刹那トラッカー発動編⑦その名はナツコ
刹那トラッカー発動編⑦ その名はナツコ
「あなた」は、軽い眠気に包まれて、うとうととしていた。
うつら、うつら。
まばたきの度に、藍色の髪の女の子と緑色の大きな龍や、赤いスポーツカーと巻き髪の女の子と幽霊のようなお姉さん、小さな女の子ふたり、ロボットに乗って戦って、女の子3人と走り回ったり、そんなめちゃくちゃな夢が、浮かんでは消えて。
「おい、おーい。」
声をかけられた「あなた」は、「もうちょっと寝かせて。」と寝ぼけながら返事をしたところ。
「姉が話しかけているのだからしゃっきりとせんか。」
硬いペン先でおでこをつつかれた。
はっと意識の覚醒した「あなた」は、硬質なスチールのデスク、太陽の光がわずかに差し込むカーテンのある窓、部屋の隅に置かれた観葉植物、そこまで強めではない照明のある部屋で、
「目が覚めたか?弟。」
目の前に座っていたのは、白いシャツにグレーのジャケット、細い眼鏡をかけた女性だった。
刹那トラッカー発動編⑦その名はナツコ
「全く、お前と来たらまた夢の話か。」
こつ、こつとヒールの音を響かせて彼女は通路を、「あなた」の三歩先を歩く。タイトなスカートで凛々しく歩く後ろ姿に「あなた」は見惚れてしまった。
彼女が振り向く。
「何を惚けている。」
A、「綺麗だなって。」
B、「カッコいいなって。」
振り向きざまの腰から肩への動きと、後ろ髪と横髪の揺れる様、微かに香る柑橘、あごのライン、そのどれもがシャープで…何より。
A、B、─「はぁ、何だそれは。」
彼女は目を細めて「あなた」を訝しむように見つめる。
「もう結婚をして 1ヶ月は経つのだ。慣れろ。」
そう言い放って再び歩き出す彼女の頬は、少し気色ばんでいたように見えた。
こつ、こつ。
ヒールが通路のタイルそれぞれを唱和させてゆく。それでも彼女は「あなた」の足音を聞き取り、常に三歩先を維持している。
手を伸ばせば届きそうで、届かない距離。
「あなた」に彼女のような姉がいるかどうかはわからない。それでも「あなた」は彼女に声を掛けなければ、ここがどこなのか、彼女の名前すらわからない。
A、「姉、さん?」彼女は「あなた」の事を性別に関わらず弟と呼ぶのだから、実際の姉もしくは作中の姉、または自らを姉と自称する異常者なのだろう。
とにかく、彼女の意思を尊重して姉と呼んでみた。
A、─「はぁ─。」彼女は振り向いてため息をつく。
「もう結婚したのだから、これからはナツコと呼べ、と言っただろう。」
結婚した、この言葉を聞くのは2度目になる、が奇妙な点がある。
B、「法律では、姉と弟で結婚は出来ないはずだ。」
これは単純にそうなっているからではなく、子を授かった場合に遺伝的な疾患の発生確率が上がるためそれらの不幸な出生を防ぐためでもある。
B、─「弟よ。」自称姉の異常者は厳しい目つきで「あなた」を凝視する。
「ここ最近の記憶が欠落しているのか?またはまだ、夢の中にいるのか?」
かつかつ。
足早に「あなた」に歩み寄った姉または異常者またはナツコは、「あなた」の額に手を当てる。
「熱はないようだな。」
急な接触に驚いた「あなた」の唇に。
「んっ。」
唇が、触れた。
爽やかな柑橘の香りが、「あなた」の心をときめかせる。
「ふーむ。姉センサーにも異常は見当たらないな。」
口付けに事態が飲み込めない「あなた」を観察した彼女は、「あなた」の手を握った。
「疲れているのだな。この姉がもてなしてやろう。」
一番の疲れている理由はそう宣言して、「あなた」の手を握り、歩き出す。
かつ、かつ。
