【第52話】私のお兄様はチートだけど
お待たせしました( ˘ω˘ )
明日午前1時から19時までは、なろうがメンテの為ログインできない仕様だそうなので、書くことが出来ず、一日空いてしまうかもしれません。
お兄様の今後と聞いて、戦々恐々とする私。
お父様とお母様も鎮痛な面持ちで、大司教の話を聞く。
「まずはカイン・マルセールの状態から話そう」
ゴクリ……
法律を鑑みると、ギリギリアウトかセーフか本当に怪しいのだ。
もし、人間に魔法で害をなしたと判断されたら、お兄様は継承権の剥奪と強制労働だ……。
そんなのは絶対に嫌だ。
「本人は魔力が感じられぬと言っておったが、魔力検査では、魔力が無くなった訳では無かった。持ってはいるのだが、引き出せず…使うことができぬ…という状態であった。やはり、剥奪ではなく、封印という事であろうな……」
(やっぱりそうだよねぇ…)
神から授けられたものを引っぺがせたら、それこそ神の所業だ。
まぁ神から授かってるのが事実だったとして…の話だけど。
「封印…ですか…。大司教様、私どもは神聖魔法に詳しくありません。よろしければ、お教え願えませんか?」
「うむ。話しておこうか」
大司教は先に説明をしてくれた。
神聖という魔法特性を持った人間は、今までもいたが、ごく僅かな例しかいない事。
そして、今まで文献などに残っているそれらの人々は、高くとも魔力量が5までしか確認できていないらしい。
治癒の血筋に現れ、魔力量が多いほど、出来る事が多かったのだとか。
魔法がイメージによるところが大きなせいか、“神聖”と名付ける他ないほどに、それぞれ違う魔法を見せてきたが、全ての人に共通していた事があったそうだ。
そしてそれこそが、“神聖”と名付けられた一番の由来だそうで、“人を害する攻撃魔法は使えない”という事だった。
出来る事は多様だが、無限では無いというのが神聖特性の特徴だった。
(……つまり?)
「魔力量9の神聖特性などと、前例がなく信じがたいことだが、魔力の色と特徴は、完全に神聖特性を表しておる。つまり、ユリシス・ハワードは、魔法によって人に直接危害を加えることが不可能だという事だ……」
(……なるほど?!って事は?!!!!)
「その事実から、ユリシス・ハワードが、魔法で人間に危害を加えたという事が、立証できぬ……。実際に、カイン・マルセールの体調に変化もなく、怪我もない。魔力も無くなってはいない。……ただ、使えなくなってしまったがな…」
「で、では……法律では裁かれないという事でしょうか?」
恐る恐る確認するお父様に、何とも渋い顔で大司教が答える。
「現状では、そうだ。……だが、攻撃魔法で無くとも、魔法を封じられる事は、全く害がない事とは言い難い。今回は、防衛手段としてと捉えるとしても、封印などという大きな力を無闇に振るわせるわけにもゆかぬ」
「……はい。ごもっともですな……」
(……そ、それは……そうか……。人生が狂うレベルだよね)
「ゆえに、ユリシス・ハワード。お主には、刑罰は下らぬだろうが、神殿や王城からの監察や、調べを受けてもらう事にはなるであろう。……そしてもう一つ。今この時より、封印の魔法を、神殿と王、双方からの許可なく使う事を禁ずる」
「…はっ。承知いたしました」
「うむ…」
(禁術キターーー!!響き的には大好物ですよ!!)
お兄様も、魔法封印など、今後使いたいはずもないだろう。
実質お咎めなしに近い!
監察や調べも、監禁とかでは無いだろうし、神聖魔法の調査という意味合いの方が強いのでは無いだろうか。
監禁なら、そうだと言うはずだ。
(ヒャッホーー!!お兄様、勝訴!!無罪です!!)
神殿と王城から、お兄様に呼び出しが来るのは避けられなくとも、犯罪者にならなかったことが大きい。
そして、神殿に隔離されるなどの、家から引き離される決定でも無かった。
お兄様は、これからもハワード家で暮らしていけるのだ。
私の為に怒ったことで、お兄様がどこかへ行ってしまうなんて、生きていけなくなるところだった……。
「ユリシス……良かった……。結局失ってしまうのかと、気が気ではなかったよ。今後は神殿と王城の指示に、しっかりと従いなさい」
「はい。申し訳ありませんでした」
「ユリシス。貴方を手放す事にならなくて、本当に良かった。心配したわ……。それに、貴方が居なくては、アメリアが生きていけないなんて騒ぐところだったわ……。きっとそうよ、この子は…」
「……ご心配をおかけしました…」
重苦しい表情をしていたお兄様の顔が、少しだけ解れた。
(お母様ってエスパーなの?!え、なんで分かったんだろ?)
