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ビジョン・コントローラー  作者: ☆夢愛
第2章 アシュレイドとの決戦
22/53

第1話 本当に

「じゃあ行ってくる」


「ああ。 少し寂しくなるな」


「大丈夫だって。 なるべくすぐ帰ってくっから」


 ──そう言って皆に暫しの別れを告げて早2週間が経ったが、 俺は未だに元の世界のこの惨状に脳が追いついていなかった。

 何故かヒビ割れ何十年も前の物に見える建物や、 無くなった店や市営プールなどを毎日毎日目に焼き付けてる。

 だって帰ったらコレだったんだぜ? 何なんだよ本当に……。


「アウドラちょっとお買い物行ってきてくれないかな」


 部屋の扉をノックもせずに母が入って来たが、 鍵は閉めたつもりだった。 もしやそこも壊れているのだろうか──。

 俺は椅子から立ち上がると、 手に持っていたシルフォのアドレスが記録されているホログラムメール器を上着のポケットにしまった。


「ああ行ってくる。 どこに何を買いに行く? 」


「近くの温泉で温泉卵買って来て」


 母の真剣な眼を見て思わず100%の真顔を作り出してしまったが、 今本当にそれは必要なんだろうか。

 そしてこんな世界になってしまったのに温泉は残っているのか……。

 俺は仕方なく買いに外へ出た。

 ──因みに、 ホログラムメール器はまだ1度も使用していない。

 特に大した事ない……訳じゃないけどそんな早く連絡したら何も出来ない奴だと思われるんじゃないかと思って。


 はい、 しょうもないけど温泉着きました。 ちゃんとやってます、 ボロいけど。

 あと意外と近くに在った。 数分で着いた。


「すみません、 温泉卵売ってますか」


 俺が中に入ると、 番台にはブルドッグみたいに皺くちゃの顔をしたお婆さんと、 銀髪が腰まで伸びた俺と同い年くらいだと思われる女の子が居た。

 でも女の子の眼は青白い感じで、 一目見るだけじゃ完全にホラーな白目だった。

 顔は……まあ良い感じなのに。 大人しそうで。


「有るよ有るよ自分で持って来な! 」


 俺は婆様の急な叫びに思わず驚いた。

 理由として、 女の子を凝視してたってのが含まれてしまうんだが。


「えーと、 何処に有る? 」


「そこだよ! 持って来な! 」


「いや何処!? 」


「自分で持って来な! 」


 ──話が通じないお婆さんでした。

 ───────────────────

 うん、 顔見た感じかなりのお年なのは判るけど、 温泉卵の場所はお化けの様に分かりゃしない。

 そこってどこすか。 オバー様。


「す、 すみませんお客様! 温泉卵は先程売り切れちゃって……。 また明日来てくれますか? 」


 白目の女の子が慌てて駆け寄って来た。

 なるほど売り切れか。 婆様、 何処にも無いですってよ? 貴女には何が何処にどう見えて居たんですか?

 ボケてんのは分かるけどさ。


「まあ、 そんな急ぐもんじゃないだろうしいいや。分かった明日来るわ」


「ありがとうございました」


 綺麗なお辞儀を長時間続ける女の子を後にし、 俺は湯屋から出て行った。

 家に帰る──のではなく、 ちょっと暇だから散歩でもしていようかと思う。

 この、 ボロボロの世界が何なのか少しでも確かめる為に。


「アヒャヒャヒャ……うへへ、 ぼかぁ死神になったんだ……アヒャ」

「何みてんだおらぁ~! 吐くぞぉ! 」


 ……歩いてたら橋があって、 その橋の上には十数人程のホームレスらしき人達が居た。

 でも普通じゃない。 ちょっと……いやかなり頭がおかしい奴等ばかりのようだ。

 俺が出て行く前、 こんな所に橋が在ったのかすらも思い出せない。

 初めて来た訳じゃない道なのに。

 そんな数日で変わらないよな? 景色は──変わってるけども。


 ──ホームレス橋を渡り切ると、 橋の意味が全く無いかの様なそこそこ大きな川が流れていた。

 おかしいぞ。

 何がおかしいかって? こんな所に川は無かったんだマジでコレマジで。

 だって場所的に川の先は学校の筈なんだから。


「そろそろ……掛けても良い頃だよな? 」


 俺はこの現状に完全に焦り、 結構恐怖感を抱いたので素早くホログラムメール器を取り出しシルフォに掛けた。

 すると、 コール音が僅か2回しか鳴っていないのに相手が出てくれた様だ。

 早。


「シルフォか!? ちょっと聞いて欲しい事が有るんだ! 」


『アウドラ? どうした? もしかしてもうアシュレイドがやって来たか!? 』


「違う! そうじゃないんだ! 」


 物音から察するに、 こっちに来る準備をしようとしたかも知れないシルフォを焦って止め、 この世界の現状を伝えた。

 ──────────────────

 建物がヒビ割れて古びてる事も、 いくつかの物が消えて無くなっている事も、 温泉卵が売り切れていた事も全部……細かく説明した。

 ホログラムを見るとシルフォが溜息を吐いたようにも見えたが気のせいだと思っていよう。


『それは、 何らかの影響が有るのかも知れないな……温泉卵は人気なのか売っている量が少ないかのどっちかだろう。 あと温泉卵って何だ? 』


 何らかの影響……もしかして俺達とアシュレイドが戦っていたり戦っていたり世界崩壊させたりとか?


