第58話 夜の診療所
1: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 00:58:11.11 ID:clinic
出張先で体調を崩し、
仕方なく夜間診療所に行ったのは、雨の強い夜だった。
古い建物で、受付の蛍光灯はちらつき、
待合室には誰もいなかった。
受付の女性は無表情で、
「診察券を……」
とだけ言い、こちらを一度も見なかった。
診察まで少し時間がかかると言われ、
待合室の椅子に座っていると、
自動ドアが スッ…… と開いた。
誰もいない。
風かと思ったが、
ドアの前の床に、濡れた足跡がひとつだけ残っていた。
裸足の、小さな足跡。
その瞬間、
待合室の奥の廊下から カツ……カツ…… と足音がした。
靴の音ではない。
床を爪で叩くような、乾いた音。
診察室の方へ続く薄暗い廊下の奥に、
白い影が立っていた。
子ども……のように見えた。
だが、肩の位置が妙に高く、
首がない。
影はゆっくりとこちらに向かって歩き出した。
足音はしているのに、影の足は床についていない。
受付の女性に声をかけようと振り返ると、
受付は無人だった。
さっきまでいたはずなのに。
再び廊下を見ると、影はもうすぐそこにいた。
顔があるべき場所には、
濡れた髪が垂れ下がっているだけだった。
その髪の隙間から、
小さな手がにゅっと伸びてきた。
触れられる──と思った瞬間、
診察室のドアが勢いよく開いた。
「次の方、どうぞ!」
医者の声に振り返り、
再び廊下を見ると、影は消えていた。
診察室に入ると、医者はカルテを見ながら言った。
「今日は珍しいですね。
この時間、患者さんはあなた一人ですよ」
「さっき、子どもみたいなのが……」
と言いかけた瞬間、
医者は顔を上げ、
少しだけ眉をひそめた。
「……ああ。
あの子、また出たんですか」
「え?」
「首のない子ですよね。
あの廊下で亡くなったんです。
雨の日だけ、迎えに来るんですよ」
医者は淡々と続けた。
「でも安心してください。
“連れて行く相手”は、
いつも決まってますから」
「誰なんですか?」
医者は答えなかった。
ただ、診察室のドアの方を見て、
小さくつぶやいた。
「……今日は来てないといいんですが」
2: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:01:33.55 ID:rain
裸足の足跡ひとつだけって、
最初の一行で帰る案件。
3: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:03:10.88 ID:clinic
首がないのに“歩く音だけする”の、
脳が理解を拒否するタイプの怪異。
4: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:05:44.11 ID:rain
受付の人が消えてるのが一番怖い。
絶対見えてなかったやつ。
5: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:08:01.55 ID:clinic
髪の隙間から手が出るの、
ホラー映画でもやらない禁じ手。
6: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:10:22.77 ID:rain
医者が慣れてるのが逆に怖い。
常連扱いすな。
7: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:12:55.33 ID:clinic
「迎えに来る」って表現が
静かに刺さる。
8: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:15:33.11 ID:rain
雨の日限定で出るの、
出勤日が決まってる幽霊。
9: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:17:44.88 ID:clinic
“連れて行く相手は決まってる”って、
誰なんだよって話。
10: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:20:12.77 ID:rain
医者の最後の一言が一番怖い。
絶対知ってるやつ。
11: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:22:33.55 ID:clinic
夜間診療所って、
そもそも雰囲気が異界寄り。
12: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:24:55.77 ID:rain
首のない子どもって、
存在そのものが悲しい。
13: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:27:44.11 ID:clinic
雨の日に病院行くの怖くなるわ。
14: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:30:22.33 ID:rain
結論:
夜の診療所は異界の待合室。
15: 本当にあった怖い名無し:2026/11/30(月) 01:32:10.55 ID:clinic
主、よく声出さずに耐えたな。
あれは“触れたら終わり”のやつ。