「お兄様!本当ですよ!!お母様の言った通りのことを考えていましたからね!!もう罰を受けてもいいなんて、言わないで下さいませっ!」
「うん、分かった。ごめんね、アメリア…」
そして、やっとあの事件後初めて、お兄様が少しだけ微笑んだ。
「水を差すようですまぬが、ユリシス・ハワードに聞きたいことがある」
「はい。何でしょうか?」
「お主、もしや神の声が聞こえているか?」
(……ふぁっ?!)
「……え?……聞こえていないと思います。比喩などでは無く、声が聞こえているか…という質問でしたら」
「比喩では無いな。……そうか、では神の愛し子ではない…と言うことだな」
(んんんんん???)
「「「神の愛し子…ですか?」」」
お父様とお母様とお兄様が息ぴったりである。
私は荒ぶる中二病を抑える事に必死で無言だ。
「そう呼ばれる存在が歴史上、実在するのだ。神の声をまさに声として聞いてきた、神に愛された人間が」
(でっ、てたあああっ!ファンタジー名物!神の愛し子!!)
「僕は違いますが、そのような方が居たのですね……」
お兄様なら、神の愛し子もあり得ると思ったが、それは違ったようだ。
嘘をついている雰囲気も無い。
「うむ。封印もそうだが、今回の治癒では、肉や骨にとどまらず、毛髪まで再生したと言うでは無いか……。そのような治癒は、もはや神の御業と言ってもいい。治癒の範囲を逸脱しておる。それゆえ、聞いてみたのだ」
「なるほど……。あれはアメリアを元に戻したいという一心だったのです。今後も出来るかは分かりません」
「左様か……。では、今日は恐ろしい目にも遭って疲れたであろう。皆で帰ってゆっくり休むと良い」
先程までの威圧感が霧散した表情で、帰っても良いとお許しを出してくれる大司教。
「大司教様、本日は大変お世話になりました。今後もユリシスをよろしくお願い致します。……それでは失礼致します」
「うむ。気をつけてな」
お父様が深々と頭を下げると、大司教は別れを告げて、先に部屋を出て行った。
(あぁ……お兄様も一緒に、皆で帰れるんだ……)
お兄様の洗礼が波乱すぎた。
ホッとしたら、力が抜けた。
いくら中身が25歳だったとしても、ここまで色々あると、精神的な疲労感がすごい。
その上身体は6歳なので、身体的疲労も限界を超えていた。
ぐってりと腰の力が抜けて猫背になっていると、お兄様が私の前の床に膝をついて、こちらに両腕を広げた。
(も、もしや……!!?)
「おいで、アメリア。疲れたよね?抱いていくよ」
(んああああああっ!!!抱っこキタアアアーーーーー!!)
「あ、ありがとうございましゅ!お願いしゅます!!」
ビックリするほど噛みながらお言葉に甘えると、お兄様は頬を色付かせて、フルフルと笑うのを堪えているようだった。
「っふふっ」
結局笑われた。
そんな私とお兄様を、お父様達は微笑ましく見守ってくれて居たが、私はお兄様に釘付けなのだった。
愛し子でなんか無くて良かったのかもしれない。
だって、愛し子なんかだった日には、お兄様は神殿にお引越しさせられてたかもしれないのだから。
ファンタジー定番の聖女や聖人は、神殿に囲われるって相場が決まっている!
だから、チートなイケメンお兄様で、十分である!
チートなんか無くたって、この腕の中の天国にいるだけで幸せだ。
(……それにしても、このいい匂いって何なんだろう?本当にいい匂いなんだけど…?!人間じゃ無いとか??)
割と酷いことを考えながらお兄様を堪能する。
お兄様に抱かれているのをいいことに、首に抱きついてスリスリ…からのスンスン。
「ア、アメリア……く、くすぐったいからね、それ…、あんまりしないでっ……」
(ヴァアアアアアアアア!!)
真っ赤になったお兄様の困り顔に、萌えすぎてハゲ散らかすかと思った。
せっかく再生して貰ったプラチナブロンドのサラ艶ヘアーを、もう一度散らすところだった……。
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