8話 みぃーつけたっ!
お、お久しぶりです(-_-;)
──ずっと、暗い中をさ迷っていた。
かつての力も今はなく、自分はゆっくりとこのまま全てを失い消滅するのだと思っていた。
“彼女”はもう居ない。
だから、存在への未練はなかった。
『◆◁◆◁、◆◁◆◁、……』
暗い底、何も聞こえない筈なのに音が聞こえる。
暗い底が揺れて、意味を成さなかった音が鮮明になっていく。
『●◆◆◌、◆●ぇてっ!……私に姿を見せてレイレイっ!!』
ピクリと、体がその音に反応した。
知っている。
“レイレイ”
僕の名前だ。
“彼女”がくれた僕の名前だ。
もしかしたら、“彼女”かもしれない。
あり得ないと分かっていても、期待は抑えきれずにレイレイは音の場所へと姿を見せた。
あぁ、“彼女”は僕の事を分かってくれるだろうか?
力の多くを失ってしまって、本来の姿を顕現させる事が出来ない。
でも“彼女”ならきっと僕の事が分かる筈だ。
しかし、暗い底から抜け出して目に入った音の正体は“彼女”ではなかった。
がっかりした。
“彼女”とは、似ても似つかない紛い物。
すぐに興味は失せて、また暗い底に戻ろうと思った。
「っ!!? あぁっ! やっぱり此処はっ、私はっ!」
目の前の紛い物は、レイレイの姿に喜びの声を上げた。
まるで大切なものを見つけたかのように。
「私は、亡国の姫。悪い魔女から王子を救う、救国のお姫様⎯⎯⎯⎯」
目の前の紛い物が何を言ってるのか理解できない。
けれど、そんな目をする少女に少しの間付き合ってみる事をこの時決めたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
レイレイはすぐにその選択を後悔し出した。
紛い物は所詮紛い物。
何もかもが“彼女”に及ばない。
レイレイの名を知っていたのは謎だが、紛い物は何処にでもいるような普通の少女だったのだ。
少女はレイレイの力を使って男爵に取り入ったが、初めて会った時のような目をレイレイに向ける事はない。
まるで、レイレイをただの道具だとでも思っているようだ。
やっぱり、特別なのは“彼女”だけだ。
“彼女”は僕に沢山話しかけてくれた。
「ついに、明日会えるのね。楽しみだな、私の王子様達──」
寝台に明日着ていく予定らしいドレスをおいて、頬を染めてニコニコと微笑む少女。
その姿は当初からは大分様変わりしている。
“彼女”を意識したのか髪色を変え、肉付きがよくなり小綺麗な格好をするようになった。
レイレイにとって、その事もまた不満に思う事であった。
“彼女”の銀髪はもっと美しかった。
雪のように、キラキラしていた。
こんな汚い色では決してない。
レイレイは明日のパーティーとやらが終わったら、少女を放って暗い底に戻る事を決めた。
──みつけた。
見つけた! 見つけたっ!!
“彼女”だっ!! “彼女”がいるっ!!!
レイレイにはすぐに分かった。
“彼女”は相変わらず美しかった。
紛い物とは大違いだ。
あぁ、でもまた邪魔者が傍にいる。
“彼女”には、この僕がいるのに。
すぐにでも会いたい、傍ににいたい。
あぁ……でも、駄目だ。
今の僕では“彼女”に会いにいけない。
レイレイは殆どの力を失って弱くなってしまった。
特別で美しい“彼女”には、こんな僕では相応しくない。
もっと力を蓄えなければ。
「羨ましい……ずるい、ひどい……こんなのってないよ……」
気が付くと紛い物の少女が、涙をポロポロと溢していた。
その姿は酷く憐れだが、別に何も思わない。
本物の“彼女”がいるのだから、もうこの少女に付き合う理由はない。
あぁ、でもそうだ。
もう少し、使えるかもしない。
「何が酷いだっ! この私を騙しおってっ!!」
涙を溢す少女に、腕を引っ張っていた男が手を振り下ろそうとした。
確か、男爵と呼ばれていた男だ。
レイレイは男に力を使った。
力の多くを失ってはいても、この程度の男を始末する力はまだ残っていた。
「ぐ、あっ!!?」
レイレイの力で男の腕は凍り付き、その顔を恐怖で彩らせた。
男の体がぐらりと横に倒れる。
「……レイレイ、助けて、くれたの?」
少女は視線をさ迷わせて、レイレイの姿を探した。
すがるような眼差しで。
『──可哀想、君はとても可哀想だね?』
悔しいなら、羨ましいなら奪えばいい。
レイレイは紛い物の少女にそう囁いた。




