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異世界の歩き方!!  作者: Nihonshi-Sekaishi
信頼関係構築イベント
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15/24

可愛い人外、見参

「ううぅ……

ひもじい ひもじいのぉ……

今僕のお茶碗にあるのが

スープとよくわからんお野菜しかないのってさ…

お客人への待遇としてどうなん!?」


「無駄口をべらべらと叩かないでちょうだいカガミ

この奪い合いに負けたのだからしょうがないじゃない

お食事には立場の差もなにもないのよ 

……んん〜〜うんま!」


マヤは自身のお茶碗いっぱいに

パンパンと詰まっている

大ぶりのお肉やお野菜を美味しそうに頬張っている

そして口をもごもごさせながらも

ご恒例の説教を僕にしてきた


……状況を整理しよう

ことの始まりは約1分前,

カルシュが最初に箸を鍋に向かって

伸ばしていったのを皮切りに

6人によるお鍋の具材争奪戦が勃発したことに起因する


異世界に来て初めて出くわした文化らしい文化に

当然,僕は気後れしてしまって

箸を持つのが周りより10秒ほど遅くなってしまった


その結果,僕は惨敗

デカデカとしたお茶碗には容量の半分の具材もなく,

その具材の内容もよくわからない

根菜系の野菜がほとんどとなっている

僕の大好物のお肉は既に絶滅寸前の状況だ

加えて言うと,机の中央に置かれた3つのお鍋は

既に全部すっからかんとなっている

よってもう具材のこれ以上の入手は現状望めないみたいだ


この争奪戦の戦績をぱぱっと言ってくと

僕とカルシュはボロ負け

マヤとルナーシュ様は茶碗から溢れんばかりの

お肉を拵えている

プラティさまとテリウムはぼちぼち標準,

って感じだ


***


でも,ここまできて言うのはなにかと憚られるが

争奪戦の勝ち負けは正直……どうでもいい


出会った仲間たちと一緒に鍋を囲う

その元の世界では比較的当たり前だった行為が

今は…

途轍もないくらい楽しく,心が弾み躍っている

たとえそれが一期一会の出会いで

すぐに離別する運命だとしても

僕は今この瞬間を目一杯楽しんでいたい

異世界の厳しさに四苦八苦しながらも

ようやく掴み取った平和と安寧なんだ

それを不安なく享受することは

こんな僕にだって受け取ることのできる権利だと……

僕は思う



みんなの笑い声が聞こえる

勿論嘲笑でも嗤笑でもなく

食事をしながら

快活に談笑をしている,そんな笑い声だ


そんな和やかな雰囲気の中,

僕は必死に箸を進める

いくら謎の食べ物ばかりって言っても

鍋にぶっ込んだら何でも美味しくなるからな

旨いか不味いかでいったら当然旨いのだ


***


『むしゃむしゃむしゃ……』


食事中右後ろからそんな音が聞こえてきた

まるで人でないなにかの動物が

餌を貪り食うような,

そんな音が……

みんなの話し声で少し聞こえにくいが

確かにするのだ


僕は体を固定したまま,眼球を限界まで右へ動かして

正体を確認しようとする

だけどそこはちょうど死角となっており

残念ながら見ることはできなかった


なので今度こそ正体を目に収めるため

一旦食べるのをストップし

直接胴体を右へ向ける


「はうぇ!!?

く,くま!??」


信じ難い光景が眼前に広がっていた

テリウムが座っている椅子の後ろに

一般的な柴犬サイズの子グマがそこにいたのだ

そして床に置かれた巨大なブロック上のお肉を

ガブガブ食べている

食べかけのお肉にははっきりと歯形が付いており

如何に恐ろしい牙を持っているのかが窺える


「は??」


僕は普通ではありえない光景に腰を抜かしてしまった

したらば少しでもあの子グマから離れようと

机の向かいにいるマヤのところに素早く駆け寄り

その椅子の背もたれを盾にしてしゃがみこむ


「はぁ……

何?

ただの子グマが怖いの?」


マヤはすぐ後ろを振り向き

床に座り込んで怯えている僕を見下ろす


その質問に対し,僕はマヤの顔を見上げて

全力で首を縦に振った

そりゃあそうだ

いくら子どもサイズって言っても

クマは変わらずクマだ

怖いに決まっている

しかも僕が上京する前の地元は

北陸の田舎で,秋になるとクマが普通に

道路を歩いているような地域だった

だから余計にクマの怖さは身に染みて分かっている


「ルル,ルナーシュ様!!

クマに食い殺されちゃいます!

逃げてください! 今すぐに!!

絶対に背中を向けず,相手と目を合わせながら

ゆっくりと後ずさりしてください!」


突然の緊急事態に僕は戦々恐々とする

でも必死に恐怖を押し殺して

変わらず食事を続けているルナーシュ様に対し

声を張りあげる


「ん? えーーっと?

何を言っているのか分からないけど……

あの子は……テリウムの飼いクマよ?

だから逃げなくても大丈夫だと思うけど」


斜め後ろを振り向き

ビビり散らかしている僕を優しく諭してくれる

その一幕を見た

プラティさまとマヤは

口に含んだ食べ物を吹き出し

威勢よくげらげらと笑い始めた


「おい! フウマ!!

おめぇ人のペットをまるで

凶暴な動物みたいにしてんじゃねぇよ!

