融合と資質
「おはようございます。ヴィム~。いる~?」
「おはよう、ミオ。ヴィム、ミオが来てるよ!」
ヴィムの母親であるニーナが、居間で寝ていたヴィムを叩き起こしている。
ヴィムの家は牛飼いだ。ヴィムの父親のヨハンと、兄二人が家業を回しているらしい。毎日朝早くから牛の世話や乳絞りをする必要がある。ヴィムも手伝っているはずだから、ひと段落した今は少し眠いのだろう。
今日はヴィムの魔法教室の日にした。家族に魔法を教えて、そのあまりの生徒資質の高さに思わず数日教鞭を取ってしまった。最初に魔法を教えると約束したのはヴィムなのだが。
「おはよう、ミオ。今日は、ハンスさんとの試合か?」
「何寝ぼけてるの。約束の件よ」
ハンスのことはいい。特に試合の件はうやむやにしたい。今はヴィムとの約束の方が大事だ。
約束と聞いて目が覚めたのか、ヴィムの顔に生気が満ちてくる。
「今日はどこで? 森に行くのか?」
どうするか。ウチでもいいのだが……家族が、特にマリーが家で練習してるからな……先に家族に教えたのは、ちょっとバツが悪い。
「森にしようか。他の人がいない方が集中できるから」
連れだって森に歩いていく。私がヴィムを引きずり回すのはいつものことだから、私たちが一緒にいることを町の人達も全然気にしない。むしろ、ヴィムに同情の視線が向いている気がする。日頃の行いは大事だと改めて認識した。
森の近く、炭焼き小屋の周りで羊たちが草を食んでいるのが見える。すっかり毛刈りが終わって、山羊と区別がつかない。とはいえ、この町の人は山羊を見たことがない人ばかりだから、この感覚を共有できる人がいない。
この光景になると、もう夏が近いのだと感じる。そんな羊たちを見ながら、私たちは森へと入っていった。
森に着くと、以前使った小広場に向かう。ヴィムには見つかったが、本来あそこは隠れるのに都合が良い。
「魔法教えるの、大丈夫だったんだな」
森に来て周りに人がいなくなったところで、ヴィムが確認してくる。
「うん。テオさんに聞いたけど、大した条件じゃなかったよ。私から教わったってこと、言わないでくれれば大丈夫」
「分かった」
ヴィムは口が堅い方だ。普段大人しいが、やる時はやるタイプ。しかも頭脳派。こういうのが、怒らせると怖いのだ。
山菜の育成状況を見ながら広場に着くと、あの時のまま特に荒らされていないのがわかった。町の人もあまり来ないし、開けているから動物たちもあまり近寄らないようだ。大雨が降ったわけでもない。ならば――
「うん。大丈夫そう」
軽く土を掛けただけにしていた、認識阻害の魔法陣がまだ生きている。周囲を見渡し、今度こそ誰もいないことを確認して魔法陣を起動する。
「それは?」
ヴィムが興味深そうに覗き込んでくる。
「ちょっとしたおまじないよ」
四つ全て起動したところで、広場の真ん中でヴィムに向き直る。
「さて、始めましょうか」
「よろしく。どんなことするんだ?」
ヴィムが期待でワクワクしているのが傍目にもよく分かる。
とりあえずは、家族にしたのと同じ、オドの動かし方からだ。最初にして最難関。
「じゃ、私の手にヴィムの手を重ねて。ちょっと押される感じがすると思うけど、我慢してね」
「こうか?」
ヴィムが手を重ねてくる。あまり筋肉がついていない。もうちょっと鍛えた方がいいな。
「お、押されてる。これが?」
「今押してるのが、私の魔力。押すの止めるよ」
押すのを止めれば、ヴィムの方から反発してくる。これは……ヴィムってオド多いかも。レオナもそうだが、意外と一般市民にもオドの多い人いるんじゃないか?この状況で魔法教えないのって、結構な損失になっているんじゃ……
「……」
ヴィムが自分の手を見て考えている。
「どうしたの?」
「今のが魔力?」
「そうだけど……」
「俺、これ分かるよ。自分でもちょっと動かしたことある」
「え?」
きっかけも無くオドを自覚できる人はそう多くない。レオナに続き、またも逸材発見か?
