表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

第10話


残念ながら、今日舞台の幕が上がったばかりのため、控え室は貸し切り状態です。

定員は30名様なんですよ。


「よかったですね。入居が昨日でしたら、今ごろ投擲の的でしたよ」

「「良くない!」」

「でしたら、今から追加公演を始めましょうか?」


真っ青な表情で首を左右に振る2人。

この2人は私に「夫と別れろ!」と脅してきた、王弟()()()()()と貴族子息()()()()()です。


この人たち、元皇子を婿にもらった私に「元皇子を棄てろ」と言ったのよね。

それで夫と義父が乗り込んだんだけど…………


「そういえば、この人たちが国を滅ぼした張本人よね。やっぱり追加公演を申請してこようかしら」

「止めてくれ!」

「誰もが三ヶ月も待ちたくはない(生かしたくはない)と思うわ」


申請は受理されたけど……


「残念だわ。サプライズ公演の準備にひと月も待たなきゃならなかったなんて」


新しいステージを作るのに時間が必要だったのです。

その間に共演者が集まったとのこと。

…………私は出演者たちに激励(お別れ)を言うことも許されず。

ただ彼らのおかげで母国を失った人たちには大好評だったようで、舞台に上がる前から()()()()が多く飛んできたと新聞に載っていました。


「みたかったわ~」


最後まで見届けたかった。

自らの手で国を滅ぼした、愚かな彼らが最後に何を思って。


「一緒の舞台に上げられたほかの王族たちに何て詫びたのか。……それとも、詫びることなく開き直っていたのか」


「仕方がないさ。……いまは大事な時期なんだから」

「だからって……皇宮(しろ)に軟禁します?」

両親(あの人たち)にとっては初孫だからねー」


そう、私のお腹には新しい生命。

私たちの家に毎日義父が義母と来ては何時間もいる。

途中で皇城に連れ戻されても、また抜け出してくる。

しまいには連れ戻すのを諦めて、仕事が文官と共にやって来た。


「分かってるのよ。親がいない初産の私を心配してくれているのは」


高齢の祖父母に来てもらいたくても、途中でやってくるには厳しい冬。

だから暖かくなってから来るとは聞いているけど。


「それまではそばにいたいんだよ」

「……愛されているわね」

「ああ、この子も。マーガレットも」

「もちろん、あなたのこともね」



春の訪れとともに、我が家にも新しい春がやって来ます。





(了)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