第123話 封印解除
第123話です。
楽しんでいってください!
神殿の中央には、何本もの氷の柱が立っている。
それら中心には一人の女性が、眠るように目を閉じている。
深い海のような、青色の長い髪が水の中のようにふわふわと揺れる。
幾重にも薄い衣が重なった優美な装いだった。
袖や裾には金糸で刺繍されており、胸元にはしずく型の青い宝石が輝く。
その身体には幾本もの鎖が巻き付き、氷の柱へと溶け込んでいた。
「ラクリマ=ディエル・・・?」
ヴェーヴの呟きに、アグニ=ゼルが頷く。
その時だった。
『早く、こっちに来て頂戴な。』
今まで以上に、甘い声。
まるで、待ちきれない子供のようだ。
「え・・・?」
ヴェーヴの足が自然と前に出る。
ふわりと冷気が頬をなでる。
『もっと、もっと。』
さらに一歩前に出る。
リリスが声を掛けようとしたその時、彼女を止めたのはアグニ=ゼルだった。
「不要だ。」
「・・・?」
リリスが眉を寄せながらアグニ=ゼルを見おろす。
彼は淡々とした口調でことばを続けた。
「封印は、もう解け始めている。怪我をすることはない。」
ヴェーヴが氷の前に立つ。
吸い寄せられるように、その表面に触れた。
つめたい、そう感じたのは一瞬だけ。
次の瞬間、パキリ、と音が響く。
「・・・へ?」
氷には一本の亀裂が走っていた。それは瞬く間に全体に広がる。
巻きついていた鎖が淡い光となって消えていく。
「触れた、だけで・・・?」
リリスが目を見開く。
800年近くの年月。
アグニ=ゼルと同格、あるいはそれ以上の力を持つ精霊の封印。
それは、役目を終えたように静かに消えていった。
女性の足先が床に触れる。
長い袖がさらりと揺れる。
長い青色の髪が波打ち、透明な水色の瞳が姿を現す。
「やっと、触れてくれたわぁ。」
心底嬉しそうに目が細められる。
次の瞬間、彼女の姿がふっと消えた。
「・・・っ!」
リリスが反応するよりも早く、彼女はヴェーヴの前に立っていた。
「わっ!」
そして、そのままヴェーヴを抱きしめる。
優しいけれど、少し息苦しさを感じるくらい強い抱擁。
ふわりと雨上がりのような涼やかな香りが立ち上った。
「ずっと、ずっと、待っていたのよぉ。」
耳元で甘くささやく。
「もう大丈夫。もう、ぜったいに離さないからぁ。」
どうしたらいいのかわからずにちらちらと2人に視線を向けるヴェーヴ。
アグニ=ゼルはいつもよりも長く息を吐きながら口を開いた。
「相変わらずだな、ラクリマ。」
「あらぁ、アグニちゃんもいたのねぇ。」
にこりと笑みを浮かべる。
しかし、その腕はヴェーヴから全く離れていなかった。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




