第十二話 シャルル、動く
レクリエーション開始1時間後。
学園エリア、第3修練場に僕達“白虎組”は辿り着いた。宝箱マークがある場所である。
地面が芝生の大広場だ。魔術の実技訓練とかをする場所なのだろう。
「ここら辺に宝箱があるはずだ! みんな探してくれ!」
ギャネットが指示を飛ばす。
僕達は手分けして探した。
しかし――
「ないよ!」
「こっちも無い!」
「こっちにもないわ」
おかしいな、とギャネットは頬を掻く。
「『ヒントと魔術を頼りに』って言ってたし、魔術を使わなきゃ見つからないようなところに隠してるんじゃないかな?」
僕が言うと、ギャネットは「それだ!」と同意した。
「誰か! 物を探せる魔術を使えないか!?」
「はいはーい! 私、使えるよ!」
手を挙げたのはモニカだ。
モニカはオレンジ色の杖を空に向ける。
「【ズーヘデンファイン】。木製の宝箱を探して!」
杖から緑色の光が飛び散り、粉となって幅広くまき散らされる。
光の粒は芝生に散らかった……それだけだ。
モニカは頭を傾げた。
「近くにあれば、光の粒が探している物に向かうはずなんだけど……」
光の粒は地面に落ちた。言い換えれば、地面に向かった。
となると、地面の下か。
光が散らばった芝生を注意深く見てみる。
一ヶ所だけ、芝生の色が違う場所があった。他が薄汚れた芝生なのに、ここだけ新しい。
掘った後、新たな芝生を植えたに違いない。色の違う芝生に歩み寄り、素手で地面を掘る。
硬い感触がヒット。間違いないな……。
「よっと」
宝箱を地面の中から引っこ抜いた。
それを見た女子が「あった!」と指さしてきた。
「おお! でかしたぞ! えっと……」
「シャルルだよ」
「でかしたぞ、シャルル!」
このギャネットという男、中々にリーダーシップがある。
クセのある面々に文句を言わせない迫力、誰かが良い動きをする度、丁寧に褒める姿勢。ギャネットのおかげでクラスの雰囲気は徐々に良くなってきている。ただ、ヒマリだけは面白くないご様子だ。
「開けるぞ」
ギャネットが宝箱を開ける。
中にあったのは……、
「パズルのピースだ!」
また20ピースだ。予想通りだな。
ヒマリがここぞとばかりに前に出て、パズルを組む。
さっきの20ピースと合わせて40ピース分の地図が出来た。宝箱のマークが新しく組まれた場所に現れた。
「あ! 私わかったかも!」
モニカは『閃いた!』って顔で両手を合わせた。
「きっと宝箱を追っていけばパズル地図が完成して、最終的にクラス校舎の場所がわかるようになってるんじゃないかな!?」
……。
数秒の静寂。
あれ? と可愛らしく首を傾げるモニカ。
いや、間違ってはいないだろう。
だがこの場に居る全員、それぐらいわかっている。王道の考え方だ。
「マジか! すげぇ、よく気づいたな!」
ラントがモニカを褒めたたえる。
モニカを気遣っての台詞か? とも思ったのだが、ラントの目の輝きを見る限り本音らしい。
「絶対そうだべ! 天才かお前!? 天才か!?」
「だよねだよね! 私、天才かも!」
「天才だ! 俺が保証する!」
「お、おう! よし、その調子だ。モニカの言う通りの可能性は高い。宝箱を探そう!」
その後、高調子で宝箱を探し当て、
開始から4時間後、スタート地点の宝箱も合わせて計4箱80ピースを探し当てた。
残り4時間。
学園エリアを走り疲れていた面々だったが、残り一個ということで気合を入れ直し、最後の宝箱を探す。
それから1時間が経過し、
学園エリアにある畑、その狭間道で、最後の宝箱を発見した。
ピースは20ピース入っており、パズルは完成したのだった。
