10話 氷の姫君
今日、全体的に修正しました。
話の流れは特に変わっていません。
……誤字脱字が酷かった(ToT)
まだまだありそうですが、思った以上にあってビックリです。
今回は、双季君視点です。
俺は白雪に自分の正体を明かしてから、授業やテストで手を抜くのを止めた。
そうすることで昔のように、王妃に睨まれることになるかもしれないが、それでも構わなかった。
「何のつもりだ? 今までのように、薄汚く隅で息を潜めて生活してればいいものを! ひかるは俺のものだ。貴様のような薄汚い妾の子を、美しく清らかなひかるが選ぶわけないだろう?」
だが、これは双季にとって少し予想外だった。
双季が目立つ行動をとれば、この白雪曰く性悪な弟が文句を言ってくるのは想定内だ。
一輝は口では双季を蔑んでいるが、能力で双季に勝てないことに対し、並々ならぬ劣等感を抱いている。
俺が力を世間に示すことは、一輝自らの立場を揺るがすことにもなる。
だから、それについて不満を言われるのは分かっていたことだった。
けれど――
「俺はその女の事なんて、心底どうでもいい。寧ろ、付きまとわれて迷惑しているくらいだ」
双季にとって予想外だったのは、それが七星 ひかると関係していると思われたからだ。
本来、冷静な目で見ることが出きれば、それが間違いであると分かるだろう。
けれど、恋に曇った彼等の目には、双季が七星 ひかるの気を引くために姿をさらしたと見えるようで、現在進行形で取り巻き共に囲まれる形になった。
「何を言ってるのですか? 貴方がひかるに好意を持っていることは、分かっているんです! 妾の子が! 実に卑しい考えでね!」
……相変わらず、話が通じないなこいつ等は。
鬱陶しい。
俺と関係のないところで恋愛でも、何でもすればいいものを。
そもそもこいつ等は自身の立場を、悪くしていることに気付いているのか?
一輝達が独裁政権を奮えるのは、ここが外部と閉ざされた学園内だからだ。
外では違う。
既に各王家に、話は伝わっているのだろう。
水城 瑠璃に対する、態度も報告されているはずだ。
氷の国が滅びて以降、水の精霊の力も弱まってしまった。
けれど、それは蔑ろにしていいと言う意味ではない。
一輝はそれを思い違いをしている。
水の国との婚約は、光の国の王が申し込んだものだ。
世界は、慢性的な水不足に陥っている。
どの国でも水は、貴重なものだ。
だからこそ、光の国の王である父上は、水の国の王族との婚約を結んだんだ。
それをこの愚弟は散々に愚弄し、ましてやこのアバズレと婚約を結ぼうとしている。
王家に対してメリットもないような、平民の女と。
ここにいる王族の誰とも、このアバズレが結ばれる事は絶対にない。
そもそもこのアバズレの優れたところなど、男に媚びへつらう事くらいだからな。
それすらも一部の特殊な趣味を持つ男にしか、通用しないようだが。
「皆止めて! 双季君は、ひかるの為に頑張ってくれたんだよぉ!! むしろ、応援してあげなきゃ! ね! 双季君?」
そんなアバズレが何をとち狂っているのか、意味不明なことを言いながら、心配そうな様子を装いながらもニヤニヤと笑っている。
気持ち悪……、化粧も濃いし、臭う。
お前何かよりも、白雪の方が比べるまでもなく可愛い。
俺が努力しているのは、全て白雪の為だ。
断じて、お前なんかの為ではない。
たが、否定したところでこいつらには、話が通じる事はないだろう。
なら、関わるだけ時間の無駄だ。
「……チッ」
双季は蔑んだ目で、舌打ちするとさっさとこの場を去った。
「待ってぇ! 双季君!!」
背後でアバズレの声が聞こえるが、歩みを止めることはない。
取り巻き共も何やら騒いでいるが、そろそろ現実をみないと奴等の王位も危なくなるだろう。
直系王族の血は尊いが故に、処刑や放逐などはないだろうが、監禁して種馬として婿に出されるくらいならされかねない。
一輝も今はまだ王妃が庇えているが、それもそろそろ限界だろう。
そうなった場合は、俺か6つ下の弟に王位を奪われる事になる。
「まぁ……俺はお前の事なんてどうでもいいけどな」
堕ちるなら、勝手に1人で堕ちていけばいい。
俺は自分の望みの為に、力を尽くすだけだ。
双季は周囲からあのうるさい雑音が聞こえなくなったことで、安心していた、
この後、双季を追いかけた七星 ひかるが、彼の最愛である白雪にぶつかり言い掛かりをつけるなど、想像することはとてもじゃないが不可能だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
――それに気づいたのは、偶然だった。
何やら聞き覚えのあるデカイ不愉快な声がまた聞こえたので、双季は眉をしかめて出くわさないようにその場から離れようと思っていた。
どうせまた顔のいい生徒にでも、言い寄っているだけなのだろうから。
双季が読んでいた本を閉じ、立ち上がったその時だった。
「っ!? ………何だ? ……この力は? 王族?」
強い強い力を感じた。
それも声のした方向からだ。
まさか……一輝達が、力を使ってるのか?