しばらく何の変化もないグレーを基調とした通路を歩いて、軽く溝が彫られたかのような壁が現れる。
「ナツコだ。」
そう彼女は溝に向き直り宣言をして、
かしゃー。
まるで自動スライドドアが開くかのような音を立て、
「何だ?ドアを生まれて初めて見たような顔をして。」
手でスライドさせる普通のドアだった。
すごく期待外れのような、期待通り過ぎて拍子抜けしたような顔をした「あなた」を見た彼女は、「あなた」の手を引いてドアの中へ入る。
ここまで来れば、自動で照明が付くのだろうと考えた矢先、
カチッ。
普通に彼女は玄関壁のスイッチを押した。
「さっきから何だ?期待したような、落胆したような顔をして。」
彼女は腰を曲げて、片足を膝から内側へ曲げるように上げてパンプスに指をかけながら、「あなた」を見た。
硬質な話し方をする彼女が、髪を垂らして逆さまに「あなた」を見ている。
「どうした?」
それは何だか間の抜けているように見えて、「あなた」の微笑みを誘う。
「姉の顔を見て笑うとは、失礼な弟だ。」
狭い玄関の先はすぐに流しと加熱器具があった。
じゃー。
水道の取手を捻り、彼女は手を洗う。
普通すぎる。
しゅぽしゅぽ。
取手そばの食器用洗剤を手で掴み、洗剤で手と、
「んんんむむう。」
顔を洗い始めた!
A、「ちょっと待って!薬液と洗顔フォーム使って!」
さすがの「あなた」もこのズボラな行動には制止せざるを得ない!
A、─「何だ?待てやめろそれは高いんだ!」
彼女は洗顔フォームに手をかけた「あなた」に懇願する!何だこの女は!
「はあ、はあ。弟がまさかそんな奇行に走るとは思わなかった。」
髪を乱しながら息を吐く彼女に「それはおかしい。」と的確に「あなた」は指摘する。手洗いではなくなぜ簡易キッチンなのか、は置いておいても洗顔フォームをなぜ使用しないのか。その合理的な理由を「あなた」は求めた。
「これか。これはな…。」
彼女は遠い目をしながら、軽く笑う。
「これはオシャレに見えるから置いてあるだけだ。」
よく見ると、セロファンで個装されたままで、「お買い得!」のシールまで貼られていた。
A、「美容に興味ないの!?お肌荒れるよ!」
何だかんだでこの自称姉のズボラな異常者は、潜次元戦艦リコペルシカで出会ったひと達の中でも、いわゆるキレイ系の顔つきだ。その顔が食器用洗剤で荒れていく所は見たくない。
A、─「弟と結婚したのだから、弟に綺麗と言ってもらいたいのは事実だ。しかし、洗顔フォームはお高いのだ。パパミカンでいい。」
落ち着いてくると、彼女の顔や身体からしていた爽やかな柑橘の香りは─、
A、「もしかして、身体もそれで洗ってる?」
パパミカン愛用者の女性は、頬を赤らめてうつむき、手を口元へ当てた。
A、─「やはり魂を分けた弟には、わかってしまうものなのだな///」
乱れた髪と上気した頬、細められた目。
普通なら色気がある仕草だが、この異常者はパパミカンだ。
A、「姉を正すのも、弟の務めだ。」
B、「姉に相応しい美容アイテムを買いに行く。」
A、B、─「あなた」には今まで歩いた通路や壁には見覚えが無いが、その通路の配置様式などには理解があった。
そしてやっと、彼女の正体を理解した。
「やめ、やめろ、私はカッコいい姉なのだ!」
「カッコいい姉ならパパミカンで顔や身体を洗うな!」そう「あなた」は怒鳴り返し、彼女の腕を握り、「ネアレラ ヴィタ。」─潜次元戦艦リコペルシカの艦内移動用回路を起動させる。
─────
「ぉー、ナインだー。」
「中継で見てましたけど。」
「さすがに洗剤はちょっと…。」
女神直属騎士隊フラマ セラタの専用士官室。
