トライカー編⑩目標
す、す。
スマートフォン、アロエの表面をなぞる。
ぱりぃぃ。
普通の人間には感じられないほど微弱な指先の静電気が画面のそれと反応し、アプリケーションを起動する。
しゃああ、あ。
円盤を回転させるような音。
ふぉ、ん。
画面が深い黒に埋め尽くされる。
ぴー、てぃりりてぃてぃきてぃ、
いかにもな黒地の背景を白地の文字が画面上から表示されて行く。
ふぉぉん。
「ジジ、ようこそコマンダー、ザ。」
アプリケーションが、戦場通信のような加工が施された男性の音声を再生する。
「おぉー、ふだんはアロエちゃんの声だから驚きましたなー。」
「あなた」の隣から画面を覗き込むガルデニアの肩を抱き寄せて、「あなた」は文字を表示し続けるデバイスとなったスマートフォンを操作す、る─。
A、「ここからどうするの?」
非常に間抜けな質問だが、「あなた」はちゃぶ台の正面に座り「あなた」とガルデニアを観察していたマチコに声をかけた。
A、半笑いとなったマチコはアロエを指さし、同時に─。
「こちらは対話型プログラミングアプリケーションです。」
「わあ。」
「簡単なタップ操作、またはマイクへ話しかけることで直接操作が可能です。またお使いのスマートフォンのソフトウェアキーボードなどで直接のプログラミングも行えます。」
「ほーほー。」
「つまりコイツと喋るだけでトライカーの思考する部分は仕上がる。当然戦う時も音声入力で指示を受け付ける。」
「ふむふむ。」
「ただし、複雑な機動なんかはあらかじめ仕込んでおいて─。」
「んんーむ?」
説明が複雑になり始め、ガルデニアが首をかしげる。
「そーだなー、食事のテーブルにペースト、カレーみてーのが「おらよメシだ。」って直接ぶちまけららたら殴り合いになるだろ?」
「ふーむ、そーですな。」
「器になるお皿や掬って食べるスプーン、バゲットやナン、白米にサラダが用意されて、「どうぞおあがんなさい。」って器に注がれる。食後のミルクもありゃ上々だ。」
「ほん!いーですないーですな!」
「で、だ。」
マチコは「あなた」とガルデニアの目の前に彼女のスマートフォンとアプリケーションを見せる。
戦闘─索敵─移動─攻撃
と項目がボタン表示されている。マチコの指先が索敵ボタンを押す。
索敵─光学─音紋─振動
と更に細かな項目が出る。
「おっとここからはアタイの機密事項だ。」
マチコはスマートフォンをスリープ状態にした。
「ほわー、ずるっこですなー。」
「何言ってんだよ。アタイは何だかんだこの地区のアタマだ、ナインが戦うならアタイのリベンジゴージャスとも戦う事になる。」
マチコは立ち上がる。
「初心者に必要な知識は伝えたんだ。これからはアタイがあんたの壁だ。10月10日の地区大会で待ってるぜ。」
かちゃり。
ドアを開けて、マチコは去った。
ぱさっ。
「ほわー、たいへんですなー!」
ガルデニアが両腕両脚を広げて寝転がる。
「それで、ナインは─。」
A、「行こうか、全球大会。」
その言葉に、「あなた」自身が驚いた。
ほんの初心者が、全球つまり世界大会に出る。
まず不可能だ。経験が足りない。
それでも─。
A、─「めざせゆーしょー!トライカー全球大会ちゃんぴおん!次元騎士ナイン・エルナですなー!」
ぱっ。
ガルデニアが跳ね起きて、「あなた」に
ぎゅ。
抱き着く。
「カッコいーとこ、見せてほしーですなー!」
そう、「あなた」は女神直属騎士隊フラマ セラタの隊長であり、次元騎士のナイン・エルナ。
はじめは翻弄されるだけだった。ただ目の前の女の子を守るために願い祈るだけだった。
なら、
やれるはずだ。




