第23話 苦戦
【連休明けの労働】
効果:無能は死ぬ
更新遅れてごめんなさい(;_´ω`)_
次の瞬間、キリルの影より漆黒の炎が円を描くように舞い上がり、首領達に襲いかかる。
「うおおおおおお!!!」
否。
大剣を盾のように掲げて走る首領だけを狙い。黒炎が滝のように真上から降り注いで包み込んだ。
瞬く間に姿が見えなくなり、悲鳴をあげるハイオーク達。
くそっ!フォローし切れなかった!!
一瞬遅れて盾を持った骸骨の頭上を掠め、ライフル銃を持った兵士達に魔術結晶が着弾する。
地球では見覚えのない形状。制服。
いかなる世界のいかなる文明であるかは定かでは無い。
(ゴオッ!!)
爆炎。
紅玉のように綺麗な宝石が、着弾と同時に壊れて吹き荒れる炎の嵐を巻き起こした。
その場に現れたキリルの手駒達が、銃の性能を見せる事無く炎に焼かれてのたうち回る。
「不意打ちとはいえ翼竜を倒す程の手駒だ。交換条件としては悪くない」
人の形をした者が炎に焼かれて蠢く様は、自分で巻き起こした事ながらあまりにも悲惨だ。
だが、銃を持った相手だからこそ。障害物のない平野部では、現れたと同時に排除せねば瞬く間にこちらの不利となる。
キリルは自分の手駒が焼かれたにも関わらず。
人ののたうちまわる様子を見て、うっとりと眺め、
「【再生】」唱えた。
生きた松明と化した彼の手駒が、突如ボロボロに崩れ落ちる。
炭のように黒い泥となって一つになって溶けて混ざり合って...一つの黒い卵となり。
「きゃああおおっっっっ!!!!」
その黒い卵を破り、奇声を発して一匹の魔物が飛び出した。
手足の長い醜悪な姿と異臭。
全身を覆う鱗としなやかで剣呑な尾。
強固で鋭い...毒液の滴る鉤爪。
「この手駒は私のお気に入りでね。君も気に入って貰えると良いのだが──」
息つく間もなく。進行方向に居た骸骨を数体巻き込み破壊しながら奇声をあげ、襲いかかって来た。
すれ違うように振り下ろした鉤爪を余裕を持って躱す。
毒液の落ちた地面が、じゅうじゅう音を立てて悪臭を放ち...抉れた。
あからさまにヤバい敵が現れ。慌てふためきながら、此方に向かおうとしているハイオーク達に指示を出す。
──大丈夫だ!飛び道具でキリルを狙い続けてくれ。接近戦はしなくていい。
「「「!ふごっふ!!」」」
支持を受けて落ち着きを取り戻した彼等が、飛び道具を持ってキリルに立ち向かう。
「ひゅああああ!!!」
一方で魔物の攻撃を避けながら考える。
しかしこれを相手に、接近戦で武器を交えるべきではないだろう。
体内体外を問わず、毒液が降り掛かっただけでダメージは免れない。
(ドギュッ!バスッ!)
瞬時に矢を放って、魔物の頭と胴体を撃ち抜く。
呼び出されたばかりの魔物が、衝撃で吹っ飛び地面に落ちた。
俊敏さは目を見張るものがあるが、それだけだ。
制動の甘さから、攻撃しながら動くたびにたたらを踏んで僅かにバランスを崩す。
その瞬間を狙った。
駆け引きも戦術も必要ない。だが...
「無駄だ」
一瞬動きを止めたものの、ダメージは無いのか。
魔物は何事も無かったかのように飛び起きて、再び動き出した。
頭と身体を貫く矢を物ともせず。
地面を駆ける度に、衝撃と毒液で地面が荒れていく。
音速域に近い速度で襲いかかる鉤爪を、毒液ごと余裕を持って躱して横に動く。
釣られてこの醜悪な魔物も横に動いてついて来る。
一方でハイオークが、飛び道具が届く距離で敵の総大将目掛けて投射し始めた。
「面倒な事をする...おい、アレの相手をしろ」
キリルが飛び道具を鎌で防ぎながら、骸骨の後ろへ後退していく。
既に最初に作られた壁から離れて戦場は動いている。
盾をこちらに構えていた骸骨が、一斉に動き出してハイオークに向かっていった。
「さて、私の銃を壊すだけの記述だけしか持っていない訳ではあるまい?君の手の内を見せて貰おう」
そうして手が空いた途端に、余裕綽々の笑顔で向き直る。
慢心か、それとも確信か。
自分の力量と経験が、敵を上回っている事を理解しているのだろう。
記述も道具も使う事なく。
大鎌を肩に余裕を持って戦場を見渡している。
向こうではハイオーク達が、飛び道具から普通の武器に持ち替え戦っていた。
...この野郎。
一発でも喰らいたくない攻撃をかわし続けながら考える。
この魔物が魔術結晶で死ねば良いが、炎で倒す場合にはあの毒が高熱に晒された場合。
環境と人体にどう影響を及ぼすかわからない。
光および風の魔術結晶を使うにはまだ早く。
今ある手持ちの攻撃手段では、キリル相手に直接打撃を与える事は難しい。
...エアは確かコイツを雷で始末したと言っていたが。
魔術結晶を手札として見せてしまった以上、対策を取られるのは間違いないだろう。
先程から俺の懐と手の動きに注視している。
使える手段は二つ。
ルンナさんに手渡された魔導具か、あるいは【鍛冶場】に属するもの以外の記述。
...此処で、このカードを切るしかないのか。
覚悟を決めたその時。
「ぬうう!」
いまだ燻るように燃え続けていた黒炎の中より、鎧を身に纏った巨体が飛び出した。
此処まで読んで頂きありがとうございナス!(´ω`)v




