1.目が覚めたらゲームの世界でした
本編で影の薄かったアリシア=シードラン視点の物語です。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
「おはよう、アリシア=シードラン。よく眠れたか?」
「眠れるわけないですっ!早くここから出してください!」
ぷぅと私は頬を膨らませて、目の前で歪んだ笑みを浮かべた王子様にお願いした。
ま、無意味だって分かってるんだけどね。
この男は『氷の王子』と呼ばれるほど、他者に冷たい王子様だったんだもん。
記憶の中で私がやっていたゲームでは。
目を開けたら、この世界だった。
確かバイトの夜勤明けで、駅に行こうと交差点を渡っていたところに車が猛スピードで入ってきて「ヤバいな」なんて思ったのが直前の記憶。
最初目が覚めた時は状況が全く分からなかった。見覚えのない部屋に、見覚えのないお仕着せを着た見覚えのない女性。ここはどこ、私は誰?である。
夢か?きっと夢なんだな。何だか頭もふわふわしているし。
侍女と名乗る人が来たので、少しずつ話を聞いた。この夢の中では、私は19才の専門学校生ではなく6歳の幼女。アリシア=シードランという名前で、シードラン男爵家の1人娘。体が弱くて、すぐ熱を出す。今回も高熱を出して寝込んでいた。
そこで思った。アリシア=シードラン?聞いたことあるぞ?
大好きな声優さん目当てにやっていた乙女ゲームのヒロインだ。
色々なゲームをやっていたし、声優さん目当てだったので、正直タイトルすらあやふやだ。ストーリも一周したくらい。全キャラのルートはしたけど、あくまでその声優さんのキャラが脇役で出てくるからで、深く読み込んでない。
そんなゲームだったけど、かろうじてゲームのあらすじとヒロインの名前やキャラの名前は覚えてた。
物語はヒロイン、アリシア=シードランが王立学校に入学した所から始まる。
アリシアは体が弱く、長らく田舎の領地で育ったおかげで、貴族らしからぬ天津爛漫さを持っていた。その明るさと、実は持っていたという設定の聖力で、心に傷を抱えたイケメンたち5人を救っていく、ついでに王位略奪を狙う反逆者たちも討伐するというストーリーだ。
ルート間違えると、普通に反逆者に殺されちゃったりすんだよね。王子や他のキャラたちの心の傷も結構深くて、重たいゲームだった気がする。影のあるイケメンが好きという友達なんかはどハマりしてたけど、楽しいゲームが好きな私はそこまでだった。おそらく推しの声優のキャラが1番薄いストーリーだったことも原因。
とはいえ、一回めちゃくちゃこのゲームで泣かされたこともあった。推しのキャラではなかったけど、王子のルートのハッピーエンドは感動的だったのだ。
王子には妹がいたんだけど、その妹が…。
そこまで思い出して、うん?となった。今私何歳だっけ?と
王子には妹がいた。確か1歳下で、アリシア=シードランとは同い年という設定だったはず。同い年でどことなく妹と雰囲気が似ていたから、王子は段々アリシアに心を開いていくという流れだったから。
さっき聞いた話だと私は今6歳…6歳!
王子が心に傷を負った事件…妹が惨殺される事件が起こるのは確か彼女が6歳の時のはずだった。




