第十一話 レクリエーション開始
「は? え? どういうこと? なんかの冗談?」
「れ、レクレーションだろ!? 遊びだろ!? なんだよ退学って! ふざけんな!!」
「ここに入るまでにどれだけ苦労したと思ってるんだ!!?」
ギャーギャーと喚きだす。
うるさい。ここに居ない奴らに文句を言っている暇があるのか。
制限時間8時間、学園エリアに絞っても徒歩で全域を探すのは不可能だ。半分も探せないだろう。
ただ広いだけならまだしも、僕達には土地勘がない。やみくもに探すのは命取り。どうする……。
「落ち着きなさい!! 喚いてもなにも始まらないわ!」
1人の少女が声で場を制した。
真っ赤な髪の少女……彼女だ。ヒマリ=ランファーだ。
前に僕が受験票を届けた相手である。同じクラスだったのか。人数を数えている時に見た時は後ろ姿だったから気が付かなかったな。
「クラスの指揮は私が執る。黙って私の命令に従ってちょうだい!」
誰かが指揮を執り、クラスをまとめなければいけない状況だ。いま一番すべきことはリーダーを立てることである。
だがしかし、彼女が指揮を執ってもまとまらないだろうな。
「はぁ? なんか、すげームカつく言い方なんだけど。アンタみたいな高慢そうな奴に従うのは嫌だね」
銀の長髪、白く透き通った肌の少女が難色を示した。
銀髪の少女はフーセンガムを膨らませ、ヒマリを睨む。
「誰よ貴方」
「カレン=ナタリー」
「ナタリー? 知らない家名ね」
見下したようなヒマリの視線に、カレンはムッと顔をしかめる。
「家が無名ならアンタに文句言っちゃいけないわけ? ランファー家の七光り」
「七光り……!? 下民の分際で、私を貶すつもり?」
開始数秒、仲間割れ勃発。
2人の少女から放たれた険悪ムードがクラスを包み込む。
「おいおい、喧嘩はやめろよお二人さん」
黒い短髪の男が間に割り込む。口元に傷跡があり、芯のある強い目つきをしている。
「そうそう! 仲良くいこうよ!」
彼に続くは温和な女子。ぱっちりと開いた大きな瞳と水色の髪をもったふんわりムードの女子だ。ヒマリと銀髪女子に並ぶ美人だな。ラントの言う通り、今年の新入生は美人が多いらしい。
「喧嘩なんかに費やす時間はないぞ」
「ほーら、離れて離れて……」
2人に押され、ヒマリと銀髪女子は場を退いた。
「なーんか、お前らイイ感じだし。このまま仕切ってくれよ。誰かがリーダーやんねぇとまとまらないべ」
ラントが絶妙なタイミングで提案する。
仕切りたくとも、自分から仕切るとは言いづらい状況だった。
2人は「そういうことなら……」とまんざらでもない様子で頷いた。
「私はモニカ。よろしくね」
「俺はギャネットだ。本当ならゆっくり自己紹介といきたいが、時間が惜しい。捜索の途中で適当に交流してくれ。まずは学校側が用意したヒントを見よう。えっと、それでヒントが入ってるっていう宝箱だが……」
「これでしょ」
太っこい男子生徒が宝箱をギャネットの前に運ぶ。
宝箱には白い虎の絵が描いてあった。
「白い虎、白虎が描かれてるから、これが僕たちのヒントボックスってことだと思う」
「ありがとう! 早速開けてみよう」
ギャネットは宝箱を開き、中に入っている物を取り出す。
それはパズルのピースだった。計20ピースだ。
「パズルのピースか。組み立てろ、ということなんだろうな……誰か頼む! 俺はこういうの至極苦手だ!!」
「貸してちょうだい」
ヒマリがギャネットからパズルピースを奪い、
いとも簡単に組み立てた。
「おぉ! 凄いな!」
ギャネットは惜しみなく称賛する。ヒマリも鼻が高そうだ。
パズルはまだまだ未完成って感じだ。パズルには何やら絵が描いてある。
「地図か!」
ギャネットの言う通り、地図だ。
丸印が付いている場所が僕たちの現在地だろう。
あとは左方面、地図に描かれたコンパスを見るに、西側に教務棟がある。
現在地、教務棟。あとは地形が描かれているだけだ。いや、1つだけ、変なマークがある。宝箱のマークだ。
「これって……」
モニカが宝箱マークを指さす。
「宝箱マークってことは、ここに行けばまた宝箱があるんじゃないかな?」
「そうだな。他に手がかりも無いし、そこまでの道のりはパズル地図で記されている。向かってみよう!」
反論する者はいない。現時点ある選択肢で最適解だろう。
パズルはまだ5分の1ぐらいしか完成してない。
モニカの言う通りそこに行けば宝箱があるに違いない。僕の予想が正しければ、その宝箱に入っているのは恐らく――