「前に、ミオに派手に突き飛ばされたことあったろ? あの時に、なんか変な感じがして。何ていうか、自分の中に何か動くものがあるっていうか……それを、少し動かしたりしたことがあるんだ。それが魔力だったのか」
きっかけは、あったのか。ミオが無自覚にオドを動かしたあの時、突き飛ばされたヴィムも影響を受けていた。魔法を習わなければそのまま忘れていただろうが、今こうして魔法の授業に役立っている。分からないものだ。
「それじゃあ、私の手を魔力で押せる?」
「やってみる」
ヴィムが改めて私の手に自分の手を重ね、魔力を動かす。
……しっかりと押せている。魔法を教えるのに全く問題ない。最難関があっさり崩れ去った。テオが苦労したのって、何だったんだろうか。そっちの方が希少に思えてくる。
「驚いた。ちゃんとできてるよ。これならすぐにでも魔法を教えられるわ」
「今のは違うのか?」
「今のは、入り口だね。これができないと魔法が使えない、基礎の基礎。でも、ここで躓く人が多いから、これをあっさり突破できたのは大きいわ」
そうか、とヴィムが喜んでいる。私も手間が省けた。ここで躓いてしまっては、魔法になかなか進めない。
さくさく先に進もう。私は、八つの素因を周囲に作り出す。こうやって最初に八つ全部を同時に見せれば、同時に出せるものだと思うだろう。ヴィムにもこの世界の常識は知らせない。
「うわっ。これ……ミオが前にここにいたときに確か……」
私たちを囲むように素因を浮かばせる。
「これが、魔法を使う時の基本。八つある『属性』よ。魔力でこれを生み出して、色んなことに使うのが魔法。色々な応用もあるんだけど、まずはこれを作るところからね。一個ずつ手をかざしてみて」
ヴィムに、家族と同じように素因に手をかざさせる。どんな資質があるかな?
「どう? 自分に合いそうだなって感じのやつある?」
「うん……これと、これ。あと、これかな。ちょっと他のより温かいっていうか、仲が良い感じっていうか。あと、これも少しそんな感じがする」
最初にヴィムが指した三つは、『光』、『火』、『風』。少しと言ったのが『金』だ。光系全部に適正がある。少しでも適正があるのなら、習得が楽になる。
「いいね。それじゃあ、まずこれからいってみようか」
ヴィムの前に『光』を浮かべる。光系全部に適正があるなら、大元である『光』からやった方がいいだろう。
「これを作ればいいのか?」
「そう。さっきやった私の手を押す感じを、これを想像しながらやってみて」
ヴィムが自分の手に集中し始める。程なく、光の素因が手の上に浮かんだ。
……早い。全く躊躇いが無かった。まるで、元から使えたみたいだ。
「できた、のか?」
「うん。大丈夫。これで合ってるよ。疲れたりとか、してない?」
まるで消耗した感じはしないが、一応聞いてみる。
「いや、全然。何か自然に出てきた感じがした」
ここまで相性がいいと、見ているこっちも気持ちがいいな。これなら。
「じゃあ、これとこれもやってみて」
『光』の素因をそのままに、『火』と『風』をやらせてみる。すると……
「できた、な」
しっかり火と風の素因が浮かび上がった。三つの素因がヴィムの手の上で静かに浮いている。
「そのままにしていられそう?」
「うん。大丈夫だと思う。これって消すのは……」
「集中を切れば消えるんだけど、どう?」
緊張からか、ヴィムは消す方が難儀しているようだ。意識せずに集中してしまうのだろう。消すのもまた、大事な行程だ。それができなければ、魔力の暴走を招きかねない。
「やっと消えた……」
ヴィムがほっと肩で息をつく。ヴィムの適正は思った以上だ。『金』もやらせてみたが、こちらは普通に作って消せる、というくらいだったので、特に最初の三つとは相性がずば抜けて良い。オドを動かすことが元からできていたとしても、初めて素因を扱ったとは思えない手際の良さだった。
「ミオ、何笑ってるのさ」
優秀な生徒ばかりで教え甲斐がある。今後を考えてニヤニヤしていたら、ヴィムに指摘されてしまった。
「ウチの家族といい、ヴィムといい、優秀な生徒が多いなって思って。ほら、練習、練習。反復練習が大事なんだよ」
「ああ。最初の三つでいいのか?」
「そうだね。しばらくはその三つを重点的にやってみて」
私は自分で出した素因を消し、ヴィムが出したり消したりするのを見守る。初心者とは思えない素因の扱いだ。もう作り出すのは全く問題ない。
そして、何回か繰り返していた時――
――バチッ
三つの素因の中心で、何かが弾ける。今のは……
「うわっ。何だ今の」
見ると、まだ微かに中心で光が散っている。三つの素因から、魔力が少しずつ中心点に流れているようだ。
「そのままにしていられる?」
「え、う、うん。大丈夫、だと思う」
ヴィムに維持させて推移を見守る。これらの素因は……偶然か、全く同じ強さに見える。しかし、『光』が入っている。これは融合の兆しだが、『光』や『闇』を含む三つの素因の融合は、私は成功する組み合わせを見つけられていない。
だが、これは――
「どうするんだ、これ。このままで大丈夫か!?」
「落ち着いて。大丈夫よ。これは、素因同士が融合しようとしているの。もっと後で教えようと思ってたんだけど……偶然、条件を満たしてしまったみたい」
素因に含まれる魔力が、どんどん中心に集まっていく。それと共に、さっきの光が幾度も弾ける。
――まずい、か?