こいつはぁ俺の可愛い飼いクマだ

二度とんなこと言うなよ!!」


その笑いの渦の中に割り込むように

テリウムが声を上げる

まだ食べ物を噛んでいる最中だったのか

若干滑舌は怪しいが


「まぁいいや,お前は姫さんの恩人だからな…

特別に撫でさせてやるよ

こっちぃ来てみろ!!」


テリウムは椅子から立ち上がり

机の対角線上に蹲っている僕の顔を見る

その言葉を信じて

マヤの後ろ盾から巣立ちをし,ゆっくりと起き上がる

したらば僕はすり足をしながら,

机を回り込むように

その子グマに近づいていく


僕が着々と近づいているのが見えていないのか,

子グマは変わらずに下を向き

肉をガブガブ喰べている


そして触った

子グマの前でしゃがみ込んで

頭を優しく撫でる

背中のふわふわの毛をそーっとなぞっていって

最後には頭を2,3回ポンポンとさすった


「いやーー

最初はあんなに僕のこと怖がってたのに……

やっぱり僕の可愛さに見惚れちゃったの??」


ブロック状のお肉を食べ終えた

子グマは僕の方を見て少しの沈黙の後

そのように’喋った’


「はぁぁぁ!!??」


先ほどを遥かに上回る驚きが僕を襲い

咄嗟に手を後ろについて

四肢を使って後退りをする


「ちょっと! ちょっと!

そんなに怯えないでよ

傷ついちゃうって〜

僕には君を襲ったり食べたりする気なんて

これっぽっちもないんだから」


子グマは慌てた様子で僕を説得してくる

説得を聞き終えた僕の動きが止まったのを見ると

よちよち歩きで僕の元にまで来た


「自己紹介いい?

僕の名前はスーパ!

テリウムの相棒で

可愛い可愛いクマの妖精さ!

よろしく!」


子グマはそう気丈に話しかけ

不安定ながらも二足歩行で立ち上がり,丸っこい右手を僕に差し出してくる

立ち上がっても身長は50cm強しかなく

僕が片膝立ちをしようもんなら余裕で抜かせるくらいだ


「へっ?? は? 

えぇ?」


「おーーい

僕よろしくって言ったんだけど

応答してよ〜」


目の前の光景が信じられずただただ呆然とする僕の額を

プニプニの手で小突いてくる


「あ……

あぁ うん

よ,よろしく」


僕はスーパの意志に応えて

右手を差し出す

スーパの手の形は某猫型ロボットみたいな球形となっており

握手の仕方が分からなかったので

取り敢えず手を思いっきり広げて包み込んでみた

まぁこれで形式上握手にはなってくれたと思う


「まぁ…そうだよな

ここは異世界なんだから

喋るクマの1つや2つくらい何らおかしくはないんだ

ゆっくりでも時間をかけて受け入れていこう」


「ん〜?? 

なんか言ったの フーマ?」


「んぇ? 

ああ,いや… なんでも

っていうかもう僕の名前知ってるんだ!?」


「さっき自己紹介で自分から言ってたじゃん!

僕あの時机の下にいて,ばっちり聞いてたんだから!!」


スーパは誇らしげに短い腕を頑張ってクロスさせ腕組みをする

謎文化に喋る人外とかいう

インパクトもりもりのイベントが立て続けに起こったんだ

僕はいつのまにか自分が自己紹介をしていたのを

すっかり忘れていた


ひとまずこの状況を虚心坦懐に受け入れることができたが……

唯一この子グマとの接し方だけが分からなかった

心を通じ合わせることのできる昵懇の仲として接するのか

みんなにとっての可愛いペットとして接するのか_____

人生で初めて遭遇する属性の持ち主なので

僕は距離の取り方に少しの間当惑していた

まぁこんな贅沢な悩みができるだけ

今僕は究極の幸せ者なのだろう


そんな思慮を巡らせながら

僕はテリウムに『スーパを抱き上げていい?』

と聞いたら2つ返事で了承を貰えることのできた

なので善は急げ,で早速スーパを

自分の胸に引き寄せて抱え上げる

スーパはほんの少しだけ焦るような仕草を見せたが

すぐに僕に身を委ねてくれたので

ようやっと自分の席に戻って,

子グマを抱いたまま腰掛ける


「ごめんな〜

さっきはスーパを人食いみたいに言っちゃって

こうやってまじまじと見てたら

ほーんとに可愛いな! こんのー!!」


「ちょちょちょ!!

くすぐったいって〜」


存分にスーパのけむくじゃら且つふわふわの頬っぺたを

つねってつまんで揉んだ

それにスーパは照れながらも

元の世界の犬猫のような愛くるしい笑顔を浮かべる


***


僕とスーパの戯れの只中,

突然何の脈略もなく

少ない具材を全て食べ切ったカルシュが

僕に向かって口を開いた


「ところで……

ひとーーーつだけカガミ君に質問してもいいかネ?

これはこの場にいる全員が満場一致で

知りたがっているものだからネ」


「ふぉえ?? え,なんですか?」


カルシュの不意打ちに虚をつかれた

僕は焦りながらも横を向き

スーパの体をこちょこちょして遊んでいたのを中断させる


「でぇはぁ……………」


カルシュはじっくりと,じっくりと間を貯めて

この場にいる全員がぴたっと

静かになってからこう口にした


「……なんで君は2日前,

あの奴隷商人が山の頂上にいると分かったのかなネ??」


「……え?」




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