第26話 終わりの始まり
絶望とは何だろう。
何を持って望みが絶たれると言うのか。
最後まで諦めなければ奇跡は起こるというのだろうか?
其処に命のやりとりがあって、敵の悪意に常に晒され。
策略と謀の張り巡らされた場所において、全ての行動の先をいかれて。
常に自分にとって最悪の一手を打たれても尚。
最後まで諦めずに、戦う事が出来るだろうか?
現実は決して甘くない。
将棋やゲームとは訳が違う命のやりとり。
負けは死に繋がり、今眼に映る全ては終わる。
...だが、世界は続いていく。
自分が死んだ後も、世界は続く。
何事も無く、今日は昨日へ明日は今日へ。
そして今も──
道化師のような悪魔と共に、礼服を身に纏う山羊のような獣人が召喚されてから...状況がさらに悪化した。
道化師の手に持った楽器の旋律が、迫る敵の動きをより強く、より早く。
獣人の男が振るう指揮棒が手駒をただ殺到するだけの群衆から、統制された軍隊へと変貌させる。
命令に拠らない反射的な行動が消え、パターン化した処理が効かなくなった。
指揮者を通じて、超越者の意思を手駒に映したのだろう。
──手駒独特の弱点が消えた。
仕事量が増え、裂けるリソースに無理が出始めた。
首領を含めたオーク達にその強化は致命的だ。
七人居たハイオークが、今やたった二人。
内一人はあの夜、見事な解体と料理の腕を見せてくれたハイオークだ。
首領同様オークでありながら何故か腹が出ていない。
俺たち四人は一纏めとなっている。
そうせざるを得ない状態だ。
キリル本人を直接叩きに行きたい。
既に何度か機会があって、実行に移した。
首領とハイオーク達のトマホークと投げナイフの支援があっても尚届かない。
一度目は直接殴りに行って{【福音】}の【聖域】に阻まれた。
新たな権能記述。エアですら知らない筈の記述。
二度目は{【暗黒譚】}の【応報】によって、山刀の傷をそっくりそのまま返され危うく死にかけ...
此処で大量に回復薬を使ってしまった。
三度目は純粋に鎌で防がれ、側に控えて居た無数の手駒に止むを得ず押し戻された。
魔術結晶は手駒の肉盾に阻まれ、有効打は未だ入らない。
記述は例外を除いて一度使えば、再度使用可能になるまで時間がかかる。
だからこそ、複数の権能記述を持つ者が有利になる。
呼べる手駒も豊富であればあるほど良い。
其れ等を実行する為のマナは、徐々にではあるが回復する。
だが、こいつは異常だ。
呼び出す手駒の数が異常だ。
途切れぬ軍勢と記述...それを可能にするモノは何だ?
「君は頑なに手の内を見せたがらないが、何か理由はあるのかね?」
あるに決まってんだろ何言ってやがる。
...憎まれ口を叩く余裕もないほど俺達は追い詰められていた。
「だがその理由も全て分かる。君が死んだ後...感情を持つ手駒と、銃を知る知識。戦闘技術も【鍛冶場】を含めた権能記述は全て私のものだ」
ゾンビの兵士達が隊列を組んで襲いかかってきた。
強化されたその一撃は、作られた鎧を断ち割る威力を秘めている。
今の首領達に集団戦は不味い。
──下がっていろ。
俺が一歩踏み出した瞬間。
「──【亡者の手】」
無数の腕が地中より出でて、俺を捉えてその場に縛り付ける。
「この時を待っていたよ」
キリルの顔がいびつに歪む...愉悦の笑み。
──バランスを崩した俺に一斉に掴みかかるゾンビ達。
その動きは今まで見た動きの中で最も早く、そして的確だった。
「なっっ?タリオン!!」
助けに走る首領を止めに入る悪魔達。
「さらばだ」
──【道連れ】
身体に取り付いたゾンビの身体が、一斉に輝きを放ち。
爆──────────
_:(´ཀ`」 ∠):




