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洒落怖・閲覧注意まとめ  作者: はまゆう


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145/182

第144話 八王子の美大裏

611:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:14:07.36 ID:W7kN4bQa0


八王子にある美大の近くで、変な場所に迷い込んだことがある。


十年くらい前の話。


学校名を書くとたぶんすぐ特定されるので書かない。


俺はそこの卒業生で、当時は都内でフリーのイラストレーターをしていた。


その日は大学の近くにアトリエを借りていた友人のところへ、仕事の打ち合わせを兼ねて遊びに行った。


夕方から飲み始めて、気づいたら十一時を過ぎていた。


外はかなり強い雨だった。


友人には泊まっていけと言われたが、翌朝までに仕上げる仕事があったので帰ることにした。


612:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:15:26.81 ID:fR3cL8mV0


八王子の美大ってほぼ答えじゃねえか


613:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:16:09.43 ID:h2Kp9Dxs0


橋本方面?


614:611:2026/08/03(月) 22:18:37.22 ID:W7kN4bQa0


大学名と細かい場所は勘弁してくれ。


ただ、橋本方面へ抜ける道がある辺りとだけ書いておく。


その頃、近くで熊らしいものを見たという話が出ていた。


友人にも、


「近道の林には入るなよ。最近、熊が出たって連絡回ってるから」


と言われた。


俺も熊は怖かったが、酒が入っていたし、普段から何度も通っていた道だった。


大学の裏手から住宅街へ下りる細い坂道で、街灯は少ないが、普通に歩けば十分もかからない。


大通りを回ると二十分以上余計にかかる。


雨も強かったから、俺はいつもの近道へ入った。


615:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:19:25.54 ID:z5AqV1nE0


熊が出る場所を酔って歩くなよ


616:611:2026/08/03(月) 22:22:11.63 ID:W7kN4bQa0


それは本当にそう思う。


坂道へ入ってすぐ、スマホを落とした。


泥の中ではなかったが、雨でかなり濡れた。


画面が何度か点滅して、そのまま電源が落ちた。


当時使っていた古いAndroidで、防水でもなかった。


懐中電灯が使えなくなったが、坂の下には住宅の明かりが見えていた。


だから、そのまま下りた。


ところが途中から、下に見えていた明かりが全部消えた。


停電かと思った。


雨の音だけがして、車の音も聞こえなくなった。


あの辺は夜でも、遠くから国道の音が聞こえる。


それが急になくなった。


617:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:23:06.88 ID:c8Mb2YtJ0


酒飲んでたなら終わりじゃん


618:611:2026/08/03(月) 22:25:44.19 ID:W7kN4bQa0


酔っていたのは否定しない。


ただ、記憶が飛ぶほどではなかった。


坂を下りきったところで、傘が何かに引っかかった。


枝だった。


左右から大きな葉のついた枝が伸びていて、傘を開いたままでは通れない。


そんな場所は、いつもの道にはなかった。


周辺に畑はあるが、そこは生垣のような木が両側にずっと続いていた。


道を間違えたと思って引き返そうとした。


後ろを見ると、今下りてきたはずの坂がなかった。


枝の間に、同じ幅の道が暗く続いているだけだった。


619:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:26:38.57 ID:q4HtR9sK0


異界入りテンプレ


620:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:27:02.13 ID:e6LwN3bP0


続けて


621:611:2026/08/03(月) 22:29:51.74 ID:W7kN4bQa0


その時、右側の木の奥で息をする音がした。


フッ、フッ、という大きな鼻息だった。


熊だと思った。


傘を閉じて、手に持ったまま動かなかった。


枝の間に、白っぽいものが見えた。


最初は濡れた木の幹だと思った。


それが少し前へ出てきて、長い顔になった。


馬だった。


顔だけが、葉の間から出ていた。


鼻の周りが濡れていて、耳がこっちを向いていた。


熊じゃなかったことに安心して、声をかけそうになった。


その時、左からも鼻息がした。


振り向くと、反対側にも馬の顔があった。


622:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:30:47.92 ID:Z9vG2mFu0


牧場に入っただけだろ


623:611:2026/08/03(月) 22:33:28.60 ID:W7kN4bQa0


俺もそう思った。


でも柵がなかった。


馬の首から下も見えなかった。


左右とも枝が密集していて、馬一頭が立てる空間があるようには見えない。


それに、少し歩くとまた別の顔があった。


右に二頭、左に一頭。


さらに先にもいた。


どの馬も鳴かず、ただ鼻息だけを出していた。


俺が歩くと、馬の顔も枝の中をついてきた。


音はしなかった。


蹄の音も、枝を踏む音もなかった。


顔だけが、俺と同じ速さで滑るように動いていた。


624:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:34:17.40 ID:h2Kp9Dxs0


顔だけって胴体見えなかっただけだよな?


