第11話 急襲して来た二人
何か変なの……いやアシュレイドってのは明らかなんだけど、 ヨノギの先輩らしいからもっと強いんじゃねーか!? この2人。
緊張感のある沈黙の中、 ヨノギの後に来た2人のアシュレイドと睨み合う俺達。
お互いに強いと確信してるのか、 油断も何もせずに警戒したまま動かない。
もしかしたら攻撃されたのを避けてカウンターでも喰らわそうとしてるのか? そんな上手くいくのかな。
「お前達と遊んでいる暇は無い、 バイブレ・コントローラーさえ手放せば大人しく手を引いてやる」
喋り出したのはココアだった。
崩壊して行く世界の中、 これ以上時間が過ぎるのもあぶねーし何より3人相手は辛い……そう考えたんだろう、 俺も同感だ。
でも諦めてでも帰らねーと俺らも死んじまうって。
「なーにバカな事言ってんだ? 万が一こっちがコントローラー手放しても、 ヨノギが生きてる限りそれは使えねーぞ? 」
ココアをバカにする様にほくそ笑み、 ヨノギを指差す金髪コートのチビ。
俺でもコイツが明らかに強いと判るほどドス黒いオーラを放っている。チビの癖に。
「先輩~、 僕らも帰らないとコレマズいかも」
崩れ黒い光の粒となり消えて行く建物は、 もう既に壁の半分しかなくなっていた。
消えるスピードは10秒で1㎝程で、 かなり遅いがそれでも案外すぐに終わってしまう。
「そうだな……帰るか? だとしてもヨノギ、 お前誰も殺せていないんじゃボスに怒鳴られるぞ? 」
「えー、 それは嫌だなぁ」
何だ、 相手の方が帰りそうな感じだな、 わざわざ戦わなくて済みそうだ。
俺達も帰ろうぜ。
「逃がさないよ」
レインが《シャイニング・ソード》をメガネの首元に向けた。
ちょっと、 止めるなって。 帰らせりゃいいじゃんそのままよ、 時間ねーって!
「お前達にコントローラーを渡す訳にはいかない! 」
いやそうなんだけどよ、 ココア。
このままじゃ俺達も死ぬんだって……まてよ、 もしかしてお前ら元からその覚悟で任務行ってるんじゃねーよな? まさか。
死んでもコントローラーを奪う、 とか思ってんじゃねーよな? 違うよな……?
「ま、 こっちもこのままじゃ帰れねーんでな、 軽く殺してやるよ」
チビはコートのポケットから右手を出した。
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チビの右掌には大きな穴が空いていた、 それは銃口にも見える。
「燃えやがれ! 」
「どぉおわ!? 」
チビの掌の穴からは炎が噴射されて来た、 まるで右手は火炎放射器とも言える。
俺達は即座に後方へ跳び回避したが、 レインにも負けないスピードでメガネが突っ込んで来る。
「うおっ! ふんぬ! 」
俺が1番弱いと踏んだのか、 メガネは俺に笑う髑髏の杖を振り回して来る。
その攻撃の仕方は一見雑に思えるが、 実は正確に人体急所狙っていた──それより笑ってる髑髏がかなりウザい。
「てか……! やられっ放しでいるかオラァッ! 」
反撃しようと振り上げた刃は軽々と避けられ、 鳩尾に容赦無しの強烈な蹴りを喰らった。
「ごぉえっ! おえっ! 」
内臓破裂するかと思ったぞ、 それより吐き気がする、 気持ち悪……。
俺がよろけていると、 髑髏の杖を前方に突き出し先を押して俺に突っ込んで来るメガネ。
杖って打撃に使う物じゃないですよね、 それに大体は地を突く方で攻撃して来るのにお前は髑髏が有る持ち手の方で攻撃して来るのか。
「うおっ! と! 」
俺はツッコミを入れながらも間一髪で避け、 刃を再度振り上げるが同じく避けられまた鳩尾に蹴りを喰らった。
コイツ急所ばかり……。
「! 」
「彼氏になにしてんの」
俺に振り下ろされた杖をギリギリの所で止めたのはレインだった。
目がいつもの鬼の目と化し、 メガネを睨みつつも背後のヨノギを警戒している──そんな事俺出来ない。
「やるぞ! 3分切った! 」
