【第56話】城内観光と、新感覚に惑う私
大変、大変お久しぶりです!
やっと続きの投稿になります。
お待ちいただいていた方、申し訳ありませんでした!
セレスト王子の冗談が巻き起こした大混乱は、ハハハ…ふふふふ…と、何とも言えない笑いでお互い流してことなきを得た。
……得たのか?
もうそれ以上どうしていいか分からなかったとも言う。
その後、お兄様と王子の普段の様子を二人が話してくれていたのだけれど、話を聞いている私の様子を、王子がそっと観察しているような気配を感じて、内心微妙に気まずい時間を過ごした。
「さて、アメリア嬢は初めての登城だったね?良かったら少し城内を見てから帰らないかい?」
「まぁ!よろしいのですか?!」
お城背景のお兄様をゆっくり見られていなくて、消化不良だった私は、先ほどまでの気まずさを放り出して王子の提案に飛びついた。
「もちろん。城勤めの者以外が城内へ入る事は、ユリシスのような例を除けば、あまり多くはないからね。この機会に案内するよ」
(サービス精神旺盛か!)
ニッコリと笑顔で観光案内をかって出てくれたセレスト王子に、せっかくなので甘える事にしよう!
「ありがとう存じます!では、お言葉に甘えさせていただいきますわ!」
「殿下、有難うございます。アメリア、貴重な機会を頂けて良かったね」
「はいっ」
カツーンカツーンと足音を天井に響かせて、セレスト王子が城内を先導する。
私とお兄様、そして最後尾に侍従のノイマン氏を引き連れた城内観光御一行である。
王子はどうやら、私の歩行速度に気を配りつつ歩いて下さっているようで、とても歩きやすい。
王族って常に気を遣われる側を当たり前に享受していそうな先入観があったけど、案外違うのかも知れない。
不敬罪にビクビクしたり、偉い方々だから絶対服従しなきゃって、小市民根性出しちゃってたけれど、勝手な思い込みはよく無かったね、うん。
申し訳ない。
今日のセレスト王子とのお茶会は、気まずい場面はあったけれど、王子自身はずっとおおらかだったんだよね。
(ありがとう王子!)
王族教育の賜物か、王子個人の人間性かはわからないけど、王族の好感度が上がった私である。
「これから行くのは、歴代国王の肖像画が飾られている所だよ」
「まぁ!それはとても興味がありますっ!」
「ふふふ、そうかなと思った。ユリシスを王族の肖像画のように描いたと聞いたからね。本物を見ていきなよ」
(ありがてえええ!お兄様のファンアートが捗ります!!って、王子あなた、何でも知ってんな…)
「ぜひ参考にさせて頂きたいですわ!」
情報通すぎる王子に慄きながらも、ウキウキが止まらない私を、お兄様が「良かったね」な優しい笑顔で見つめてくれて、ほっこり。
私もニッコリ。
「さぁ、ここだよ。奥から手前に向けて近代になっていくから、一番奥から見ようか」
王子が扉の前に立つ寸前に、いつのまにやらノイマン氏が扉の前に待機していた。
いつ追い抜いたのか…流石城の侍従、出来るっ!!
ゆっくりと開け放たれた、両開きの大きな扉の向こうには、厳かな雰囲気の縦長の大広間が広がっていた。
絵を傷めないためか、少し薄暗く、柔らかなシャンデリアの光で明かりをとってあった。
「わぁ……」
煌びやかとはまた違う、王城ならではの威厳を感じる様な雰囲気に、思わず声が漏れる。
あまり人目がないのをいい事に、キョロキョロしながら歩いて、奥までたどり着いた。
「こちらが初代国王だね」
「…えっ…??!」
「……これは…」
私とお兄様は思わず驚きの声を上げてしまった。
なぜなら、王子の指し示した初代国王の肖像画が、あまりにも予想外だったからだ。
(え、どゆこと?!)
「驚いた?まぁ国民全員が知っている様な事ではないからね。ごく一部の高官くらいしか、ここに入る事は無いのじゃないかな?」
「「…えっ」」
「よろしいのですか?!僕達が見ても…」
思ったよりも、知る人ぞ知る!なものを見せられたことを理解して思わず焦ってしまう。
「いいさ、僕が案内したんだから、誰も咎めはしないよ。何となく2人には知ってもらっても良いかなって思ったんだよね」
「「………」」
思わずお兄様と二人して口を引き結んで無言になってしまう。
それも仕方がないだろう。
ーーーだって、初代国王様は、セレスト王子にそっくりだったのだから。
セレスト王子にそっくりだという事は、つまり私の目から見て、めちゃくちゃイケメンだと言う事である。
「まぁ、公然の秘密というか、特に大っぴらにしていないだけで、事実は事実だからね。そんなに緊張しなくて大丈夫」
「「…はぁ…」」
何でもないかの様に言いつつも、王子の笑顔は少しうっそりとした微笑みだったから、あまり口にしない方が良さそうだ。
「セレスト殿下にそっくりですわ…」
「そうだね。…さて、どんどん行こう」
隣の二代目国王も三代目国王も、セレスト王子と似ている。
髪色や瞳の色は違うけれど、しっかりと、セレスト王子の面影がある。
(歴代イケメン国王陛下、万歳!!)
