれ」


「いえ、こちらの話です。でも、それって、どうして国から貰えるんですか?」


「この国では、恋愛経験値が上がれば、国としての利益が上がると考えられているの。例えば、人口増大に深く関係すると思われていたり、恋愛が人生を豊かにする要素の一つで、人生が豊かになれば何かの働きに繋がると思われていたりするのよ。」


「へ、へぇ...じゃあ、恋愛しまくればいいんでしょうか...」


まさか、こんなものがあるなんて。


手汗が止まらない。


お腹痛い。


恋愛したいくせに、いざとなると分からなくて怖い。


「もちろん恋人を作ったり、恋愛したりすれば経験値は上がるけれど、経験値は他のことでも上がったりするの。他のことって言うのは、そうね...自分磨き、とか、恋人がいなくても、人から好意を寄せられることとか。」


「じゃ、じゃあ、私は恋愛経験値ゼロ、いや、マイナスですね...」


前世で恋愛も自分磨きもしてこなかった私にとって、これは...ハードルが高いのでは...?

もしや、私はまた地味子ルートを歩んでいるのでは...?


「ほ、ほら、落ち込まないで!と、とりあえず、恋愛経験値、出してみましょう!こ、ここらへんに指でハートを描くのよ!」


ハルは私が落ち込んでいるのを察したようだ。


言われた通りにハートを描くと、目の前にポヨンっと恋愛経験値が現れた。


はいはい、ゼロね...。と思って、恐る恐る恋愛経験値を見る。


すると、記憶の中でケミィは恋愛したことがないと思っていたが、ゼロではなかったのだ。


「5...。ゼロじゃない...どうして」


「あら。じゃあ、誰かに想われたことがあるんじゃないかしら。」


「あ...そういえば」


かなり昔のことですが、妹のお気に入りの男の子に髪を誉められたことが関係しているのかな...」


「もしかしたら、その男の子、あなたに一目惚れでもしたのかもしれないわね。」


ハルは嬉しそうに言った。


髪で一目惚れなんて、そんなことあるのかしら。


「ちなみにハルは...。100...。すごい...。」


「すごくなんてないわよ。つい最近100ぴったりになったの。恋愛してみたら、このくらいになるわ。」


100ですごくないのなら、5の私は一体...。トホホ。


「ま、恋愛経験値は、追い追いね。とりあえず、今は、このパンを食べて昼寝でもしなさい。顔が疲れてるわよ。あとで、私の家から使っていないシーツと布団持ってくるわ。」


「え!そんな...。」


「いいから。お近づきの印、ね。お返しとか考えなくていいから。」


ハルの優しさに、胸がじんわりする。


「あ、あと、私に対して敬語なんて止めること!いいわね!」


「わ、わかった。じゃあ、私からも...。ケミィじゃなくて、キミって呼んでくれないかな...」


「キミ...?なんだか変わった愛称ね。まぁ、分かったわ。キミ、ね!」


やっぱり、ケミィという名前には慣れない。私の転生前の名前は季美子だから、キミ、ならケミィより反応しやすい。ケミィとキミの名前の響きが似ていてよかった。


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