吊り下げられた液晶パネルに白いテーブルと椅子、コタツと古びたブラウン管テレビジョンの同居する部屋。
「けっこーおあずけされてましたからなー。んんっ。」
「本当にどんどん女を増やしますねナインは。んっ。」
「でも、目を離せないのが「あなた」です♡」
ナツコの腕を握ったままガルデニア、カランコエ、ナナカマドとキスをして、
「これ、お肌のケアも出来るオイルです。」
「私もああならないように注意しなきゃ。」
アロエ、ヒヤシンスの頭を撫でて。
「けーどかなりナインの心は動かせたよねー。」
「さすがにクセが強すぎるのじゃあ。」
「ぼくも洗剤を使えばナインの気を引けるんじゃないかな!」
べふこのほっぺたをつまみ、ロータス2に肩を揉まれ、フィンネルのおでこを指で弾いた。
「あ、姉の前で妻達とみだらな、はしたない!」
そうナツコは言うものの、興奮しきった顔で自分の番を待ち侘びている。
そう言えば、確かに先月、パートナー達と口付けを交わしていた時、どさくさに紛れてこの異常者がキスしてきた気がする。
にゅるん。
「一夫多妻は趣味が悪いよぉ〜。」
にゅるん。
べふこの左目自体に空いた穴から顔を出したアネモネオが眉を顰める。ガルデニアから隠れるためとは言え、その隠れ方も良い趣味だ。
A、「ナツコ。」
声をかける。
第九次元人の「あなた」、もとい主人公ナイン・エルナの転写模倣体、ナイン2と仮称されていた彼女は、ついに自身の名前を見出して、「あなた」の前に立った。その名を呼ぶ。
A、─「な、何だね弟!」
改まって名前を呼ばれたことで、驚いて姿勢を正した彼女は、横髪が、む…なぜかこの女は水着になっている。
「おー、ナツコもナインと海に行きたいみたいですなー。」
手のひらサイズの龍やフルカラーズを頭と肩に乗せたガルデニアが声をかけた。
「ナインの九番目の妻だとしても、二番目の妻は私ですが!」
カランコエが水着に着替え始めた!
「カコさんが着替え終わる前に、」
ナナカマドが「あなた」の肩を押す。
「いーってらっしゃーいー。」
「んむ、かんたん!」
べふこが「あなた」たちの足元の空間を消して、ロータス2が邯鄲を起動して、「あなた」とナツコは、白い闇に呑まれた。
「弟〜!」
ナツコを抱き寄せる。
─────
さああ。
波が砂浜に押し寄せて、ささやかな喝采を上げている。
ちりちりと肌を焼く日差しに目を細めると、
「ふふ、この夏の海も私達で最後みたいだな。」
微笑みかけられて、「あなた」はどきりとする。
この異常者は、本当に顔が良い。
A、「最後というわけでも無いさ。」
B、「この瞬間だけは、永遠だ。」
そう、たとえ食器用洗剤で全身を洗う異常者だとしても、今模倣太陽の日差しを浴びて輝いている彼女と、微笑みあっているこの時間だけは、A、B、─永遠だ。
パパミカン愛用者女性は手を口元に当てて、目を逸らす。
「そう姉をどきりとさせるものでは、ない。」
この自称姉は、本当にこういう仕草が得意だ。
「ほ、ほら、海に来たのだ。私達も泳いだり砂遊びをしたりバーベキューをしようではないか!」
気を逸らすように自称異常者は「あなた」の手を取り、そして─。
「ふぁ。」
顔に似合わない、かわいい声を出した。
「そ、そのだな─。」
再び赤面した彼女は、
「改めて弟の手を握ると、胸が高鳴って、だな。」
パパミカン愛用者女性は視点が定まらず、次第に滑舌も悪くなる。
「あなた」がその様子に微笑んだ瞬間!
スパァン!
急に異常者は姿勢を低くし、「あなた」の足を蹴り払った!
当然転倒して砂浜に転がる「あなた」へ、
ザッ!
