39.眼鏡
なんだかんだ言って、私が相談する相手として1番に思い浮かべるのはお兄様である。
私はパージバルさんと共にお兄様の書斎に突撃し、現状を説明していた。
「ふーん、やっぱりねぇ。」
なんだその反応。余裕の訳知り顔しやがって。
「やっぱりって何?!一から十まで説明して!」
「そうですよ、説明してください!」
「そもそも、なんでセオドアは魅了されなかったんだ?」
うん?
「話逸らさないで!私は何故パージバルさんに変身の術が効かなかったのかって訊いてるの!」
「いや、大事なことだから。セオドアはなんでだと思う?」
「僕が好みじゃなかったから魅了をかけなかったんでしょう。真面目クソ眼鏡ですから。」
「うわ、嫌味。でも、好みじゃなくても、魅了しておいた方が楽じゃないか?セオドアは色々口を出してきてうるさかったし。」
「「確かに。」」
じゃあ、なんで?
「だから、アリシアがセオドアに魅了をかけなかったのではなく、セオドアが魅了に掛からなかったんだ。」
「そんなことある?よっぽどアリシアがタイプじゃなかったからとか?」
「いや、むしろタイプだろ。セオドアのタイプはかわ…」
「あーあーあー!もったいぶらずにさっさと教えてください!」
パージバルさんのタイプは気になるところだが、パージバルさんの言うことにに完全同意だったので、私もお兄様に視線で続きを促す。
「無粋な奴らめ」とぐちぐち言いながらも、私とパージバルさんの視線に耐えられなかったのだろうお兄様は答えを口に出した。
「セオドアのその眼鏡は特別なの。聖道具なの。」
「え?」
「というか、クリスティーナは覚えてないの?クリスティーナが作ったんだけど。」
「いや知らん。」
「俺が8歳だったから、クリスティーナが7歳の時かな。目の見えない公爵令息がいると聞いて、使えそう…友達になりたいな、と思った俺はクリスティーナに頼んで、普通の眼鏡に聖術で性質付与をしてもらったんだ。見通す力とか邪気を払うとか、いろんな性質をね。」
呆然とするパージバルさん。全く思い出せない私。まぁもう8年くらい前のことだもんね、仕方ないね。そういえばパージバルさんの眼鏡を触らしてもらった時に違和感を感じたのはそれだったのかな。
「では、僕の恩人は王子殿下ではなく、王女殿下なんですね…。ありがとうございます…。」
「全く覚えてないですが、パージバルさんの人生の手助けになれてて嬉しいです。」
ちょっと涙目のパージバルさん。前も言っていたもんね。目が見えるようになって人生が変わったって。私のおかげなら、そんなに嬉しいこともない。
「いや待って。俺のアイデアなんだから、俺が恩人だろ。」
パージバルさんの濡れた瞳はとても綺麗で…。恩着せがましいことを言っているお兄様は無視することにした。