625:611:2026/08/03(月) 22:36:35.09 ID:W7kN4bQa0


暗かったから、そうだと思う。


そう思うことにして歩いた。


しばらくすると、前に明かりが見えた。


古い家だった。


平屋に見えたが、屋根の奥に二階の窓のようなものもあった。


昔の農家を改装したような家で、縁側に女の人が立っていた。


四十代くらいで、白いブラウスに暗い色のロングスカートを穿いていた。


俺が声をかける前に、


「道に迷ったんでしょう」


と言われた。


俺は、ここが何という場所なのか聞いた。


女は答えず、


「ずいぶん濡れましたね。中で少し休んでいきなさい」


と言った。


626:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:37:31.46 ID:k7Ds5QxA0


入るな


627:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:38:05.91 ID:fR3cL8mV0


絶対入るやつ


628:611:2026/08/03(月) 22:40:42.16 ID:W7kN4bQa0


入った。


雨宿りができるし、道を聞けると思った。


玄関ではなく、縁側から上げてもらった。


足を拭くためのタオルと、乾いたシャツまで出してくれた。


室内は古かったが、埃っぽくはなかった。


柱時計があった。


針は午前一時十二分で止まっていた。


時間を確認しようとして、スマホが壊れていたことを思い出した。


女は水と、温めた酒を持ってきた。


俺が日本酒を飲みたかったのを知っているような気がして、一瞬変だと思った。


ただ寒かったし、酒も好きだったので飲んだ。


奥の部屋には、若い女が一人いた。


二十代前半くらいだったと思う。


こちらへ背中を向けて、座卓の前に座っていた。


629:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:41:49.63 ID:V3mJ8pRc0


美人だった?


630:611:2026/08/03(月) 22:44:16.27 ID:W7kN4bQa0


その時は横顔しか見えなかったが、整っていた。


髪は長くて、黒いワンピースを着ていた。


女主人に「あの人は娘さんですか」と聞いた。


女主人は、


「さあ、どうでしょう」


と笑った。


それから俺の隣へ座り、何度も酒を注いだ。


俺は友人のところでも飲んでいたから、急に眠くなった。


帰らないとまずいと言ったが、


「今夜は道が悪いから、朝まで休みなさい」


と言われた。


奥に布団を敷いた部屋があるという。


その頃には頭がぼんやりして、断る気力がなくなっていた。


631:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:45:08.71 ID:q4HtR9sK0


ただの美人局では


632:611:2026/08/03(月) 22:47:37.92 ID:W7kN4bQa0


女主人に肩を支えられて、廊下の奥へ連れていかれた。


案内された部屋には、青っぽい布団が一組敷いてあった。


女主人が、


「少し眠れば、帰り道も思い出しますよ」


と言った。


俺は布団へ横になった。


女主人が枕元に座り、俺の髪や頬を撫でていた。


嫌ではなかった。


むしろ、ずっと前から知っている人に触られているような気がした。


目を閉じたところで、廊下から足音がした。


奥にいた若い女が、戸口に立っていた。


若い女は俺ではなく、女主人を見て言った。


「また拾ってきたの」


女主人は何も答えなかった。


「ここには置かないって言ったでしょう」


声は若かったが、怒り方が妙に年寄りじみていた。


女主人は俺から手を離した。


その時、若い女が、


「この雌狐。何人目だと思ってるの」


と言った。


633:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:48:30.24 ID:e6LwN3bP0


若い方が助けてくれたのか


634:611:2026/08/03(月) 22:50:55.71 ID:W7kN4bQa0


わからない。


若い女は俺を見て、


「起きて。今ならまだ人の道へ戻れるから」


と言った。


顔を正面から見たのはその時が初めてだった。


整った顔だったと思う。


ただ、左右アンバランスで左目がやや大きく、右目が細かった。


顔の左右で年齢が違って見えた。


俺が起き上がると、女主人が若い女へ、


「この人は自分から来たのよ」


と言った。


若い女は、


「いつもそう言う」


と答えた。


それから持っていた細い棒で、畳を二回叩いた。


馬が一斉に鳴いた。


家の外からではなく、床下から聞こえた。


俺は嘶きに驚いて、靴も履かずに縁側から逃げた。


635:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:51:47.03 ID:Z9vG2mFu0


床下に馬は無理あるだろ


636:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:52:22.69 ID:c8Mb2YtJ0


酔っぱらいの夢に一票


637:611:2026/08/03(月) 22:54:40.74 ID:W7kN4bQa0


庭へ出ると、雨はやんでいた。


馬の顔が垣根の上に並んでいた。


さっきまでは道の左右に数頭ずつだったのに、その時は十頭以上いた。


全頭が口を開けていた。


鳴き声は聞こえなかった。


俺は反対方向へ走った。


どこをどう走ったのか覚えていない。


明るい光が見えて、そこへ向かった。


小さな板金工場だった。


シャッターが半分開いていて、中で溶接の光が点滅していた。


入口に、白髪の老婆が座っていた。


638:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:55:36.12 ID:k7Ds5QxA0


夜中に老婆が溶接してんの?


