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獣人親子とやる気のない兵士1

コン太がまだスラム街に住んでいた頃。

コン太はスラム街がどれだけ危険な場所なのか理解していなかった。


ルーシュに見守られて過ごしていた。それに気付くことも無く、ただ必死に母親を救おうと日々を送っていた。だがヴィータと一緒にルーシュが守ってくれたあの出来事で初めてスラム街が危険な場所なんだと自覚した。


コン太とコン太の母親とルーシュの関係はその後もずっと続いている。


コン太は時折、自分を守ってくれたルーシュやスラム街の警備をしている兵士たちに会いに行く。感謝の気持ちを伝えるために。そしてルーシュや兵士達が怪我をしていれば回復魔法を使っていた。ルーシュ達にとって大したことのない傷でも怪我は怪我だからと言って。


コン太の母親もスラム街から出ていき、ヴィータの家で過ごすようになってもルーシュ達に挨拶に行った。コン太を見守り続け、そして守ってくれたことのお礼を何度も何度も言いに行った。差し入れのサンドイッチなどを持っていく。


ルーシュはその2人に感謝され続け、恥ずかしそうにしていた。初めて兵士をやっていて良かったと思えるようになっていた。生きるためだけに続けていた兵士。その中に新たな思いが生まれ始める。こんな風に感謝されるのは悪くないと。また何かあったら助けてやろうと。


ルーシュは時折やってくるコン太の話を聞いて、ポーションの効果が少しずつ上がっていると聞けば、よかったじゃねーかとニカッと笑い、髪がクシャクシャになるようなぶっきらぼうな撫で方で頭を撫でた。


コン太もそれを嫌がらず受け入れていた。その2人の様子は兄弟のように見える。兄は様々な情報を得て、必要であれば守るために力を振るい、弟は自らの力と日々身につけようと努力している薬学を使い傷を癒す。そんな関係。


そんなコン太に少しずつ変化があった。母親のためにポーションを作り続けていた。でもそれが本当に効いてくれているのか疑問に思うようになったのだ。怪我は回復魔法やポーションを使えば治っていく様子を目視出来た。けど病気は? と


きっかけは時々ルナが母親を診察していることに気付いた時だ。母親の病気のことを知らないのに、どうして病気を治せるのだろうか。それに気付いたコン太はルナに医学も教えてほしいと頼み込む。ルナは優しく微笑んでいいわよと言った。それと同時に更に険しい道になるわとも。


コン太は迷わなかった。母親を救うためなら、必要な事なら学ぶと。その決意が変わることはなかった。そこにはコン太と同じように、いや、もしかしたらそれ以上に険しい道を歩き続けているヴィータの姿があった。そのヴィータを、コン太を支えているティアがいた。


コン太1人だったら進もうと思わなかったかもしれない道。ヴィータがティアがいたからこそ歩こうと思えた道。薬学と医学を学び続けたコン太は連合との戦争で成果を出した。ルナが教えたものの中に将軍を治すことの出来る知識があった。コン太はその知識を使い、将軍を、毒に侵されてしまった兵士たちを救った。


「コン太くん、君のおかげで多くの命が救われた。ありがとう」


「い、いえ……僕は何も……」


「そんなことはない。誇っていい」


コン太は地獄を見ていた。そこには毒に侵されていた兵士だけではないのだ。攻撃を受け、怪我をしてしまった兵士が、腕を無くした兵士が、足を無くした兵士がいた。


毒を治すために必死にポーションを作っていた時には気にならなかったこと。一段落して周りを見渡せば、その砦には毒以外で苦しんでいる兵士たちが腐るほどいた。


「僕にも手伝わせてください」


「……いいのかい?」


「苦しんでいる人を見て放ってなんておけません」


「……ありがとう」


「コン太くん!」


「ティア姉さんどうしたの?」


「一度、王都へ装備を持ちに帰りますよ!」


「えっと……僕はここに残ります!」


「……ふむ……」


「僕に出来ることをやりたいんです。お願いします!」


「わかりました! 兵士さん、コン太くんを絶対守ってくださいよ! 大事な大事な子なんですからね!」


「約束しよう」


「ではコン太くん。思う存分やってあげてください!」


「はい!」


ティアの許可を得たコン太は自分の知りうる限りの方法で兵士たちを助けようと足掻き始めた。そこでまたコン太は気付いてしまった。知識だけでは足りないと。知識はある。方法も知っている。けれど経験がなかった。


失敗して苦しむ兵士を更に苦しめてしまった。上手くいかなくて何度も何度もやり直した。周りの医者も怪我した兵士たちも大丈夫、ゆっくりやればいいと怒ることなく優しくそう言っていた。でもコン太は悔しかった。


もし少しでも治療が遅れたら間に合わない兵士がいたらきっと助けられない。

もし今治そうとしている人が母親だったら僕は助けられるのだろうかと。


コン太には周りの医者が経験で培って手に入れた知識がなかった。知恵がなかった。


戦争は終わり、コン太はたくさんの兵士たちを救った。感謝された。

でもコン太は満足していなかった。

登場人物について


ルーシュ

コン太がスラム街に住んでいるのは最初から決まっていたことですが、ヴィータとティアがそれに気付くきっかけが自分の中で思い浮かびませんでした。そこでヴィータ達に気付いてもらえるように、ヴィータと知り合いかつコン太を見守っているキャラクターを登場させることになりました。それがルーシュです。

それ以降、出番は無かったのですが、連合との戦争で兵糧攻めの策を名無しの兵士に提案させるのではなく、どうせならルーシュにやってもらおうと思い、そこから本編の流れになっていきました。

ヴィータ達とコン太とコン太の母親を引き合わせるためだけに生まれたキャラクターだったルーシュは、自分が生み出したキャラクターたちの中で一番出世したキャラクターになりました。


バラン

レフィリアに舌を噛みますと言わせたかっただけで生まれたキャラクター、それがバランです。連合との戦争でティアとコン太が将軍と会うきっかけになってもらうことになりましたが、そのせいでまたレフィリアに嫌われてしまうという連鎖に繋がってしまいました。それを書いていくうちにルーシュとの掛け合いが生まれたので、今では大事なキャラクターの一人となりました。でも不遇なのは変わらない。ごめんねバラン。

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