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21.婚約者

「ご機嫌麗しゅう、王子殿下。そしてお初にお目にかかります、王女殿下。わたくし、サルファ侯爵が娘、マリアベルでございます。」


綺麗なカーテーシーと髪の色と同じ真っ赤のドレスに、白い麻の修道服の私は気後れする。


「王子殿下にそっくりでとてもお綺麗ですのね。わたくし、見惚れてしまいましたわ。」

「あざす…。」


私より何倍も美しい妖艶な微笑みを浮かべてそう言われても、中々受け入れ難い。


「今日は王女殿下に感謝を述べに来ましたの。」

「え?私?そーなんですか?」

「わたくしの婚約者がご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。王女殿下が浄化してくださるとお聞きして、今日は来させていただきましたのよ。」

「いえ、お気になさらず。筆頭聖女として、当然のことをしたまでですから。」


貴族令嬢としての戦いでは勝てないと悟った私は、筆頭聖女としての微笑みを浮かべてみる。王女としての振る舞いには不安しかないが、筆頭聖女としての振る舞いなら自信があるのだ。


「本当に魅了にかかるなんてお恥ずかしい話ですわ。殿下はすぐ気づかれたというのに…。」

「いや、俺も短期間とはいえかかっていたし、あれは仕方がない。聖力が使える女性や、一部の聖職者を除き防ぎようがないからな。」

「殿下はどうして気づかれたのですか?」

「セオドアのおかげだ。あいつが『おかしい』と言ってくれたからな。」


絶対嘘だ。自分が貧乳の女を好きになるわけないという信頼からだ。


「だから、あまりクライスを責めないでやってほしいが、今回の件で気持ちが冷めても仕方がないとも思う。サルファ嬢が婚約解消を考えているのであれば、侯爵には俺から口添えしてもいいが。」

「お心遣いありがとうございます。ですが、考えていませんので大丈夫ですわ。彼には昔から大して期待していませんの」


うぉぉ…これが政略婚約というやつか。


「小さい頃から泣き虫でいつもわたくしの後ろをついて回る子でしたの。頭の回転も良くない、運動神経も良くない、社交も苦手。いいのは顔と声くらい…。」

「まぁそうだな…。」


渋い顔をするお兄様に私は居た堪れなくて声を上げる。

「何かフォローないの?」

「…調子はいいよな。」

「なんのフォローにもなってない。」


サルファさんが口角を上げる。きっと笑ってくれたんだと思うんだけど、なんかエロい。


「でも、だからこそ目が離せないのですわ。彼にはわたくしがついていないと。」

「だからといって君が犠牲になる必要はないと思うが。」

「わたくしが、そばにいたいだけなのですわ。」


私は目を見開く。


それはつまり…。


「わたくしは、彼がどんなに愚かでも、人でなしでも、この命果てるまで、添い遂げると決めていますの。」


そう告げるサルファさんの顔はとても美しくて…。



だめんず好きなんだな。



私はそう思ったのだった。



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