自称姉は飛び乗り、馬乗りになった!
目が血走っている!
「ふ、ふふふ!私は姉!姉つまり弟の姉なのだ!弟は姉には逆らえないのだ姉は弟に奉仕するものであり弟は姉の美貌に釘付けになりついに海でお互いの気持ちに気付いた姉と弟は─。」
─────
「こちらは潜次元戦艦リコペルシカならびに対星系兵器サン サー ラ総司令の先代星姫リコペルシカである。艦長アルカルブは夫とバカンスに行ったため己が中継に介入する。当然ながらナインとナツコは若気の至りタイムでの。そこで己が厳選した特別番組、ゲンザンくんとリコペルちゃん〜ほしのおひめさまのこいものがたり〜第一話オレの名前は勇者ゲンザン!〜を放送する。己もゲンザンと番になってからは毎晩若気の─。」
─────
クルルガンナ星人が銀河内の惑星文明を同化(実質的虐殺)を開始して1.600万年以上が経過した、ある一瞬の出来事。
銀河航行艦グ・グ・リーオリ・グ内
「星姫、やはりニアヤ クリオ内に発生を認めた熱量変化は、一般的な惑星文明のものである可能性が高い。」
「ふむ。」
頭を抱えたくなる。
数千代に渡り様々な惑星文明を同化してきたが、ニアヤ クリオの中に文明を築く種が発生したという記録は無い。
そもそも熱量記録体のはずの天体に、なぜ新たな文明種が─。
「星姫、先程全個体合議にてニアヤ クリオへの侵攻が決定した。」
ならば、合議に従おう。
「扉は己が開く。決死となろう。」
結局、星姫はそのための道具に成り下がったのだ。クルルガンナ星人の歴史の中、ある時点を境に、星姫は肉体の成長を完了する前に、このような形で処分されるようになった。初代星姫アルマコリエンデほどの能力を獲得する前に。
「一次侵攻の随伴艦隊を─。」
「よい。己は星姫ぞ。」
合議主導者を手で制止し、サン サー ラの中央門へ転移する。
口火を切らせ、殺されれば報復、生き残ればその場で処分、が慣例である。
ならば、それに従おう。
「廻れ廻れ、疾く奪え─。」
サン サー ラの多層構造門が位相回転を始める。
「彼方の夢を、此方に繋げ─。」
かつて、初代星姫のアルマコリエンデは、喪われた妹の命を星の生命種全てに刻み付けた時に、この能力を獲得したと言う。
ならば、私は誰にこの命を刻み付けるのだろうか。
「─ダルハルカ。」
扉が開く。
ふぉ、ん。
ニアヤ クリオは、熱量記録体であり、生命種はただの熱量へ変換されるはず、だ。
しかし、光の門を抜けた先には。
「マイ!目の前に女の子が!」
知的生命体が、いた。
─────
♪トマト、トマト、トマトは生が、いーちばんおーいしー♪
クルルガンナ先代星姫、リコペルシカも認めた!