「「…えっ?!!」」
四代目国王の肖像画を前に、またしてもお兄様と二人、驚いて声を上げてしまった。
唐突に、いわゆるコチラの世界のイケメン国王に変わったのだ。
急にパンパンさんな国王になった。
思わず心の中の万歳の手がおりる、現金な私。
(まぁでも、継承者がたまたまふくよかだって事も、普通に有るか…)
「ふふふっ。驚いちゃうよね?初代様から三代目まで醜い容姿だったのが、四代目で突然美しい国王が継承しているんだ」
普通に流そうと思い始めたところで、王子が意味深そうに話し始めた。
「これには諸説あるけれど、王族の歴史の中でも謎なんだよね。血が途絶えて無いのだけは確かだけれど」
なんだか、たまたまでは無い様な物言いである。
「…それはそうですわね。セレスト殿下と初代国王様はそっくりですもの!」
「うん。…三代目まではアメリア嬢がキラキラした目で見ていたのに、四代目でガッカリしてたのが面白かったよね」
…がっつりバレてました。
「お、おほほほ!……申し訳ございません…」
「アメリアったら…」
お兄様に残念なものを見る目で見られて居た堪れない。
趣味嗜好がバレているとは言え、顔に出過ぎてしまったようだ…反省。
「僕からしたら、良い反応だから気にしないで」
(…確かに、王子に似ていない国王になってからガッカリしたけども!)
分かってるって!と言わんばかりのしたり顔を向けて来る王子を見ると、絶妙に悔しいような…何だろうな?!
「……以後気をつけますわ」
でも流石に王族相手に気を抜きすぎた感は否めないので、お詫びする。
しかし何だろう?イケメン無罪?!
”私にとっては自分はイケメンだ“ということを自覚し始めたらしい王子の言動が、普通は嫌味に思えてもおかしくないのに…何故か憎めない!
ちょっとかわいいの、なんなん?!
それから五代目国王へと移り、入り口付近まで歴代国王の肖像画を順に追ったけれど、四代目以降は全て異世界仕様のイケメンだった。
それはもうあらゆるタイプのふくよかさんが、ずらりと並んでいらっしゃいましたよ。
(なぜにイケメン国王の流れが完全に途絶えたままに?!)
現国王様が十三代目らしいのだけど、彼もまたパンパンさんである。
数百年前に何があったんだろうか?
ふくよか国王と私好みのイケメン国王が、たまに変わったりすれば普通かなと思うのだけど、三代目より後には“一切”私的イケメン国王は居なかった。
何か転換期が有ったとしか思えないよね…
「驚いただろうけど、楽しんで貰えたかな?」
「え、ええ!勿論ですわ。どの方もとても威厳がお有りで、国王様の肖像画と言っても、時代が移り変わるごとに、少しずつ研鑽が積まれている様に思われましたわ!」
本当にそう言う意味で勉強になった。
絵の具の質が良くなって行くとか、少し新しい表現が使われてみたりだとか、敢えて技法を蘇らせたのかな?なんて時代があったりだとか、実は色々と目に楽しかったのだ。
「へぇ…。凄いね、思ったよりも作品として鑑賞しているんだね!……それで?」
「…はい?」
「何代目が一番気に入った?」
「…しょ、初代様ですね……」
ニッコリと謎の圧すら感じる笑顔での質問に、答えを絞り出す。
「ふふふ」
「殿下…」
(ちくしょう!)
ちょっと嬉しさの滲んだドヤ顔王子に、流石のお兄様も若干呆れ顔である。
私も微妙な笑顔を貼り付けながら、今日の新たな出会いを反芻する。
イケメンを褒める事は、私にとって喜びでしかなかったはずが、何故か王子の時は少し悔しくなってしまうという新感覚を…
存外ゆっくり見てしまったので時間が迫り、結局肖像画の間での鑑賞のみで、城内観光は終了となった。
それでも行き来する間の風景がとても素敵だったので、大満足である。
(なんせ、本物のイケメン国王陛下の肖像画も見られたしねっ!)
ーー数百年前に急に流れが変わったという、少しの謎を心の奥にしまい込んで、セレスト王子との新たな出会いを終えた私は帰途についたのだった。
お読みいただき有難うございます!
久しぶりすぎて、どこかぶれてしまっていないか不安しか無いですが、今後も更新できたらなと思います。




