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子育て?超越者(ヒュペリオン)  作者: 樽腹
第四章 超越者
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第34話 勝利ともふもふと



エアが飛んで行った先をいつまでも眺めていると。


──おおおい!


遠くから鎧を揺らしながら首領達が走ってやって来る。


「ぐるるる!」「うぉふっ!!」

「あぉおぉん!」


その横をすり抜けるように駆けて来た無数の狼に囲まれ。


「ちょっ!まっ!おおぉおっ!?!」


甘噛みで腕を引かれてその場に座りこむと、首や頭を擦り付けべろべろ舐めたりと大忙しだ。


狼みんなが大きな尻尾をブンブン振って、次々と俺に襲いかかる。



「こら耳をはむなって!っ、うはははは!」

「やれやれ、人気者だな」



秘宝の指輪で創られた偽物の俺がやられたあと。


首領達には死んだように見せ掛ける為に...


本体でこっそり呼び直して、元々伏せてあった仲間全員と霧の中で戦って貰った。


最初の召喚からポーションを使って粘りに粘って、本気で俺の心配をしてくれたからこそ。


相手が見事に騙されて作戦が嵌った。


あの戦いのMVPは間違いなく首領だろう。


無論狼達も、頑張った。


あの霧の中で細かな連携の起点役となって真っ先に敵を崩す役割を担ってくれた。


身の危険から反応する手駒を、四方から囲んで確実に一体ずつ引きずり倒して襲いかかる。


一方的な戦いに出来たのは、彼等の索敵能力と機動力に因んだ連携だ。


...狼に囲まれた時点で、並大抵の人間は終わるだろうな。


野生の動物...加えて魔獣ともなれば反応速度も半端ない。


そんな相手に罠や前準備も無く、ホームグラウンドである場所に生息している狼と戦うとか絶対に無理だ。



ラヴィネの両親の攻撃方法が特にヤバイ。


相手の間合いに一瞬入ったりすれ違うだけで柔らかい敵は抉られたりほぼ真っ二つになったりしていた。



一瞬だけ氷の刃を出しての攻撃。



霧の効果を極力長める為にも、視界が晴れるかもしれないから凍らせるのは極力控えるように、頼んだ答えがこれだった。


氷魔法ってのは本当に恐ろしい。


もし首領の特殊能力が魔法耐性でなかったら...


あの時俺と殺し合いになっていたのは、ラヴィネの両親と生き残った狼の群だったかもしれなかったな。



俺は首領達がやって来てからも狼達の相手に大忙しだ。


「やったな」

「ああ」


首領に差し伸べられた手を掴み、じゃれつく狼の相手をしながら起き上がる。



うん...みんなよく頑張った。



「みんな...ありがとうな」



「「「「おぉおぉおおおおん!!!」」」」

「「「「ぶぉう!!!ぶぉう!!!ぶぉう!!!」」」」



周りの狼が応えるように吠え、遅れてハイオーク達が一定のリズムで足をふみ鳴らして吠える。



「はっはっは!いやあ暴れた暴れた!!」



遅れてラヴィネの父親とワンダさんがやって来た。


白雪狼の背にはキリルとの接敵で助けた女性の冒険者が、数々のリュックや武器とともに未だに意識を失ったままぐったりとうつ伏せになっている。



もしかして頭を打ったか?

背中を冷たい汗が伝う。


「ああ、大丈夫だ。意識が戻ったら厄介だろうって事でイルダナフ殿が魔術でより深く眠らせた」



「そうですか...」



良かった。


一日に二人も...しかも片方は何の罪もない一般人だった日には、俺はもう二度と立ち直れなかっただろう。


「残念な事だが、持ち主の居ない装備品に血と灰が散乱しててな...おそらく、ダンジョン帰りの冒険者があいつに出喰わしちまったらしい」


ワンダさんが険しい顔で、眉を掻きながら血で汚れたリュックをぽんと叩く。


キリルの言葉の裏にあった意味を理解していた俺は、この犠牲になった人達にただ謝る事しか出来ない。



一方を助ける為に一方を殺さねばならない。



その一方を生かした場合、自分を含めた罪の無い人々は死ぬ。


そもそもその一方は原因となる存在であり、嬉々として命を奪う者だ。



どうするべきかなんてものは、言わなくても良いだろう。



法で裁ける者ならそうする。


だけど相手は法に囚われず、捕まえる事すら出来ない。



でも──


あの男の命とこの世界の命の重さとか、価値や正義論と倫理観...問題が頭の中でひしめきあう。


自罰と弁明の思考を巡らせる事で、原罪を逃れてその意味を和らげようと麻痺させる。


誰にも備わっている己を守る防衛本能。



──止めよう。



俺は確かにあの男を殺した。


それが全てだ。



「タリオン?」

「...いや、何でもない」


俺は首領に手を振って応えると、僅かな狼と蛇達に囲まれている集団に目を向けた。


ワンダさんと白雪狼が怪訝な顔をして首を傾げる。


「なんだぁ?」「うぉふっ」


蛇達は困ったように、頻りとこちらに顔を向けていた。


狼達が隙を伺うように、その集団の周りをゆったりと回っている。


まるで、獲物を狙うように──



鼻にシワを寄せた険しい顔をして、二人と向き合ってるラヴィネの母親が。

誰かを庇うようにして身構えるココと、自然体のままのイルダナフさんがそこに居た。


ココはペンダントを咥えたままのステラを、ぎゅっと抱きしめて...こちらを睨みつけている。


どうしたのだろう?ラヴィネはいったい?


俺と首領が近づくとステラは抱かれたまま、ぴゃあと鳴いた。




秘宝のペンダントが落ちて、ぽとりと草むらに投げ出された。



「動かないで」





...へ?


(´ω`)ここまで読んで頂きありがとうございます!

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