「んむ、これは己の口にも合う!」
ヒサタナ印のトマト!ご要望は以下の番号まで〜♪
♪トマト、トマト、トマトは生が、いーちばんおーいしー♪
─────
「あー、こまーしゃる始まっちゃいましたなー。」
「先代星姫の恋も気になりますが、わたしはナインを見たいのですが!」
「まあまあ、私達もナインとは一晩しっかり過ごせましたしー。」
「私達は幼いのでその前に帰還させられたのが残念です。」
「はい、未成熟なまま邯鄲での学習を終えた事を後悔しています。」
「アロエとヒヤシンスちゃんはそのままでいーのよー。」
「んむ、あまり大きくても肩が凝るからの。」
「けどこの後の歴史、ゲンザンとリコペルシカの恋と愛の結末を知ってるから、その分過程を見るのは残酷だね。」
ナツコに搾り取られた「あなた」は、パートナー達が好きな事を喋ったり放送についての感想を話しているのを聞きながら、刹那トラッカーから再生された。
「む、ナインお帰りですなー。」
「げっそりしたようですが今夜は寝かしませんが!」
「私も火が付いちゃいました♡」
「先にナツコさんの日用品を買いに行きませんか?」
「そうですね。ナインに心労が溜まるのはよくありません。」
ガルデニア達に引っ張られて取り合いをされて、「あなた」が助けを求めようと手を伸ばした先に、
「あ、あの。もう一日分弟を貸してもらいたいのだが。」
「しょーがないわねー、初めてだったわけだし。」
「仕方あるまい、どーせ一瞬で帰って来れるしの。かんたん。」
「あなた」の手は、空を切り。
みーんみんみんみん。
あの浜辺に、ではなく。秋の始まりに差し掛かった、山。
「弟、姉は今、喜びの中にいる。」
大量のみかんが入ったカゴを背負った、姉がいた。
とは言え流石に重そうで、
A、「代わりに背負うよ。」
と申し出て、ナツコのみかんカゴを下ろそうとした。
A、─「あ…♡」
手が触れ合う。今回は流石に大人しく彼女はカゴを下ろして、「あなた」の言葉に従った。
「ある程度入ったから、まとめてガンルーム(先程の士官室)へ送ろう。簡単に分けて、この白箱に詰めるそうだ。」
妙に手際の良い姉は、皮の状態を見て仕分けしてゆく。
「傷のあるものは、その分傷むのも早い、まだ早生という時期を過ぎたくらいだから、皮が青く硬い。そこまで気にする必要も無いだろうが、この時期のものであれば、新年を迎えて少しすれば、食べ頃になる。」
新年。
否が応でも、「あなた」は新年という言葉を意識してしまう。
そう、この秋が過ぎれば冬に入り、新年を過ぎた13日。
「私が弟の転写模倣体として、」
ナツコは、みかんを選別する手を止めた「あなた」の、両手を握る。
「それでも、続けざまに邯鄲で、弟とふたり、同じ時間を過ごす許可を与えられたのは─。」
薄々、勘付いていた。
第十三次元人カヌメナーア攻略において、「あなた」ナイン・エルナの転写模倣体としてナイン2が、刹那トラッカーから再生されたのは─。
「おかしいだろう?私の役割は、弟を庇い、散ることにあるというのに。」
「あなた」の身代わりとして、死ぬ。
「あれほど焦がれた弟との時間を、」
声が、震えている。
「こうして、手を触れ合って、唇を交わして、」
戦慄く指先を、「あなた」は握りしめる。
「過ごす時間が増えるほどに、離れたく、なくなるんだ。割り切っていた、はずなのに…。」
涙を湛えたナツコを、
A、抱きしめる。
余りにも細くか弱い肩を、「あなた」は力強く抱く。
A、─「弟、私は─。」
最初は近寄りがたいほど、硬質な存在に見えた彼女は、台所用洗剤で顔を、全身を洗うズボラであり、「あなた」の手に触れるだけで赤面して目を回すほどであり、そして、海辺でも、山でも、「あなた」の心をときめかすほどの、笑顔を「あなた」だけに見せた。
そんな彼女に「あなた」は─。
B、「愛しい姉を守るのも、弟の務めだ。」
ナツコは一度強く目を閉じて、涙を追い出す。
B、─「私は、弟に焦がれる余りに弟に手を出して、弟の弟を弟らしくして、弟の弟を弟のように弟してしまった、そんな姉を、弟は弟として─。」
C、「ナイン・エルナ。姉ナツコの弟の名前だ。」唇を塞ぐ。
そうしてこれが、「あなた」からナツコへの、初めての口付けだった。
C、─「んん、ナイン、弟、ん、んっ。」
甘えるように、ナツコは「あなた」の唇を求める。
ひと時を過ごして、「あなた」の腕の中でナツコは寝息を立て始めた。
「弟、みかん、ナイン…。」
そう呟く姉にキスをして、「あなた」は瞳を閉じる。




