第121話 蒼涙の遺跡へ
第121話です。
楽しんでいってください!
宿を出ると、昨日の雨が嘘のような青空が広がっていた。
まだかすかに濡れている石畳が朝日を受けてきらきらと輝く。
「いい天気!」
ヴェーヴが大きく伸びをすると、潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「ねぇ、今日はどこに行くの?」
ヴェーヴは後ろに立つアグニ=ゼルを振り返る。
「北の入り江だ。」
「そこに、ラクリマがいるの?」
「そうだ。」
「へー。」
「ヴェーヴ、気を付けて頂戴ね。」
くぎを刺すようにつぶやいたリリスの表情にはわずかな緊張が浮かんでいる。
それを見て、ヴェーヴの口数もつられて減っていった。
海岸沿いの細い道を一列になって歩く。
潮風が風を揺らした。
朝だからか、人通りが少ない。
ヴェーヴは右側にある木の柵ごしに海を眺める。
聞こえるのは波の音と、海鳥の鳴く声だけだった。
「気持ちいいね。」
ヴェーヴは海を見渡しながらそうつぶやいた。
その瞬間――
ふわり、と胸がほんのりと温かくなる。
「・・・?」
昨日と同じ、不思議な感覚。
『・・・こっちよ。』
耳ではない、頭に響いてくるような声。
ヴェーヴはその声に手を引かれるように、海へと一歩、足を踏み出した。
「どうかしたの?」
後ろを歩いていたリリスがわずかに眉を寄せ、首を傾げる。
「なんかね、こっちみたい。」
ヴェーヴはまっすぐに続く道ではなく、海へとつながる細い線を指さした。
元は道があったであろうそこには、ヴェーヴの腰ほどまである草が生い茂っている。
「あっているぞ。」
先頭を歩いていたアグニ=ゼルが足を止めて振り返る。
「・・・あいつか。」
アグニ=ゼルが無言で海へと視線を向ける。
「アグニ?」
アグニ=ゼルはちらりとヴェーヴに視線を向け、脇道へと足を進めた。
草におおわれた道の先には、小さな入り江があった。
「わぁ・・・!」
切り立った岩壁で外界と区切られたような砂浜。
波は昨日見た海よりも穏やかで、きらめいて見える。
思わず、足を踏み出す。
靴が海に浸されそうというその時、海が白い波を立てて割れていく。
まるで、道を譲るように。
『――ようやく、来てくれた。』
先ほどよりも、はっきりと聞こえる女性の声。
どこまでも穏やかで、包み込むような声だ。
アグニ=ゼルが静かに波が割れた先を指さす。
「ここが、蒼涙の遺跡だ。」
そこには、明らかに人工物だと分かる、青い光を帯びたきれいな階段が下に向かって伸びていた。
階段は、不思議と乾いていた。
「歓迎、されているのね。」
リリスが静かに頷く。
ヴェーヴは頷き返す。
『待っているわ。』
その声に導かれるように、遺跡へと一歩踏み出したのだった。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




