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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
3章 断罪は強制シナリオ
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1話 リルリルは大精霊


「リルリル、後どれくらいで力が戻りそうですか?」


白雪は自身に与えられた寮の部屋で、自らの精霊を顕現させた。


リルリルは省エネ状態である小狼の姿をしているが、本来は神狼(フェンリル)とも言うべき存在だ。

白雪がまだ未熟ゆえ十全に力は使えないが、その一端だけでも凄まじい力を秘めている。

けれどそれは、氷の国が滅びを迎える前の話。

100年前、氷の国が滅んだ原因は魔物にある。

大量の魔物により、氷の国の大地は、人や精霊の住めない穢れた地になってしまった。

魔物を率いて国を襲ってきた王は、白雪の母たる女王がその命と引き換えに倒したが、土地は駄目になってしまった。

白雪達は土地の浄化が終わり、再び暮らせるようになったからこそ目覚めの時が訪れたのだ。

けれど何もせずに、自然と土地が甦ったわけではない。

リルリルを始め、氷の大精霊の力があったからこそ、たった100年で命が芽吹く土地に戻ったのだ。

故に目覚めた頃のリルリルは、消耗が激しかった。

白雪が目覚めて暫く経った今も、力の供給があるとはいえまだ完全復活とはいかなかった。


「……あの無礼な娘が心配か?」


リルリルは人の言葉を使って、白雪に問うた。

人の言葉を解すのは、大精霊の証。

人前では話せない分、部屋ではリルリルが白雪の相談を聞いている。


「……わんちゃん扱いされたこと、まだ根に持っているんですか?」


もう、諦めてもいい気がします。

省エネ状態では、確かにわんちゃんに見えないこともないですし……


「当たり前だ。我は誇り高き神狼ぞ? 何故、犬如きと同列にされねばならない」


リルリルはふんと、鼻を鳴らして言った。

神狼としてのプライドが、飼い犬と同じにされる事を許さないのだ。


「どっちも可愛いですよ?」


しかし1年以上続くやり取りに、白雪はもう諦めていた。

もうどっちでもいいや! と、なったのだ。


「ぐぬぅ……すっかりあの小娘に絆されよって……少しは王族としての自覚を持つがよい!」


「持ってますよー」


リルリルは失礼ですねぇ。


「……それは置いとくとして、リルリル完全復活まではどのくらいかかりますか?」


「我としては、置いておける問題ではないのだが……そうだな、後二月もあれば良かろう。それだけ力が戻れば、今の白雪なら何とかなるだろう」


「……まだ二月も、ですか……」


白雪はため息をついた。


後2ヶ月は、瑠璃は苦しむことになるのだ。

瑠璃は日に日に痩せ細り、顔色が悪くなっていっている。

もう、限界も近いだろう。

それまで持つかどうか……


「馬鹿者、これでも早い方だ。何せ100年間で削られた力を、たったの2年で元に戻すのだ。これ以上早めるのは無理だ」


回復には、白雪からの力の供給が必要だ。

白雪はそれを早めるために、限界まで力を与えているのだ。

本来、リルリルの復活は学園を卒業後の話であった。


「ですが、もう少しくらいなら……」


私なら、まだやれます。

それで1週間、1日でも早く……


「白雪、我は今王族としての自覚を持てと言ったばかりだぞ。供給も過ぎれば、お前の身には毒となる。只でさえ、限界まで切り崩しているのだ。これ以上は、絶対に許可できない。お前の友を思う気持ちも分からんではない……だが、お前が背負っているものは、とてつもなく重いのだ。どちらも取ることは出来ない」


「……はい」


白雪はしょんぼりと肩を落とした。


「……それに、あの小娘も王族だ。何かあったら、水の大精霊が守るだろう」


「そう、ですね……」


確かに普通の人相手なら、何とかなるでしょう。

けれど、相手は王族です。

もし、手を出されたら……


白雪は心の中で、彼等の王族としての誇りを信じる他なかった。





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