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すぐに魔法師が呼ばれると、ステファニーのもとへとやってきた。
魔法師は、ステファニーの様子を見ると驚愕の顔をした。
「ステファニー様から黒き魔法が出ています。力を封じ込めなくてはいけません。」
「そんな。ステファニーには癒しの魔法が備わっていたはず。」
アルフレッドは、驚いて魔法師に尋ねた。
「もしかすると、ステファニー様は二つの魔法を持っていたのかもしれません。癒しの魔法により今まで黒き魔法が押さえられていたのでしょう。しかし、今は、そのバランスが崩れ、癒しの魔法より黒き魔法が強く出ております。このままでは、ステファニー様も黒き魔法に取り込まれてしまうかもしれません。」
「そんな…。」
アルフレッドやマリアンヌは真っ青になった。
「ステファニー様の力が落ち着くまで、力を封じ込めてよろしいでしょうか。癒しの力は使えなくなりますが、落ち着けばまた解放することも可能です。」
「分かった。よろしく頼む。」
「かしこまりました。」
魔法師は、アルフレッド達に深くお辞儀をすると、ステファニーに向け、手に力を込めた。するとステファニーは、光に包まれると気を失った。
「ステファニー!!」
マリアンヌはステファニーに駆け寄った。
「これで力を封じ込めました。ステファニー様の心の闇が落ち着けば、封じた力は解かれるはずです。」
目を覚ますと、ベッドの周りにはみんなが覗きこんでいた。
「ステファニー、気分はどう?」
マリアンヌは、ステファニーの手を握りながら心配そうに話しかけた。
「お母様、大丈夫です。私の力はどうなったのでしょう。」
「大丈夫。力は封じてもらいましたわよ。もう心配いないわ。」
「力を封じる…。癒しの魔法は使えないのですか?」
「あなたは草木を枯らした黒き魔法も持っていたの。だからあなたの力を今は封じないといけなかったの。残念だけど、今は使えないわ。」
ステファニーは、絶望した。癒しの力はステファニーの希望だった。家族のお荷物でしかないと思っていた自分が唯一人の役立てると思った力だった。それを封じられた自分は、これからどう生きていけばよいのか分からなかった。
体調を考え、学園をしばらく休んだが、ステファニーは学園に戻ることにした。いくら封じられたとはいえ、また黒き魔法が外に出てしまうか分からない。その時学園の方が強い力を持つ教師にすぐに対処してもらえるのではと考えたのだった。
しかし、以前の学園生活とは違いステファニーは、一人ですごすようにした。そして、空いた時間は図書館へと向かった。
「何を読んでるの?」
一人で本を読んでいると、誰かに声をかけられた。
「エドワード様。」
「最近、君は一人でいるようだね。」
「一人の方が気楽なので」
「そっか。気が会うね。僕も一人で静かに本が読みたくて、よくここに来る。」
それから、エドワードとステファニーは図書館で会うと挨拶をするようになった。




