軌道空域編⑨-1 確保
ひゅううう。
晩秋の、冬の足音が聞こえるかのような風が吹く。
ぱた、ぱた。
焼け残ったアジア-オーストラリア防衛機構、AADAの旗。
しゅうあああ。
水素結晶由来のエンジンを使用した、垂直離発着機構を備えた軍用機。それが1台、西北西から飛来する。
しあああ。
瓦礫の少ないグラウンドに着陸し、
しぱあ、
後部ハッチが開き、
ざざざ、
十数名の隊員、陸戦装備の、白いスーツからトライカーパイロットとわかる。が駆け出す。
奇跡的。
または意図的に、ほぼ無傷のロミネンシアハンガーへ向かう。
しゅぴいいい。
彼らは腰のベルトから複数台のUAVを飛ばし、周囲の動体反応を確認する。かしゃこかしゃこ。
ハンガーロックを解除、シャッター手前のボックスを開き、ハンドルを手動で回してシャッターを開ける。
「ヒュウ。」
ここに来て、彼らの1人が口笛を吹いた。
「私語は慎め。」
パイロットの中で唯一、白いヘルメットに黒の線が入った隊員、上級士官だろう、が端的に注意する。
「へいへい、」
口笛を吹いたパイロットはロミネンシア:プロタガルテピュモッソのつま先部に手をかけ、
「けどあの騎士ナインもただの爆薬で死んじまった。見ろよこの機体─、」
他の隊員達と同様に、膝関節から腰部装甲板へ軽快に飛び乗る。
「まさかコイツに乗れるなんてなあ。」
コックピットハッチへ先のUAVを押し当て、
キュチイイ。
ロックを解除し、装甲兼ハッチを開く。
「しかしただの標準機から装甲を剥がして軽量化しただけだ。」
推定上級士官はイヴ機に乗り込む。
「我らの中でぇ白兵戦の優秀な貴官にぃ、搭乗を許可する。くぅ〜!たまんねぇ!」
ナイン機の彼はおどけて、上級士官の真似をする。
ちゃ、ちゃこ。
他パイロットも同じようにロミネンシアの操縦席で、起動手順を開始する。
「では総員ロミネンシア、スタンドアップ。」
上級士官の声に合わせて、
「ひゅごっ。」
「おおおうべぶええう。」
「ぬが、ああっ、あ─。」
複数の機体コクピットから、声が聞こえる。
「ちくしょう、何だ、何だこれ!」
ナイン機の彼も。
「おおおごごごぶ。」
説明したくは無いが、声が聞こえた。
かちゃ。
イヴ機のハッチが開く。
すたっ。
「あなた」の目の前に、上級士官が降り立つ。
「あああ、あー。」
彼の目鼻耳口からは─。
「うーわきっつー、敵になったゆーてもやり過ぎとちゃうの?」
「私はナイン様の事を信じているから耐えられるわ。」
「わたしのコックピットがどろどろになってますー。」
「確かに合理的で、こちらに死傷者は出なかった。」
マチコ達と共に見る彼ら、NAoEのパイロット達の頭部の、穴と言う穴は、イングラが蠢いている。
「しゃーゆーけどなー。」
「いいじゃない、尋問もする必要無いし。脳の記憶から情報も引き出し放題よ。」
「私達はもっとよくない改造されましたからー。」
「生体兵器となる事でしか生きられなかった君たちに言われたら、口を噤むしかないね。」
彼らの装備と所持品を改めながら話を聞いていた「あなた」は、「彼らは死んでいないよ。ただ脳への電気信号を借りているだけ。」と伝えた。
「せーやーかーら、それがえげつないってゆーとんのやー。」
「息苦しいけど死ぬ事は無いし、いいじゃない。」
「みみずのまる茹でに見えてきておなか減ってきましたー。」
「事態が落ち着けば、ヒュネアを私の母星Δ-223へ招待しよう。同じ料理が生でも食べられる。」
おしゃべりしながら、みんなはコックピットの清掃などを行う。
「あなた」もピュモッソのコックピットへ張り付いた吐瀉物を清掃していると、
たっとった。
軽快な足音がハンガーへ入ってくる。
「ナーインー、お花で包んでた基地のみんなを起こして来ましたなー。」