「よぉし! 見てくれ皆!」
ギャネットがクラスメンバーを集める。
完成した地図には、×印が書き込まれていた。
「この×印まで行けば、クラス校舎があるはずだ!」
「やったやった! 退学にならなくて済むよ!」
モニカは両手を振って喜ぶ。
「そうときまりゃ早く行こうぜ。俺もう腹減った……」
「俺もだよ」とラントに意見にギャネットは頷く。
良いムードだ。だが、上手くいきすぎだ。
こんな癖のない展開でいいのか? 僕の考え過ぎだろうか。
「……そんな上手くいかないでしょ」
ボソッと、カレンが言った。
「君もそう思うでしょ? シャルル」
「え」
カレンは僕の顔を見て、すぐに逸らして前に歩いて行った。
「どうして、僕の名前……」
まだ彼女に自己紹介はしていない。さっきの僕とギャネットの会話を聞いていたのか。
とにもかくにも、カレンの小さな呟き、心配は、正しかった。
地図に記された場所に着いて、落胆する。
×印の場所に、透明化の魔術が施された建物があった。宮殿だ。透明化の魔術はヒマリ様が解いてくれたのだが、建物の表札にはこう書いてあった。
――『朱雀舎』と。
白虎じゃない。
「せ、先生たち、宝箱間違えたんじゃ……」
モニカが震えた声で言う。
「つーかさ、そもそも宝箱の中身がウチらのクラス校舎の場所を示す、とは言って無いでしょ?」
カレンがガムを膨らませながら言う。
「そうね。でも宝箱の中身がヒントになるとは言ってた。ヒント……」
ヒマリは考え込むも、答えが見つからなそうだ。
「どうしよう!」
「もう時間ないよ!」
「終わりよ……退学……」
パニック状態になる同級生たち。
無理もない。もう今は14時15分だ。
タイムリミットの17時まで2時間と45分。時間が無い。
しかも体力は使い果たしている。がむしゃらに捜索する元気すら残ってない。
「落ち着け皆! 他のクラスの宝箱にもパズルが入っていたはずだ。どこかのクラスの宝箱の中には、ウチのクラス校舎の場所が……」
「無理よ。計13クラスはあるのよ? このバカでかい敷地で、他のクラスと接触できると思う? コンタクト取れたとしてもよくて2クラスってところよ。その2クラスがパズルを完成させていて、しかも私たちのクラス校舎のパズルを持ってる可能性なんてほとんどゼロだわ」
ギャネットの言葉をヒマリは真っ向からねじ伏せた。
そう言うヒマリの顔にも、焦りが走っている。
さてと、そろそろ動くか。
このまま退学はご免だからな。
「ラント、こっち来て」
「え、あ、おい!?」
クラスが動揺した隙にラントを連れてその場を離れ、近くの校舎の影に隠れる。
「……ど、どうしたんだよシャルル!」
「おかしいよ。宝箱、出発地点であるダーツ城、クラス校舎の場所が地図に記されていたのはわかる。けど1つだけ、まったく関係の無い場所が地図に載ってた」
「え? あぁ……っと! 教務棟か!」
そう教務棟。
教師たちの根城だ。
あれだけ妙に気になる。
「教務棟の中には教務室、教師が使っている部屋があるはず」
「そりゃあな……なにかあった時、先生たちを呼べるように位置を載せたんじゃねぇのか?」
「ダーツ城にだって先生たちはいるじゃないか」
「ん? 言われてみりゃそうだな……」
「地図に記された教務棟の位置。これこそがヒントだと僕は思う」
「ひんとぉ? ――だーっ! わかんねぇ! 結論から言ってくれ!」
「教務室は教師たちが活動する場所。そこにならクラス校舎含め、学園エリア全域の詳しい地図があっても不思議じゃないってこと。だから――」
僕は教務棟のある方角を指さす。
「教務室から地図を盗むんだ」




