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獣人親子とやる気のない兵士2

戦争が終わった後、コン太はより一層積極的に薬学、医学を学ぶようになった。その勢いはレフィリアを守りたいと願い、自らの理想の剣を求めて打ち続けるヴィータと同じ。


母親を救いたい。苦しむ母親を少しでも早く救いたい。その気持ちは誰にも負けていない。


医学を学ぶようになり、戦争で自分の力不足を実感したコン太は、ルナから必死に学び、ルナがやっていた診察を自分でするようになった。足りないこと、わからないことがあればルナに何度も何度も聞いていく。


その変化があったことでしばらくルーシュに会いに行くことが無くなった。そのことを心配になったのか、コン太の母親からそれを聞いたのか、暇を見つけてヴィータの家にルーシュがやってくるようになった。


「おぅヴィータ。頼んでたやつ出来たか?」


「ルーシュが作ってほしいって言ってた剣は打ってみたけど……自信ないよ?」


適当に生きて、適当に過ごして終わりにするつもりだった人生。コン太とコン太の母親と出会ったことでそれが変わった。


将軍に呼び出され、策を考え砦から離れていた後、コン太が必死になって兵士たちを治そうと努力していた姿を見ていた。その姿を見てまた心境が変わった。


オランドに将の会議に参加しろと言われても適当なことを言って聞かなかった。その後にこっそりと会議を盗み聞きしていたのだが、コン太の姿を見て将の会議にメンドクセェと言いつつも参加するようになった。


そして適当に使っていただけの自分に合わない武器。それを自分に合った武器に変えようとヴィータに頼るようになった。コン太の様子を見に行くついでに。


ヴィータに口で説明しても伝わらないだろうと、詳細を書いた紙を渡していたのだ。


「構わねぇさ。たった一回で完璧に出来るとは思っちゃいねぇ。何度か試して気に入らねぇ部分をまた言いに来るさ。そうやってりゃあその内出来らぁ」


「わかった。俺に出来る限りのことはするよ」


「おぅよ。それでいいんだ。まぁた来るぜぇ」


ルーシュは剣を受け取り、ティアに金を渡す。そのついでにコン太の様子を窺う。コン太は必死にルナから薬学、医学を学んでいた。ポーションを作れば自分の本に書き込み、医学を学べば忘れないように別の本にまとめ続ける。


「俺には一生出来ねぇなぁ」


「ルーシュさん。いつもコン太のことを見に来てくれてありがとうございます」


「おっとぉ。俺はなーんにもしてませんよ」


「そんなことありませんよ。ルーシュさんがいてくれたからこそ、今の私達がいるんですから」


「…………」


「これからもコン太のことを弟のように可愛がってあげてください。コン太もそれを望んでいますから」


「参ったなぁ……俺に出来ることは少ないですよぉ?」


「少なくても構わないんですよ。お願いします」


「……俺の負けです。あんた達親子には敵わねぇなぁ……」


スラム街で生き続けてきたルーシュにとって、悪意を向け続けられることは慣れていた。だが、コン太とコン太の母親から向けられるのは純粋な善意。それはいつまで経っても慣れることはなかった。でも心地良いと感じることの出来るそれは決して嫌ではなかった。


そんな親子にも転機が訪れた。コン太が母親の病気をついに治すことが出来たのだ。エリクサーを作り、母親を救ったコン太は真っ先にルーシュの元へ報告へ行った。その頃のルーシュはもう一兵士ではなく、将として活動するようになっていた。兵舎の一室にコン太は訪れていた。


「おうコン太。ずいぶん嬉しそうじゃねぇか」


「うん! 僕、やっと……やっとお母さんの病気を治せたんだ! やっと救えたんだ!」


「おぉ! スゲェじゃねぇか! やったな!」


ルーシュはコン太のその報告を自分のことのように喜んだ。ルーシュの中ではもうコン太のことを弟として見ている証拠だ。身長は伸びたが、ルーシュより小さいコン太の頭をいつものようにニカッと笑い、クシャクシャになるまで撫でる。


コン太もそれを素直に受け入れている。コン太もルーシュのことを頼れる兄として見ているのだ。自分に出来ないことをやっている尊敬する兄として。


コン太はルーシュが怪我していることに気付いた。兵士をやっていればいつでもする様な小さな怪我。でもコン太はいつものように、いや、昔と違い薬学、医学を学んだことでより正確に怪我を治していく。


「ずいぶん治りがはえぇなぁ。コン太やるじゃんか」


「そんなことないよ。僕はルーシュさんの方が凄いと思う」


「俺の方が凄い? 俺ぁ何もしてねぇさ」


「してるよ。いつも守ってくれてる。色んなことを知ってる。僕には出来ないことだよ」


「なぁに言ってんだ。俺からしてみりゃあ、コン太、お前の方がスゲェよ。俺には出来ないことをコン太はやってんだからなぁ。俺には回復魔法は使えねぇ、ポーションも作れねぇ、でもお前にはそれが出来る」


「……そうだね」


「コン太に出来ねぇことを俺は出来る。俺が出来ねぇことをコン太は出来る。ならお互いに出来ないことをフォローして協力すりゃあいい。そうだろ?」


「……うん、その通りだと思う! やっぱりルーシュさんは凄いよ!」


「コン太。そろそろさん付けはやめようぜぇ。俺とお前の仲じゃねぇか」


「いいの?」


「もちろんさ!」


「じゃ、じゃあ……ルーシュ」


「おぅよ!」


ルーシュはコン太と肩を組み、頭をもう一度クシャクシャと撫でまわす。


「今日は報告に来ただけじゃないんだ」


「ほぉ?」


「僕、前の戦争で自分に足りないものがあるってよくわかったんだ。たくさん勉強して、知識はある。でもそれを活かすことが出来るだけの経験がなかったんだ。だからその経験を積みたいんだ」


「なぁるほど。怪我人を診せて欲しいってことかぁ?」


「うん。兵士さん達はいつも厳しい鍛錬をしてるって店主さんから聞いたんだ。毎日怪我人が出るくらいだって」


「母ちゃん治して十分じゃねぇのか?」


「ううん。これからもきっとお母さんだけじゃない。ルーシュも店主さんもティア姉さんも怪我したり病気になったりすると思うんだ。その時にいつでも助けてあげられるようになっておきたいんだ」


「……コン太の気持ちはよぉくわかった。それだけの気持ちがあるなら俺も一肌脱いでやらぁ。幸いなことに医者ってぇのはいつも不足してる。喜んで受け入れてくれるだろうよ」


「ありがとう! ルーシュ!」


「おぅよ!」


こうしてコン太は薬学、医学をルナから学び、そして時々母親と一緒に兵舎にやってきて兵士の怪我を治し経験を積むようになる。すべては自分を助けて導いてくれたみんなのために。

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