第9話 ケセルナの街にようこそ
思わず熊を後ろに放りだして逃げようとした矢先。
「はいそこ殺人未遂」『メシャッ!』
「ェ“ボォッ!?」
突然女の子があげちゃいけない声を出して、地面に這い蹲るように崩れ落ちた。
「こ、ココちゃん...!?」
手に持ったショートソードを離さないのは、流石といったところか。
気が付けば、灰色のボサボサの髪に無精髭を生やした背の高い兵士が。ハルバート片手に少し離れた場所で耳をほじって立っている。
その人が、遅れてやって来た数人の兵士に合図を送ってその場に整列させる。
周囲に立つ兵士より一回りグレードの高い鎖帷子を着込み、家紋のようなものが付いた立派なサーコートを羽織っている。
腰に差しているのは、少女のソレとは違って普通のロングソードだが。
...ハルバードから、目を反らせない。
「ったく、余計な仕事を増やすなって言ったろう...」
犬耳少女の後ろから現れたその人が、やったのか。
ラヴィネは俺の陰に隠れて、警戒している。
「いやー、ほんとこの馬鹿がすまんな」
「い、いえ...」
俺の近くにやって来たその人は、俺の持って来た熊をしばし眺め、ルンナという名前で呼ばれてた少女と俺を見て頷いた。
「それにどうやらルンナ嬢を助けてくれたようで」
「は、はぁ...」
その言葉に、ルンナさんが吃りながらも事情を説明する。
「は、はい...あ、ああの...いつもの場所に、薬草が無かったからそ、そのっ、ちょっと深くにいったら、くっ、熊が──」
「あー...それでかあ」
ボサボサの髪をがりがりかいて、納得したように口元を歪めてうんうんと頷いた。
周りの兵士も釣られて笑ったり、納得したような、ホッとした顔で頷いた。
「こ、この度は...ご迷惑を、お、おかけしました」
「いやいや、いくらなんでもこんなでっかい熊が出るたあ誰も思わんでしょ」
灰色の髪を揺らしながら笑い、担いだハルバードで肩を叩く。
「んじゃあ仕事で港に行くやつから文句言われるかもしれんけど。一週間ほど朝の通用門は閉鎖して...今から林道を中心に一刻(二時間)ほど廻ってくれ。明日からの人員配置は昼頃に決めるんで...今はこの人数で行ってくれ」
「「「「「はっ!」」」」」
後ろで待機していた兵隊さんがビシッと整列して応える。
「おっと、誰か一人ギルドにも連絡頼む。そのあとは先に向かってるやつと合流な。俺ぁ門にいる連中に注意喚起と...後で辺境伯に連絡しとく」
「わかりました」
男がその場に集まった兵士に指示を出し。
一人が街の中を駆け足で行くと、残りの数名の兵士が3メートルほどある頑丈そうな槍を担いで林道へ向かった。
あの人数と装備なら、熊にも遅れをとらないだろう。
「お、父ちゃ、ん......ハッ!?」
急に少女ががばりと起き上がった。
どうやら意識を失ってる間(?)に故人に出会ってたようだ。
...え、ちょっと怖い。
「おら、お前はこっちや」
「な...」そして復活した犬耳な女兵士の肩を叩き。
そのまま首根っこを掴んでズリズリと引っ張っていく。
道行く人が「ああ、またか」みたいな生暖かい目で見守ってるあたり。どうやら日常茶飯事のようだ。
「そいじゃあ、もうちょい詳しい話を其処の詰所で聞かせてくれ」
──それと
「ケセルナの街へようこそ。歓迎するよ...首輪付き」
...めっさバレてる。
(´ω`)此処まで読んで頂きありがとうございます!
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