「楽しもうぜ」
「くっ! 一か八かだな……!! 」
「水着ちゃん僕とやろうよー」
「楽しむ暇なんてないねこれ」
「そんな時間与える訳ないだろ」
「ですよねー」
「早めに終わらす……」
うん、 誰が何言ってるか分かりにくいんですが、 特にシルフォとココア。
俺達はとうとう床も崩れ始めたのにも関わらず戦闘を開始した……いやヨノギの時点で床はボコボコだけども。
「私とアウドラでこの薄汚いメガネ殺そ」
「薄汚いメガネって……」
レインはこんな戦闘中でもめちゃくちゃくっついて来る。
今が戦いの最中じゃなきゃ幸せなのにね。
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「よし、 死にたくねーから早くやんぞ! 」
「ふん、 かかって来い」
戦況を見る感じ、 髑髏メガネの相手は俺とレインで、 チビコートの相手はシルフォとアノムス。
そしてココアは1対1でヨノギとやるらしいが、 喉の怪我とか肋骨とか大丈夫なのかよ。
「そりゃあっ! 生麦生米生卵!!! 」
「何言ってんの旦那様」
俺が訳の分からない言葉を発してメガネに突っ込んで行くと、 突っ込んでる筈の俺がレインにツッコマれた。
いつの間に旦那様にランクアップしちゃってんの俺。
「荒いな、 戦闘経験が浅いようだ」
その通り。 お前はバカにしたつもりで言ってるんだろうけど、 実際に戦闘回数めっちゃ少ないからね、 弱いですよ俺っち。
俺が極普通に蹴り飛ばされると、 その隙にメガネに刃を振り上げるレイン。
ピストルの弾よりも早く、 黄金の閃が見えるレインの剣捌きを物ともせずに避けたメガネは髑髏杖を彼女の細い腹部に激突させる。
「かはっ……!! 」
レインは苦しそうに口を開き、 宙を舞う。
そしてそれに追い打ちをかけ砕けた床に叩きつけるメガネ。
「ぐっ……うっ……!! 」
「レイン!! 」
レインが軽くあしらわれてる、 この状況に俺は困惑していた……なぜなら、 レインはビワ国最強の戦士と言われているからだ。
それが敵の一兵に負けているとしたら、 俺達に勝ち目が無いとも言える。
だが負けず嫌いの意思が強いレインはすぐに立ち上がり、 覚束ない走りでメガネに向かって行く。
「ちくしょう! 」
俺も立ち上がりレインに続くが、 レインの剣を避けたメガネの髑髏杖により突き飛ばされた。
その後すぐにレインも蹴りを太腿に喰らい膝をつき顔面を蹴り上げられる。
「レイン……! 」
「う……」
脳が揺れているのか、 太腿のダメージが大きいのか既に立てなくなってきているレイン。
俺はメガネと一定の距離を保ちながらレインに近付いた。
「大丈夫か!? ちょっと休んでろ! 俺がやって来る! 」
そんな台詞を吐いたは良いが、 俺が奴と対等にやり合えるなんて微塵も思っていないし誰にも思われてない。
だが、 仲間でありそして自分の恋人であるレインをただただ守りたかったんだ。
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「お前らが束になって来ようが……この程度なら問題なさそうだな。 見てみろ、 お前らはコントローラーを使用しているが俺は生身だぞ」
確かに1番恐ろしいのはそこだ。
生身じゃウォーブもヨノギも俺と同じくらいの実力になるが、 コイツは生身でコントローラーを使用している俺達に勝っている。
しかも1対2でだ。
「コントローラーを手放しても余裕で全滅させられそうだが、 ボスの命令には従わねーとならないんでな」
よく喋るメガネだ、 ついでにそのボスの事もポロっと喋ってくれねーかな。
俺が死ぬ前に通信でユーニに教えるから──死にたくねーけど。
「黙って戦え!! 」
「黙って戦ったらつまらないだろ」
まあそうね。
俺は紅の刃を構え、 突っ込んで行く……が、 考え無しじゃない、 俺はもう殆どコントローラーのボタン操作には慣れて来てんだ!