勢いが良すぎる。見たことのない変化だが、暴走しかねない。
「無理やり押さえつけなきゃいけないように感じる? 膨れ上がりそうな感じとか」
「いや、大丈夫。見た目は派手だけど、落ち着いてる」
なら、行けるか? 私は、いつでも押さえつけられるように、『闇』の素因を作り出す。構成要素が光系だから、これの魔力を上回る『闇』をぶつければ相殺できる。
そろそろ全てが中心に集まる。どうなる――
――バチッ
再び激しく弾け、融合が終わる。後には、『光』によく似た、バチバチと周囲が弾ける新たな素因が浮かんでいた。
「これは……私も見たことのない素因だわ。性質は、何だろう……」
「何か、ビリビリするな。さっきの『光』に似てるけど、ちょっと違う。この弾けた感じ、どこかで見たような……」
ヴィムも、うーん、と考え込んでいる。
どこかで……瞬間的な光……構成要素は光、火、風。熱い光……? 風……あ。
「これって、『雷』じゃない?」
「あ、そうか。さっきのバチッてなったの、雷か」
多分、そうだろう。まだ確定とはいえないが、恐らく『雷』だ。『風』は気象に通じる属性だ。そして、『光』る『火』。
私もこの組み合わせは試したが、こんな変化は見られなかった。私は、基本属性の融合法則に思考を飛ばす。
素因の融合については、以前ここに来た時と自宅で色々と試した。
以前の世界では、『命』を除く四つの属性、『土』、『水』、『火』、『風』による組み合わせについては研究が進んでいて、融合できるかできないか、どういう変化があるかなど、一般的な知識として広まっていた。『命』にはどの属性も融合させることはできなかったが、神々から知識を得た今、できなくて当たり前だったと納得している。
しかし、この世界では属性の在り方が違う。だから、一から研究しなおしているところなのだ。この世界の研究成果は期待できないので、自分でやるしかない。
現在は、二つの属性の組み合わせは全部試し、三つの組み合わせを試しているところだ。上手くいったりいかなかったりだが、網羅的に全体を把握することを優先して進めている。現在までの結果として、二つの組み合わせを試したことで、属性同士の関係性が分かってきた。
まず、大きく二つに分けられる。『光』と『闇』、それ以外の六つ。『光』と『闇』は他の六つとは全て融合できるが、融合しても性質が変化することがなく、六つの属性を強化、あるいは弱化することになる。そして、『光』と『闇』は融合させることができなかった。
他の六つの属性は、融合すると変化を生じさせ、新たな素因となる。このため、私はまず六つの素因の組み合わせについて、優先的に研究を進めた。その結果、見えてきたのが相性だ。相性の良い互いを生かす関係性、逆に相性の悪い互いを殺してしまう関係性。これらの関係性は前世でもあったもので、前者は『相生』、後者は『相克』と呼ばれていた。
そして、属性の系統、『光』に属するものと、『闇』に属するもの。これは、神々とも関連がある。相生、相克関係にあるものは、全て異なる系統同士の組み合わせだった。同系統の相性は、可もなく不可もなく、といった感じ。
現在のところ、相克関係にある組み合わせは融合できていない。何か条件があるか、単純に難易度が高いか。あるいは、融合できないか。さらなる精査が必要だ。
『光』の系統に属するのは、『火』、『金』、『風』。『光』で強化、『闇』で弱化。
『闇』の系統に属するのは、『木』、『土』、『水』。『闇』で強化、『光』で弱化。
『木』は、『風』、『火』と相生関係にあり、『金』と相克する。
『火』は、『木』、『土』と相生関係にあり、『水』と相克する。
『土』は、『火』、『金』と相生関係にあり、『風』と相克する。
『金』は、『土』、『水』と相生関係にあり、『木』と相克する。
