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第101話  通路の先

第101話です。

楽しんでいってください!

 パチリと目を開く。

神殿内は相変わらず薄暗かったが、すぐ隣からごそごそと動く気配を感じた。


「師匠、おはよう。」


身を起こしながら、リリスに声をかける。


「ええ。おはよう。」


リリスはパンを軽くあぶりながら目を細める。

ヴェーヴは目をこすりながら寝袋をたたみ始めた。




 あっという間に朝食が完成し、2人は焚火を囲む。

その時、リリスが静かに口を開いた。


「ヴェーヴ、エリュシア様に何か言われたの?」


どこか確信を含んだような物言いに、ヴェーヴは少し目を丸くした。


「なんで?」


「何となく、よ。」


リリスは微笑み、水を口に含む。


「ふーん。なんかね、あの玉には僕が触んないといけないんだって。」


ヴェーヴはチーズが載ったパンにかぶりつく。


「それだけなの?」


こくこくと頷きながら咀嚼し、飲み込む。


遅いって言われたのは、言わないでおこ・・・。


ヴェーヴは目を細め、再びパンにかぶりついた。




 食事を済ませ、荷物をすべてまとめる。

リリスがいつも通り焚火の火を消した。


薄暗い広場。

その中央にある球体にヴェーヴは歩み寄った。


「師匠、行くよ・・・!」


リリスは頷き、ヴェーヴを少し離れたところから見守る。

ヴェーヴはそっとそれに手を触れた。

ひんやりとしたそれが一瞬、熱を持ったように感じられた。


「へ?」


ヴェーヴが声を漏らすと同時に、ドォォォォンという音が広場の中に響き渡る。


「ヴェーヴ、戻ってきて頂戴!」


リリスが咄嗟に声を上げる。

しかし――


「なんか、くっついて離れない!」


ヴェーヴの手は球体に固定されたように全く動かなかった。

透明だった球体の中で赤と黒の何かが渦巻く。


ドクン、


どこからか、脈打つような音が聞こえた。

リリスがヴェーヴに駆け寄り、結界を構築する。

その次の瞬間――


ガラガラと音を立て、ヴェーヴたちの右側の壁が崩れ落ちた。

球体が赤い光を放つ。


「・・・っ!」


ヴェーヴは咄嗟に目をつぶった。



 揺れが収まると、ヴェーヴはそっと目を開く。

壁が崩れ去ったその場所には、まるで元からあったかのように整えられた通路が伸びていた。

あるはずの瓦礫もなく、その場は何事もなかったかのように静まり返っている。


「・・・行こ、師匠。」


ヴェーヴは不安に思う気持ちを押さえつけ、リリスを見上げる。

彼女はいつも通りの笑みをたたえ、頷いた。



 通路に足を踏み入れると、むわりとした熱気がヴェーヴたちを襲う。

先ほどのひんやりとした空気が嘘のようだった。


「まさか、ここに通路があったなんて、気付かなかったわ。」


リリスが周囲を見回す。

石造りの壁や天井には赤い線が入っており、そこから時折火がこぼれ落ちた。

床は真っ黒でぼこぼことした道が続いている。


「さっきとは全然違うね。」


「そうね。本来は正面にあった小さな通路以外、進むところはなかったのだけど・・・。」


リリスはヴェーヴを見おろす。


「あなたには、不思議な力があるのかもしれないわね。」


「そうなのかな?」


ヴェーヴは首を傾げる。


「きっと、ね。」


「それなら、師匠たちみたいに魔法が使えたらいいのになー。」


「そんなにいいものではないわよ?」


2人はまっすぐ前を見据え、足を進める。


「でも、いいこともいっぱいあるからね!」


ヴェーヴは二ッと笑みを浮かべた。





 やがて、通路の終わりが見えてきた。


「行き止まり・・・?」


ヴェーヴは通路をふさぐように虹色に輝く炎の壁を見上げた。


「この先に、何かあるのかしら?」


リリスは氷の塊を炎に向かって放つ。

氷は一瞬で溶け、蒸発していった。


「ダメね。」


リリスはさらに水や火、様々な魔法を炎に向かって放つ。

それでも、炎の壁の勢いは全く衰えない。


それまでじっと壁を見ていたヴェーヴが口を開いた。


「師匠、ちょっと試してもいい?」


「ええ、いいわよ。」


リリスは魔法を撃つ手を止める。

それでも、何が起きても大丈夫なように構えは解いていなかった。


・・・たぶん、大丈夫。

間違えてたら、大けがなんだけど・・・。


ヴェーヴはまっすぐに壁を見つめた。


「よし!」


覚悟を決め、炎の壁に向かって無防備に腕を突き出す。


「ヴェーヴ!?」


背後でリリスの慌てた声が響いた。

ヴェーヴは笑みを浮かべ、振り返る。


「師匠、これ、熱くないよ。」


ヴェーヴは壁から腕を引き抜く。

腕にはやけどの跡一つなかった。

リリスはそれを確認し、ほっと息をつく。


「もう、危ないことはしないで頂戴。」


叱るような口調でそう言いながら、リリスはヴェーヴの頭をそっと撫でる。


「えへへ。はーい。」


ヴェーヴは素直に返事をして、頷いた。

これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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