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子育て?超越者(ヒュペリオン)  作者: 樽腹
第四章 超越者
87/120

第28話 もう一人の


──────



何処かで、彼の身に何かが起きたような気がした。



...違う。



『──何かあったわね』

「なな、なにが...?」


鏡の中の()()()が、窓の向こう側にある空を見つめて呟く。



この館にやって来た狩人の男の子は、おばあちゃんに白金貨数枚と真銀で出来たネックレスを与えられ。


その瞳に言い知れぬ思いを秘めたまま、此処から飛び出して行ってしまった。



ラヴィネちゃんとステラちゃんを連れて...



私は後を追うことも出来ず。


おばあちゃんに大事をとって休むよう言われて、こうして部屋にひとりぼっち...



おばあちゃんはあの男の子に、何を見たの?


あの男の子は、一体何と戦おうとしているの?



『...いつも天翁樹の下に居たおじいさまが何処かへ行ったわ。それだけじゃない...ワンダさんもこの街から居なくなってる』



鏡の中のわたしは瞳を閉じたまま。

その指からこの街の小さくて凄く精密な縮図を映し出して呟いた。




いつからだろう...



私が、もう一人のわたしを自覚するようになったのは──



気づけば、彼女は私よりも綺麗な姿でそこに居た。


見られるのが嫌で伸ばした前髪から覗く、そばかす一つない綺麗な顔。



細く、形の整った眉。



長い睫毛にキリッとした口元。



身なりは一緒でも、私にはない美貌を持ち合わせ。



もう一人のわたしは今ある世界の在り方を知っていて。


おばあちゃんのように私の事を考え。


この世のものとは思えないほどの魔術を使い。


私というちっぽけで弱い存在を守ってくれる、姉のような存在だった。


そして、姿が映るものが身近にあるのならば...

例え竜が相手であっても、虫けらのように踏み潰すとわたしは言っていた。


でも眼鏡のような透明なガラスや私の瞳に映る世界では駄目。


あくまで鏡があることが前提なのだとか。


ただ鏡の中か夢の世界でしか会えず、影響を及ばさない為に...

熊と偶然出会ってしまった時に、護身具の事も手鏡もすっかり頭から抜け落ちて。



結果的に、タリオンくんに助けられる事になってしまった。



冷静になった今、思い返してとても恥ずかしい気持ちになっている。



あの時、魔導具か手鏡さえ出せればそれで良かったのに。



そうすれば、あんな......



『──それで、()はどうしたいの?』

「わ、わたし?」


私が朝の事でもやもやしているところに、不意打ちのように囁かれた。



『いつか言ったわたしの言葉...覚えている?』

「うん...」


必ず貴女の事を探し出して捕まえるか殺そうとする者が現れると。



その時、わたしは私の力になる──



...もしかしてタリオンくんは、私を探し出そうとする者との戦いに巻き込まれたのかもしれない。



「...助けに、いきたい...」



熊に襲われて粗相をした私の事を笑いもせず。


そばかすのことでいじめたりもしない。


喋り方がおかしくても、嫌な顔ひとつもしなくて。


...一人の女の子として、ちゃんと敬ってくれる。



会って間もないラヴィネちゃんとステラちゃんの事を、大事に育てて。


とても優しくてとても強い、男の子。



これからどれだけ一緒に過ごせるかわからない。


けど、みんなが一緒なら...きっと今よりもずっと楽しくって明るい日が続く。



そんな予感がして、凄く...ワクワクして、ほんのちょっぴりドキドキして。




でも、もし...私の事で巻き込まれて、何かあったら。



「怖い、凄く...こ、怖いよ...けど──」



助けることができなければ、きっと私は後悔する。



私が此処に居る理由。



唯一の味方であるおばあちゃんにも、秘密にして。




おばあちゃんとココちゃん...そのご家族に、死んだおじいちゃんとワンダさんの幽霊の事を伝える事が出来ず。



半ば知らないふりをしてずっと、生きて来た。




わたしという存在を隠して。



でも



「わたしに全てを委ねなさい」


化粧台の鏡に向かって私は両手を広げて押し付ける。



鏡の中のわたしが同じように私に向かって両手を広げ──



「──立ち塞がる困難、外敵、仇敵...恋敵まで全部わたしが蹴散らしてあげる」




そして、今




「『{【写し鏡(mirror)】}──』」



()()()達はひとつになった。


(´ω`)此処まで読んで頂きありがとうございます!


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