『水』は、『金』、『風』と相生関係にあり、『火』と相克する。
『風』は、『水』、『木』と相生関係にあり、『土』と相克する。
これらを図にしたのが、家族に教える時に木の板に書いたものだ。融合を教えるのはまだ早いが、書いておけば自分の覚え書きにもなる。
『光』以外の光系、『火』、『風』、『金』の三つを融合させることはできた。闇系も同じ。『闇』以外の三つ、『木』、『土』、『水』は融合できる。
しかし、『光』と『闇』を含む組み合わせは成功しなかった。『光』や『闇』を入れても、それ以外の二つが先に融合してしまい、『光』と『闇』が出来上がった素因に吸収されてしまう。今回の『雷』の場合だと、『火』と『風』が融合して『熱』になり、そこに『光』が取り込まれる。これだと『熱』を『光』で強化する形になるはずなのだが……
素因の強さを完全に同じにしないと駄目とか? うーん……その程度のことはやったはずだが……
「ミオ、おい、考え込んでないで、これ、どうすればいい?」
「……ああ、ごめん。ちょっと思考の沼に……安定してる、よね。なら、とりあえず大丈夫。私も色々試したんだけど、これは初めて見たわ。ヴィム、これ、一旦消して、もう一回できるか、やってもらってもいい?」
新たな成果は、再現できてこそ意味がある。
「いいけど、ミオはやらないのか?」
「後でやってみるけど、まずは、条件をできるだけ変えたくないの。いい?」
「分かった」
同条件でなければ再現しない可能性が高い。私はこの組み合わせで失敗しているのだから、ヴィムに何らかの原因があることも考えられる。
ヴィムが再び『光』と『火』、『風』の素因を作り出す。
「ヴィム、『光』をもうちょっと抑えられる? あと、『風』をもう少し強く」
三つの素因の強さを調整していく。さっきは、ちょうど同じ強さになっているように見えた。
「これくらいか?」
「うん。さて、どうなる――」
先程と素因の強さ、魔力量は同じ。ヴィムの手の上で、三つが等間隔に並び……
――バチッ
よし、始まった。再び『雷』が生み出されていく。
「おお、またバチバチ言ってる」
「大丈夫そうね」
同じように弾けながら収束していき……
――バチッ
「できたな」
ヴィムの手の上に、再び『雷』が浮いている。
再現できた。ひとまず、ヴィムが『雷』を作れるのは確定だ。
「あとは、私か。ヴィム、ちょっと『雷』の練習か、他の素因の練習しててくれる? 私も『雷』やってみる」
「分かった。もうちょっとコレやってる」
ヴィムは『雷』の練習を始める。消して、出して、融合。その繰り返しだ。
私もやるか。集中力を高めるために、始句を紡ぐ。
【アドウェル】
以前は失敗した。だが、「失敗した」という事実を自分の中で消す。前の結果に縛られては、成功する想像ができない。この辺は自己暗示だ。
『光』と『火』、『風』を同等に。素因をゆっくり近づける。む、この反応は……やはり『熱』。先に『火』と『風』が反応を始めてしまう。やり直し。素因の魔力量を、もっと厳密に均等に。寸分の狂いも無く。またゆっくり近づけ……駄目か。やはり『熱』が先にできてしまう。
ヴィムの時は……ヴィムがやっている、という以外に何かあるか? ヴィムと私の違いは、『熱』を知っていたかどうか、か。『熱』は以前の世界でも使えた複合属性だ。私にとって印象が強い。この事実を自分の中で極限まで薄くする。
自己暗示は、術士にとって必須の技能だ。基礎段階を終えれば、それぞれの素因をもっと複雑に変化させる段階に進むのだが、この時に自己暗示をかける。呪文という自身に強い自己暗示をかけるための文言を使って。それでより複雑な変化を素因に与えるのだ。
それを応用して、自分の中の『熱』の印象を操作する。