639:611:2026/08/03(月) 22:57:28.46 ID:W7kN4bQa0


溶接していた人は奥にいた。


姿はよく見えなかった。


老婆は作業着の上に古い前掛けをして、火花を見ていた。


俺は国道へ出る道を聞いた。


老婆は俺の顔を見て、


「酒を飲んだか」


と聞いた。


飲んだと答えると、


「あれほど、飲み物には口をつけるなと言ってあるのに」


と言った。


誰に言っているのかわからなかった。


老婆は顎で右を示した。


俺がそちらへ歩くと、すぐ見覚えのあるコンビニの裏へ出た。


そこから先は普通の道だった。


640:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 22:58:18.69 ID:fR3cL8mV0


靴は?


641:611:2026/08/03(月) 23:00:12.51 ID:W7kN4bQa0


コンビニへ入った時に、裸足なのに気づいた。


店員にかなり変な目で見られた。


タクシーを呼んでもらって帰った。


翌朝、友人に電話して事情を話した。


当然、酔って迷っただけだと言われた。


靴と傘を探したかったので、友人と一緒に近道を歩いた。


坂は普通に住宅街へつながっていた。


両側に生垣はない。


牧場も、古い家も、板金工場もなかった。


コンビニの裏にも、建物が一軒入るような空き地はなかった。


642:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:01:09.04 ID:h2Kp9Dxs0


板金工場まで消えるのかよ


643:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:01:48.56 ID:q4HtR9sK0


Googleマップの履歴は?


644:611:2026/08/03(月) 23:04:16.37 ID:W7kN4bQa0


当時は位置情報の履歴を使っていなかった。


スマホは乾かしたら起動した。


画面に水が入っていたが、データは残っていた。


写真が一枚増えていた。


午前一時十二分に撮影されていた。


俺は青い布団に横になっていた。


枕元に女主人が座り、足元に若い女が立っていた。


若い女はこちらを見ていた。


女主人の顔は、髪で隠れていた。


写真は天井付近から撮られていた。


自撮りでも、二人のどちらかが撮ったようにも見えなかった。


645:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:05:03.89 ID:V3mJ8pRc0


写真うp


646:611:2026/08/03(月) 23:07:22.93 ID:W7kN4bQa0


もうない。


気味が悪くて機種変更した時に削除した。


これは信じなくていい。


ただ、画像の詳細情報だけは当時確認した。


位置情報が入っていた。


表示された場所は、俺が入った覚えのない家ではなかった。


いつも使っていた、大学裏の坂道の途中だった。


647:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:08:31.15 ID:z5AqV1nE0


その土地に昔何かあったの?


648:611:2026/08/03(月) 23:11:06.40 ID:W7kN4bQa0


卒業後、大学関係者だった人に聞いた。


戦前、その周辺には軍用馬を一時的に置く厩舎があったという話を聞いたことがあると言われた。


戦後は民間の乗馬施設になったが、火事で閉鎖されたらしい。


ただし郷土資料を調べても、はっきりした記録は見つからなかった。

今も乗馬倶楽部はあるが、関係もわからん。


女主人や娘が行方不明になったという話も、後から誰かに聞いた噂でしかない。


だから、その話と俺の体験が関係あるとは断言できない。


649:611:2026/08/03(月) 23:13:45.82 ID:W7kN4bQa0


これで最後。


去年、仕事で久しぶりに大学の近くへ行った。


あの坂道は、熊の目撃情報があったため、一時的に立入禁止になっていた。


入口にロープが張られ、注意書きが出ていた。


ロープを潜って降りてみた。

坂の途中に、泥だらけの男物の靴が一足揃えて置いてあった。


俺があの夜に履いていたものと、同じメーカー、同じ色だった。当時、プレミアムが付いてたナイキのヴィンテージ。


サイズも同じだった。


その奥の林から、馬の鼻息が聞こえた気がした。


熊が出ると言われていたので、それ以上は近づかなかった。


650:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:14:31.62 ID:e6LwN3bP0


10年もそこに靴があったんか?


651:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:15:14.09 ID:Z9vG2mFu0


新しい靴で別の奴も連れていかれたんじゃね


652:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:16:02.84 ID:k7Ds5QxA0


熊より嫌なもん出るじゃねえか


653:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:16:43.57 ID:fR3cL8mV0


助けたのが若い女で、道を教えた老婆は何者なんだよ


654:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:17:25.41 ID:q4HtR9sK0


女主人に「あれほど飲ませるなと言ったのに」って怒ってたんじゃないか


655:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:18:07.63 ID:h2Kp9Dxs0


同じ女が若い姿と老婆の姿で出口を作ってるようにも読める


656:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:18:54.28 ID:c8Mb2YtJ0


馬の顔がついてきてたんじゃなくて、道そのものを囲んでたんだろ


657:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:19:36.51 ID:V3mJ8pRc0


八王子の美大裏で雨の日に馬の息がしたら引き返せってことか


658:本当にあった怖い名無し:2026/08/03(月) 23:20:18.06 ID:z5AqV1nE0


引き返した先に坂が残ってればな

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