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迷宮の輪舞(ロンド)  作者: いかすみ
迷宮探索1
27/27

27 救世の賢者

救世の賢者



隆之が目覚めたことで、別の動きもあった。


体格の良い男が入ってきて説明する。


それは、盗まれた荷物とは別のものだ。


盗賊の持ち物だった荷馬車と馬だった。


男は、『貸し馬を営むもの』と自己紹介をする。


盗賊の乗馬に使っていた馬はあの馬車馬の配下だ。


主人である盗賊を殺したことで、馬たちの主人は隆之になったらしい。


そうなれば、他の者には扱えない。


特に、馬車馬に使われていた馬がリーダーだ。


そして、広場を占拠しているので『何とかして欲しい』という話でもあった。




話を聞いた隆之は連れられて広場に顔を出す。


馬達はリーダー格の馬車馬を囲むように群れていた。


あの場で、馬達が逃げなかった。


それは、案外リーダーから離れるのを嫌ったのか?


そう思わせるような行動だ。




隆之はゆっくりと馬車馬に近付く。


囲んでいた馬は隆之に対して道を開ける。


隆之が寝ている間に、馬の傷が増えていた。


その傷に目を当てる。


町長が、済まなそうに声を掛けた。


「すみません、タカユキ様を降ろす時に暴れたので宥めさせる意味で鞭を入れ

 たので」


主人格のタカユキを奪われることに抵抗した気配だ。




隆之はその馬に近付いて声を掛ける。


「ありがとう」


馬は首を上げていななく。


まるで、隆之の言葉が判っているような雰囲気だ。


隆之は、馬についている傷を痛々しく見つめる。


そして、労わるように手を当てた。


隆之の見ている前で馬についている鞭傷が見る見る癒されていく。


心なしか、毛皮の艶も良くなった印象だ。


隆之は、馬についている傷を次々と治していく。


出あった時についていた残った傷まで綺麗に消えた。




そんな、隆之の行動に対して、馬は前足を揃えて頭を降ろす。


まるで、お辞儀をするような姿勢だ。


「すごい、黒主を跪かせた」


案内した男が呟く。


周りを見ると、囲んでいた馬達が一斉に同様な姿勢をとっていた。


隆之は、黒い馬の首を持って持ち上げるように行動をする。


馬は、促がされたように身体を起こした。


「気持ちは嬉しいけど、配下はいらない。お前は俺の仲間だ。これからもよろ

 しくな」


そう声を掛けて、馬の首を抱いた。


あのままでは、なんとなく馬のボスにされそうな雰囲気だ。


そのため、仲間であることで納得してもらった。


馬は凄く嬉しそうな表情をして、いなないた。




隆之は飾りが邪魔なので、首輪を外す。


「おお!!」


町の見ていた人が一斉に後退した。


疑問を感じる隆之だ。


町の人が何を恐れているのか。


最初の馬屋の人らしき人が恐る恐る声を掛ける。


「タカユキ様、首輪を使わないのですか?」


「見てるだけで、不愉快になるから」


「馬はどうして、暴れないのですか?」


隆之は言われている意味が判らない。


馬の首に手を当てて、乱れた鬣などを直してやる。


「嘘だ、馬が首輪も無しに従っている!」


それからは、広場は大騒ぎだった。





「タカユキ様、馬は魔物です」


「えっ!、どういうことです」


「だから、馬は人間の言うことなど聞きません」


「???」


「首輪は、隷属の首輪で群れのリーダーを従わせるものです」


「俺は何にもしてないぞ」


「だから、魔物である馬があなたに従った事が驚くべきことです」


そう言われても、ピンとこない隆之だった。




その後、町長の補佐役の男に下駄を預ける。


リーダー格の黒馬は『隆之専用』として他の者に使わせない。


そのかわり、他の馬は適時貸し出す事で話をつけた。


馬を扱うのに鞭を使わないことが前提条件だ。


その信じられない要求に首を傾げる補佐役。


初めて、馬が人語を解することを理解した印象だ。


まさか、それが隆之の話し掛けた言葉が原因とは考えてもいない。


リーダーの黒主を配下に収めたことで群れそのもののスキルアップだった。






元に戻って、町長と話をしている時に扉が叩かれる。


扉がノックされて、奥方が顔を出した。


町長は、『準備が出来た』という雰囲気で部屋を出て行く。


まだ話の途中だっただけに疑問の残るところだ。


町長と入れ替わりに四人の娘が入ってきた。


『あれ?』


一瞬浮かんだ疑問。


誰も選ばなかったはずなのに・・・


四人とも目一杯盛装して部屋にいる。


隆之は皿が選択肢ではなく中身が選択肢だったことに気付いた。


一人ならぬ四人を選んだ隆之だ。




「タカユキ様、今宵はお楽しみください」


そう言って、町長は席をはずした。


四人を前にしてどう言葉を掛けてよいのか。


しかし、はっきり言うべき事は言っておかないといけない。


「ここに来たのは、自分の意思ですか?」


隆之の言葉に、四人の顔が一斉に曇った。




隆之にわかっていたことがあった。


イチの持つ腕輪、ニーの持つ指輪、サンの填めているネックレス、ヨンの

付けている耳飾だ。


いずれも魔法の何かが掛かっている。


安全な物なら良いが、受信機の類のようなものだと危険だ。


魔法の構造その物を良く知らない。


それだけに、抱かれに来るのにそのようなものを付けていることが不自然。


確認のために声を掛けた。


その返事が顔色の変化だった。




隆之が各人のアイテムを指摘する。


驚いたような表情の娘達。


若干抵抗の気配を見せる。


しかし、一人があきらめたようにはずすと残った娘もはずした。


女達はしぶしぶ隆之が指定したアイテムをはずす。


隆之もあえて、背後は問わない。


村の習慣で夜伽をするのが当たり前なら頂くだけだ。


その夜、隆之は賢者ならぬ勇者となる。


後の黒国救世の賢者の伝説の始まりだった。




2章 了

現在、執筆中で、構想が不十分な段階です。

ここからは、隆之が中心ではなくヒロイン役の四人。

そして、まだ現れていないキクと妹が話の中心です。

構想をしっかりまとめる意味で少し時間を空けるので

ご容赦の程を。

これまでのご愛読ありがとうございました。

再開の折にはまた応援をよろしくお願いします。





(仕事がもう少し暇なら・・・)

愚痴を言ってもしょうがない、せっせと頑張るか!


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