これで、どうだ? ……やはり『熱』になる。これ以上は難しいか。『熱』を知らない家族で実験してみよう。そうしよう。優秀な生徒が多いのは素晴らしい。
「どう? 慣れてきた?」
「ああ、大分。ミオは?」
「ダメだった。今度家族で実験してみるけど、それでもできないようなら『雷』はヴィムの固有能力ってことになるかな」
そういうことになる。かなり希少な事例だが、そういった資質を持つ者も中にはいる。既存の法則を無視する、超法則的な存在。固有能力者。
私はそういう資質には恵まれなかったので、既存の法則を駆使して地道に研究を進めてきた。
「固有?」
「そう。ヴィムにしかできないってこと」
あ、何か嬉しそう。自分にしかない才覚というのは、やはり優越感を感じるものなのだろう。
悔しくはないが。何の才覚にも恵まれなかったからといって、決して悔しくはないが。
「さて、今日はこのくらいかな。できれば、『金』にも慣れておいてね。全部使えるようにならないとだから」
「わかった。今度残りも練習させてくれ」
「もちろん。あ、あと、魔法教える条件なんだけど」
「え、まだあるのか?」
ちょっと警戒している。無茶なことは言わないって。
「報酬をいただくことになってる。お金だね」
「え……あんまり持ってないぞ」
知ってる。ヴィムの小遣い事情は大体分かっている。なので。
「今度、果物でも奢って。それで良いよ」
マリーと同じ扱いだ。
それに、とても希少な観察対象ができたのだ。今後を考えれば、私から払いたいくらいだ。
「分かった」
あからさまにほっとしている。本来どれくらい取られるか、教えたら卒倒するだろうな。
私たちは、今回も山菜をいっぱい採って家に戻る。少しずつ、初夏の彩が混ざってきているようだ。この時期にしか食べられないからな。旬のものは何でも美味しい。森は大好きだ。
その後は、家族やヴィムに魔法を教えつつ、自身の研究を進めた。『雷』については、やはり家族でもダメだった。レオナが光、火、風を扱えるようになった段階で試してみたのだが、できたのはやはり強化された『熱』だった。
これで、ヴィムの固有能力者説はほぼ確定。羨まし過ぎる。
私の研究は三つの素因による融合から、四つの段階に進んだ。
三つの融合は、結局『光』と『闇』それぞれ同系統の三つの素因による融合しか上手くいっていない。相克関係を含む融合は成功する見込みが全く無いし、それ以外も均衡がとれなくなり上手くいかない。『光』や『闇』を含むと、『雷』の時のように、先に二属性融合が起こり、そこに『光』や『闇』が吸収される。ちなみに、同系統三属性融合した素因を『光』や『闇』で強化、弱化することはできた。
四つの融合についても、同系統の四属性を融合する組み合わせはできそうだが、それ以外の組み合わせはできそうにない。三つの時と同じく、相克関係によるものと、均衡がとれずに成功しないもの。現時点で打開策はない。要研究だ。
なお、同系統三属性融合した素因同士は融合できそうな感じがある。それができれば、『光』と『闇』以外の六つの属性全てを網羅することになる。まだ成功していないが、結果が楽しみだ。
家族とヴィムは、全員全ての素因を同時に出すことに成功。この世界の常識が誤りであることを証明した。得手不得手はあっても、不可能ではないのだ。
全員が全て出せるようになってから、この世界の常識、複数の素因を出すのが難しいらしい、ということを伝えると、皆びっくりしていた。そんなに難しくないのに、と。各素因を出せるようになってしまえば、それほど難しいことではない。前世では当たり前だった。
だが、この世界の常識ではない。だから、この件については他言無用と釘を刺しておいた。他の魔法を使える人の前では、素因を複数扱うのはやめるように、と。ヨアキムの事もある。無用な軋轢を産む必要はない。特別なモノは排斥されがちなのだ。




