トライカー編①ユキ/ヤナギ
シートに座り、固定用ベルトを装着する。
ジジ。
無線が入る。
タン。
受信スイッチを指で弾く。
耐Gスーツ越しに触れるスイッチは、ゴムを押しているようだ。
「目標、消失点上空、降下10秒前、9、8…。」
カチ、カチカチカチ。
機体各部のバランサー、アクチュエータ、フィンのコクピット接続をオンにする。
キュウウゥン。
ハッチが開く。
「帰って、来て。」
指揮管制士が、願うように囁き、
「ゼロ、降下!」
叫ぶ。
バク、バクゥ!
接続用アームが機体を解放する。
「この日のために、ここまで来たんだ。」
パチ、パチパチパチ。
メインモニタに表示される、更新され続ける立体解析されたホログラフを確認しながら、機体の空力制御トグルを跳ねさせて姿勢を─。
ザザザ!
無線が混線している!
バチッ!
「敵性文明種兵器の反応確認!」
オペレーターの叫び声!
ぎゅウゥ!
スーツ越しに左右一対の操縦桿を握る!
ギャルルルル!
耳障りなエンジン駆動音と共に、敵性ヒト型兵器がつむじ風を纏ってこちらへ来る!
「悪いが、死んでもらう!」
ジィィィィ!
第六世代機ロミネンシアの腕部アークソードで切り払う!
ピピピピピピ!
警告音の開始より先に左足ペダルを跳ねるように踏み推進器操作と右足ペダルを刻みながらつま先で踏み緩急を付けて加速させる!
敵の光学兵器を避ける!
「ノーマカノン!」
バシュウ!
機体肩部にマウントされた一門の砲が実体高速噴進弾を射出し、発射地点を爆散させる!
ヒュウウアアア!
消失点が迫る!
「オートパイロット開始、Y-1、ロミネンシアアウト。」
宣言と共にコックピットハッチから飛び出し、消失点を睨む!
ギャリアアアアア!!!
後方でロミネンシアが敵兵器と戦闘を行なっている!
ファク、スパァァァ!
パラシュートを展開、減速を始めた身体を捩るように着地姿勢を取り、
ッタ、
青い光の線が折り重なる消失点に降り立つ。
パチ。
パラシュートを切り離す。
過去の大戦で破壊され、剥き出しの鉄骨が聳えるそこは、何らかの研究所だった。
突撃小銃を構える。
カチ。
全自動射撃からマニュアル射撃へ切り替える。
サシュ。
腰の偵察用UAVを飛ばし、ゴーグルの視覚情報とリンクさせる。
ッタ、タタッ。
タタタタタッ。
駆けながら敵性文明人を処理し、進む。
数十の護衛を排除、ドアに辿り着く。
カ、タ。
自動では無い手動式のドアをスライドさせ、
「奪還目標を確認。」
その声に、
「ユキ、君…?」
ぱた。
振り向いた彼女は、何らかの板状デバイスを落とす。
パリィ、
デバイスが割れる。
「迎えに来た、ヤナギ。」
力なく、膝から崩れるヤナギを抱きしめる。
だ、ん。
戦闘を終えたロミネンシアが着地し、コックピットから吊り下げたタレットを2人で掴む。
「さよなら、おばさんの、研究室。」
─────
A、「ちょっと待って!幸拓室長の姪っ子なの!?」
ここらのトライカーを仕切ってると豪語していたマチコのスマートフォンで、「あなた」とガルデニアは大戦の再現映画を見ていた。
A、─「男の子がユキくんで、女の子がヤナギちゃんでしたからなー。しつちょーが付けそうな名前ですな。」
頷くガルデニアの隣で、
「アンタらが何であの幸拓さん個人を知っているのに、トライカーの事を知らねーのはよくわかんねーけどよ。」
リーダーマチコは続ける。
「幸拓 結実子さんが水素爆弾の発生させる熱量や観測に来てた異星文明の観測機を使ってどっかに行ったから、その異星文明との紛争が起きて、停戦して今だ。」
リーダーマチコは、トライカーのコア基板を指先で摘んでヒラヒラさせる。
「その観測機は水素を使った量子コンピュータで、その技術を一般庶民向けにしてこれが作られてんだ。」
彼女は、事態を理解しようと努める「あなた」に向かって、
「他になんか質問あんか?」
トライカー編①ユキ/ヤナギ