俺はボタンの1つを押し、 床を切り裂いて埃を舞わせた。
「シャドウ・ビジョン!! 」
これ使うの楽しくなっちゃってね。
ーーシャドウ・ビジョン ニンショウシマシターー
俺はもう1人の自分と共に埃を突っ切るが、 見えなくなってる俺自身は1回ブレーキをかけメガネの後方へ移動して行く。
「偽物か……! 」
メガネは髑髏杖でシャドウ・俺の額を突き刺し消し去った。
……が、 その隙だけあったお陰で背後に接近出来た俺は、 姿が戻ると同時に右の刃を突き出した。
「おりゃ……! 」
俺は直後に顔面を膝蹴りされ、 よろけている間に思い切り振り下ろされた蹴りを喰らい壁に激突……しなかった。
もう壁は無くなっていて、 俺は空中を舞っていた。
「うおぉっ!? 空飛んでる! てか飛ばされてる! 戻んねーと……!! 」
俺が適当にジタバタしてると、 何が起こったのか身体が動かなくなり、 目の前に大量の透けた自分が見えた。
「え、 何これ」
俺は巻き戻される様に自分を通って行く、 そして飛ばされる前の位置に着地した。
俺もレインもメガネも無言でそれを見ていた。
「今の何……? 」
「自分で分からないのか」
うん、 分からない。
ビジョンの巻き戻しとかそんなもんかなってのは分かるんだけど、 どうやって使ったのかが全く分からない。
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俺が混乱して突っ立ってると、 メガネが鳩尾を髑髏杖で突き刺して来た……刺さっては無いけど。
激痛を感じながら吹っ飛んだ俺は呼吸が満足に出来ない状態になってしまった。
そろそろヤバい気がする。
「私がやる、 アウドラちょっと休んでて」
レインは立ち上がると、 危なっかしいフラついた走り方でメガネに突っ込んで行く。
やはり俺より強いらしくメガネの攻撃を避けながら戦っている……だが、 脳震盪の所為か数秒後には杖で殴られその場に倒れた。
「ぐあぁっ!! 」
声の方を向くと、 全身が痣だらけになり頭部から血が垂れたココアが床に伏せている。
気を失っているのか少しも動いていない……このままじゃ全員死んじまうぞ!
「マズいね、 皆の状態もそうだけど、 この世界の崩壊が60%を越えた」
唯一大したダメージを負っていないアノムスは、 周りを見て焦りの表情を見せる。
「皆、 今回は諦めよう。 仕方ない事だ、 君達が死んだら僕らはアシュレイドに勝てない。 今回は敗北だ」
やっと終わりか……アノムスはゲートを開き、 倒れているココアを抱え3人にも入る様に言った。
だが、 敵達はそれを許す事なくアノムスの方へ攻撃を仕掛ける。
「誰かしら殺さないと怒られちゃうんだよ、 死んでくれない? 」
「ごめんだね」
アノムス、 ココアが先にゲートに入ると、 下唇を噛み悔しそうな表情をしたシルフォもゲートに向かって行く。
そして俺とレインだけが残されたが、 どちらも起き上がる気力が無く転がったままだ。
「ま、 コイツらはこのまま死ぬだろ。 帰るぜ」
「ああ」
奴等が絨毯に乗り空へ浮くと、 俺はその隙に脚を引きずりながらゲートへ向かった。
「レイン! 来い! 立てんだろ!? 」
俺がそう叫び敵の3人が俺を睨みつける、 マズいばれた。
このままじゃ俺は殺される……!!
「レイ……!!?? 」
俺が見た時には既にレインはそこに倒れては居なく、 アシュレイド3人の絨毯の前に跳び上がっていた。
そして光速で黄金の剣を横に振る。
「うわっ! 」
「……!! 」
「あぶねっ! 」
受け止めた3人は体勢を崩したが、 メガネが即レインを叩き落とした。
「……っ!! 」
「レイン!! 」
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レインが落ちた直後、 ガラスの割れる様な音がしてヨノギの変身が解けた。
……? 何かが飛んで来る──俺が飛んで来た物を見ると、 それは『バイブレ・コントローラー』だった。
「あれれ、 取られちゃった」
「あのクソアマ! 」
アシュレイド達が急降下して来る、 マジでこれはヤバい状況だよな。
俺がレインの元へ行こうとしたら、 《シャイニング・ソード》の持ち手が腹に激突しゲートの中へ吹っ飛んだ。
「いったぁ!? 何!? 何で俺に攻撃したんだよレイン!! 」
チビが俺の入ったゲートの前に着地し、 右手の穴を向けて来る。
「……!! 」
その直後、 光速でチビに攻撃を仕掛けたレインはメガネに髑髏杖で突き飛ばされた。
そして少しずつゲートが閉まって行く。
「レイン!! 急げ! まだ間に合うから!! 」
俺がゲートに手を掛けて叫んでると、 レインは今までのどの笑みよりも優しい笑顔を見せた。
──もう死ぬ覚悟を決めたかのように……。
「コントローラー、 頼んだよアウドラ」
ちょっと待て、 どうする気だよ、 『頼んだ』って何だよ! 帰って来いよ! 急げ! ゲートが閉じる……!!
もう人の入れる大きさじゃなくなったゲートを見て溜息を吐いたアシュレイドのメンバーは一斉に目を閉じて立つレインを睨みつけた。
……レインはゆっくりと眼を開き、 誰にも聞こえないくらいのとても小さな声で呟いた。
……だが、 その言葉は俺には分かった。
── 愛してるよ ──
その直後ゲートは閉じ、 レインとアシュレイドがこの後どうなったかは分からない。
ただ1つ言える事は…………レインはもう、 帰って来ないという事だった ──。




