2.幸せな話のほうがいいよね
7歳の王子は見つめている。痩せほそった妹の亡骸を。
妹の名前は確かクリスティーナ。彼女は聖力が強く、聖女として神殿で暮らしてはいたものの、家族仲はよく、王子は妹を可愛がっていた。
だが6歳のある日、彼女は誘拐され、1週間後冷たくなった状態で発見される。
犯人は王位奪還を狙う国王の従兄弟の派閥の人間。王女を誘拐することによって、捜索に人員が割かれる隙を狙い、王宮にある貴重な聖道具を盗み出すことが目的だった。同時に力の強い聖女を殺せば祈りが減り、国が不安定になったところを攻められるという、一石二鳥の計画だったのだ。
ということをゲームを最後までした私は知っているけど、王子たちはそんなこと知るよしもなく。妹を殺した犯人を見つけ出して殺してやる、と王子は復讐に燃えることになる。
学園に入ってアリシアに出会い、そして犯人たちを捕えるまでずっと、笑うことすら自分に許さず。
私が泣いてしまったストーリーは、全てが終わった後。王子とアリシアがクリスティーナの亡くなった現場に花を手向に行った時、アリシアが聖力の籠った小さな木箱を見つける。
蓋を被ったそれを開けると、映像が流れ出す。幼きクリスティーナが映った映像が。
それは、最後の力を振り絞って、クリスティーナが死ぬ直前に家族に向けて残した聖道具だった。
『大好きだよ、幸せになってね。』
妹の言葉で彼は自分が幸せになるために人生を歩き始めるのだ。
そんな大事な転換期を今、迎えようとしてるんじゃない…!?
「ねぇ!王女殿下ってまだ生きてるよね?死んだなんて話ないよね?」
「何をおっしゃっているんですか?不敬でいらっしゃいますよ。」
侍女は流石に顔を歪める。確かに不敬すぎるけど、大事な話なんだよ。
王女が殺された話は特に秘匿などはされず、すぐ明らかになったはず。だから、彼女が知らないということは、多分まだ殺されていない。
ただ、この時期だったように思うのだ。彼女が殺されるのは。たくさんの花が咲く春の季節。
私は昼寝をすると言い、侍女を追い出した。
あの話は好きだったけど、人が死んでいいわけがないよね。
幸せはストーリーの方がずっといい。
私は小さな体を懸命に動かして、窓から飛び出した。
まずはそもそも彼女が誘拐されているかの確認のために彼女の暮らす大神殿に行こうかと思った。だけど、もし誘拐されていても私みたいな小娘にそんなこと教えてくれないだろうと思って、諦める。
だから、まずはとりあえず、彼女が殺された現場に行こうと思った。ゲームの最後のシーンで行ったところで、悪質なスラムにある賑わった食堂の地下。食糧庫として利用しているところだった。名前も場所も分かんないけど、行ったらわかるっしょ!




