第15話 大剣
Tips
【解除】 分類:記述
そのものを守るあるいは苦しめる原因となるものを取り上げて消す。
あるいは縛り付けられて居た存在を取り上げる。
物理的に縛り付けてあるのならば拘束の鍵を開け。
電子的なロックですらも容易く開く。
人を救う事も、犯罪に使う事も
どちらにでも使う事が出来る力である。
鍛冶屋の店主の見てる前で、倉庫の片隅を占拠していたものを片っ端から全て持っていく。
正確には鞄の中に入れてから支配空間にしまい込んでいる。
大きさ的に入れるのが無理目の奴は鞄の口に触れさせてから消すようにしまう。
なんでも全部一瞬は無理だが、一纏めにされてるものなら複数いっぺんに。
あるいは粉状のものなら、器に入れられた状態でならば丸ごと収納する事が出来る。
蜘蛛の巣が張ってる錆びた大斧に朽ちかけの鎧をしまうとその場からハエトリグモのような形をした手のひらサイズ程の蜘蛛が現れた。
住み慣れた場所を奪われ。呆気にとられたように周囲を見回し、慌てて物陰から物陰に移って逃げてしまった。
...ごめんよ。
「......古代魔導具の鞄持ちだったか」
「え?ええ、まあ」
そして、とても都合の良い設定を頂きました。
この世界には中になんでも入っちゃう鞄があるのか...まあ、そういうことにしてもらおう。
「わふ...」「ぴゃ」
だからお前達も今後はそういう事で...え?なんで「そらないわ」みたいな目で見てるの?
「おっと...そういやあの牢鉄大剣だったな。もう一度聞くが本当に良いのか?本来ならお前さんはその背にある合成弓と腰の幅広剣よりも短めの...例えば山刀みたいなものを使うんじゃないのか?」
「大丈夫です。それを必要としている仲間が居るので」
「そうか...」
俺が本来使う武器を見分ける店主の慧眼に感動する。
地球の物語やゲームの中にしか存在しない筈だった、相手の立ち姿で扱う武器を見抜くような...そんな凄い腕利きの職人が目の前に居るのだ。
しかもドワーフである。
なお店に置かれた訳あり品は。
それを買おうとした冒険者あるいは傭兵志願者の目の前で壊す事で、自分の命を預ける装備に手を抜く怖さを教える役割があるという事だ。
だがそれでも買う奴は居て、それが原因かどうかはさて置き大抵大怪我をするか死ぬ奴が年に一人か二人は現れるらしい。
俗に言う馬鹿センサーってのはこういう事か。
自己責任もあるだろうが、なんかこう...うーん。
「俺の店より安い店は幾らでもあるんだ。其処で買えばいいのにわざわざ俺の店で安く買いたがるから手に負えん」
...という事なので、断られてしまった。残念。
ただ、この倉庫に置かれてたものはほぼ完全にゴミで、いずれ処分しようとしていたものばかり。
処分する間もなく、次々と仕事が舞い込んだり従兄弟からその都度出来の良い素材を卸しているので再利用する事なく死蔵されていったのだとか。
金は受け取るどころかむしろ払いたいくらいだと言われて全てタダで貰う事になった。
しかし貰ってばかりは悪いので、倉庫に置かれていた大小さまざまなフライパンに寸胴鍋...ボウルに特大中華鍋から料理道具と包丁セット。
おまけに野外で使う風防がしっかりした組み立て式の五徳付きストーブ。
さらにはちょっと放置されすぎて錆びが浮き出た、鋸を筆頭とした数人分の大工道具まで。
以上を店主に負けて貰い金貨三枚で買い取った。
「お前さん、変わってるなぁ」
店主は俺から白金貨を含めた代金を全て受け取り。
店の方へ鼻歌混じりに戻って行った。
自覚はあるが指摘はやめてくれ...今ある資金全部使うつもりの申し出だったんだ。
それをタダにしてもらえるという多幸感にほんの少しの罪悪感が、倉庫で浮かび上がっていた欲に絡んで使ってしまった。
これでみんなの生活の質がって、ああもう...。
ともかく残り資金は金貨二枚と銀貨四枚に大銅貨一枚か。
なおアルナさんから着替えと生活品にと受け取ってた金貨二枚もあったが、これを使うのは何故か自分でも躊躇ってしまう。
...別にとっておこう。
こうして倉庫の片隅で眠っていた資源ごみを全て回収した。
床にあった箱を空間に入れて、最後に作業台に置かれた箱を回収しようとした時。
「待たせたな」
店主が自分の背丈を越えるとても大きな包みを持って現れた。
「自分で打っておいてなんだがコイツは俺の中でも一二を争う会心の出来だと信じている」
そう言って箱を退かして作業台の真ん中に包みを置く。
ゴトっと重厚で厚みのある音がした。
その一連の動作に一切の力みと無理がなく。
それだけ店主が持つ鍛冶屋としての、いや...戦士としての強さと身体能力は相当なものだ。
「ありがとうございます」
よし。
これで戦える。
問題は相手が全ての手札を出し切って居ない事と、エアが感じていた嫌な予感だ。
だが、今回手に入った資材に指輪とネックレス。
そして新たな記述にこの大剣がその不安材料に立ち向かう役目を持つだろう。
俺は礼を言って包みを受け取ろうとして、
「これは餞別だ」
目の前に差し出されたものに視界を奪われた。
それは一振りの剣...というには短く。
ナイフと呼ぶには長く、そして分厚い。
差し出されたソレを恐る恐る手に取り、木と革で出来た鞘を払う。
恐ろしく手に馴染む。
武器に対してあまり重さを感じる身では無いが、コイツは手にした瞬間から存在の重さを主張している。
おそらく、あの白金貨一枚の大剣と同じ素材だ。
地球のトラッカーとククリの合いの子と思わせる分厚さに、鋸歯を交えた幅広く湾曲した独特の刀身。
...山刀だ。
「え?あの...」
店主は更に目の前に置かれた包みを剥ぎ取る。
出て来た大剣は...二つ。
牢鉄と呼ばれるものを鍛えあげられた大剣。
そしてあの、一番高くてゴツくて強
qそうな大剣だった。
しかしこうして並べて見れば、牢鉄大剣も大きさと分厚さでは負けていない事がわかる。
...いやいやいや?
え?いや、だって...え?
俺の混乱が治らぬ内に、店主が箱の中から取り出したのは...あの正体不明の素材で出来た貨幣だ。
「さて、こいつを質に貰うぞ。いいか?あくまでそっちの方の大剣は貸すだけだからな」
──必ずこの貨幣を受け取りに来い。
そう言って、貨幣を懐に納めた。
「...いったい、どうして?」
「どうして?か......なんでだろうな?」
一度は断られた筈の、出すことすら叶わなかった願いだ。
おまけに選別として山刀まで貰ってる。
俺の問いに、店主は逆に問いで返してとぼけたように肩を竦めた。
「俺にはたった一人。友が居たんだ──」
店主は語った。
この街どころか国一番の幼馴染だった英雄の事を。
狂った抑止力の竜と相打ちになって死んだ男の事を。
「──あの時。もっと色んなものを渡してやれたら、あの男は死なずに済んだかもしれん」
店主は解かれた包みを戻して再び作業台に置いた。
「だからお前は必ず返って来い。それと、魔導具の鞄だなんて嘘をつく必要はないからな」
...バレてますやん。
(´ω`)此処まで読んで頂きありがとうございます!
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