だが、あいつらの力はもっと……
双季は声のする方へと、急いだ。
話の通じない奴等の事だ。
もしかしたら、一般生徒に力を奮うかもしれない。
それだけは止めなければ。
距離が近づくにつれ、辺りの気温が下がっていった。
足が地につく度になる、サクッという霜の音は世界から失われて久しいものだ。
これは……まさか、氷!?
氷の大精霊がこの先にいるのか!!
氷の国は100年前に、滅びた筈だ。
傍系が生き残っていたとしても、ここまでの力を持つことはあり得ない。
これだけの力を持つのは、王族以外にあり得ない。
王族の契約する精霊は、特殊だ。
稀に大精霊と契約出来なかった王族の者もいるが、そういった者は王族として認められる事はない。
生き残っていたなんて……!!
これが明るみになれば、大問題だ。
世界は今、確実に滅びへと向かっている。
それを覆せる存在が、現れたのかも知れないのだ。
「っ、何故だ?」
双季は焦っていた。
隠された王族の存在を知って、何故か愛しい人の顔が浮かんだから。
自分と同じように、髪と目を彼女は隠していたから。
自分の育てた氷晶華を、懐かしそうに彼女は見詰めていたから。
「白雪!」
愛しい人の名前が呼ばれた。
力の発生源には、3人の男女がいた。
1人は、アバズレである七星 ひかる。
2人目は、水色の髪をした整った容姿の少年。
この少年に、双季は見覚えがあった。
前に、いつも白雪と一緒にいる少年だ。
そして3人目は――
「…………白雪?」
樋室 白雪、その人であった。
白雪を中心に、周囲の温度はどんどん下がっており、その力が七星 ひかるに向かっているのが見て取れる。
あぁ……やはり、そうなのか。
白雪は以前実技の成績が悪いと言っていたが、それは力を抑えているが故だろう。
何せ本当の彼女の力は、こんなにも強い。
一輝や、取り巻きをしている各国の後継者達よりもずっと。
近くにいる白雪が以前幼馴染みだと言っていた少年が、焦っているのが見てとれた。
今の状態は、白雪が暴走しているのだろう。
きっと、白雪にとってもここで力を使うのは、本意ではなかったのだろう。
なら、俺は――
「何をしている!」
双季は自身の精霊の力を使い、白雪の溢れた力に沿わせるようにして暴走を抑える。
光の精霊は、他の属性との親和性が高い。
だからこそ、7カ国のまとめ役を担っているのだ。
そしてそれは上手くいき、周囲にバラ撒かれていた白雪の力はかき消えた。
その後、不快なアバズレの相手をしながらも白雪達を逃がし、双季もさっさと退散した。
「さっきのあいつ……白雪の手を握りやがって……」
双季は悪態をつきながらも、先程の事を思い出していた。
まさか、白雪が氷の国の姫だとは思っていなかった。
確かにそんな事を、俺にホイホイ言えるわけがない。
けれど――
「……やっぱり、俺は君が好きだよ白雪。君が氷の国の姫君だって、それは変わらない。……だから、俺は君の隣に見合う男になるよ」
事が公になれば、どの国もこぞって白雪を欲しがるだろう。
どの国も喉から手が出る程、その力と血は魅力的だから。
そこに双季が入り込める余地は、限りなく低い。
けれど、諦める気も毛頭なかった。
「邪魔するやつは、片っ端からひねり潰してやるよ」
それは、双季にとって揺るがない、強い決意だった。