 そして真面目な奴は2種類居る。

 まず真面目で真面目な奴は真面目な質問は真面目に返して、 くだらない質問は適当に流すか無視する。

 真面目でバカな奴は真面目な質問は真面目に返して、 くだらない質問にも真面目に返して来る。

 ……シルフォの事だ。


「それより、 何らかの影響ってやっぱ戦いの事とかか!? 」


『その線も有るが、 もしかしたらアシュレイドに因る交錯された物とも考えられる。 試しに川に触れてみたらどうだ? 』


「そうか……! 」


 俺はシルフォの言うように世界に新たに加えられた物だと考えて川に浸かってみた。

 とても冷んやりとしていて靴の中に大量の水分が含まれていき重みが加えられた。流れで転びそうな程の勢いも有る。

 ──川だった。

 本物の川でした。マジもんでした……じゃあどうなってるんだよ。


『すまん、 ズボンまで濡れてしまっただろう? 』


「いや、 確証も無いのに完全に信じて脚で浸かった俺がバカだった」


 その後何度もフォローの言葉を贈ってくれるシルフォだが、 優しさが辛いです。

 いっそバカだバカだと罵って下さい。


 ──にしても、 じゃあ学校はどうなったんだ? この先に在る筈の学校もまさか消えたって言うのか? だとしたら教員や生徒は一体どうなったんだ? ……分からない事が多すぎて混乱してしまいそうだ。


「悪かったなシルフォ、 こんな事でメールを」


 俺が謝ると、 シルフォは全力で首を振っている。 優しいな、 だけど痛めないようにな。


『むしろ嬉し……いや全然構わない。 出れる時は出るさ。 それより初めてのメールがこれで終わりはちょっと悲し……』


「分かった。 じゃあまたな」


 俺はシルフォが言い終わる前に切った。

 ────────────────────

 作者(間違って消しちゃったので文が変わりますすみません)1,000文字分消えて心折れそう。(コピペ

 ───────────────────────

 全然構わないならそれも許してくれる筈だよね? ね? ……ね?

 多分、 大丈夫だよな。


「さてと、 行ってみるか」


 俺は川の先に在る筈の学校の方へ向かった。


「無ぇ」


 学校が在った場所は川が突っ切っていて、 広かった筈のスペースも草などで覆われてしまっている。

 だとしたら他の連中はどうしたんだろう。

 学校の事とかどうなったのか聞いてみたいけど、 友達とか居ねーしな。

 聞けもしないのでどうしようも無い。


 ──とりあえず俺は適当に店で適当にゆで卵を買って帰った。

「温泉卵は」


「無かったんだ。 だからゆで卵を買って来た」


「いいよ」


 やっぱ今必要だった訳じゃねーじゃねーか。 普通に食ってんじゃねーか。

 何なんだこの人は。

 テレビ見て寛いでんじゃねーよ。


「……母さんよ、 何故扉を塞ぐ? 」


 母は俺が部屋から出ようと扉に向かうとその長い脚を綺麗に上げ、 扉を塞いだ。

 何か嫌な予感がする。


「ちょっと聞きたい事がね」


 俺は頷くと先程まで母が座っていたソファーに座り、 母もその隣に腰を掛けた。

 母の眼は真剣で、 普段のふざけるこの人とは思えないモノだった。


「……アウドラさ、 異世界で何してるの? 」


「えっ」


 意外な質問だった──他からしたらそれが当たり前の質問なんだろうけど、 家を破壊したのが俺だと思い込んでるのに異世界の事を信じてくれるとは思え無かったんだ。

 ちょっとホッとした。

 俺は心の中でビワの仲間達に謝った──。


「俺は、戦ってるんだ。世界の為に、そして異世界の為でもある。以前家を破壊してった奴の仲間が相手なんだ」


「……うん」


 母の顔は真顔に近い真剣な表情だった。 でも異世界の事を信じてくれたならこの事も信じてくれる筈だ。そう信じた。


「仲間も居る。1人とは別れる羽目になっちまったけど、きっと何処かで生きてる……俺はそう信じてる」


「……そっか」


 微妙に間を空けてから相槌を打つ母に、少し不安を覚え始めた。

 何故なら、この反応の仕方の時の母は殆どを信じてないからだ。

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