【第53話】私、萎びてしまいます
大変長らくお待たせいたしました( ˘ω˘ )
お兄様は神殿での発現の洗礼の後、神殿へ王城へと何度も呼び出され、とても忙しくなってしまった。
屋敷に居ない日が増えたので、お兄様に会えない日も多くなってつらい。
そんなお兄様不在の日々で、暇人な私の淑女教育は捗っていた。
カインには本当に刑罰が下り、辺境の神殿で強制奉仕をさせられているそうだ。
流石に子供に重労働は課されず、神殿での下働きになったようだが、今まで傅かれるのが当たり前だった公爵家子息にとっては、かなり辛いのではないだろうか。
マルセール公爵家は爵位が二段階降下のマルセール伯爵家となった。
財産剥奪もされているので、伯爵家とは言えかなり厳しい財政状況らしい。
財産剥奪には、報復を防ぐ意図もあるそうだが、確かに金に糸目をつけずハワード家への報復を企めないと言うのは、かなり報復の抑止になるだろう。
酷い目にはあったが、関わりたくない家No. 1のマルセール家とは、このまま縁もなくなりそうで良かった。
それにしても、である。
お兄様が毎日のように屋敷を離れるので、イケメンの供給不足が酷い。
その鬱憤をぶつけるかのように、文字の習得に躍起になり、教養に礼儀作法も時間を増やして学んでいたが、そろそろ萎びてしまいそうだ……。
お兄様が城に行くようになって、剣の稽古も城で済ませてきてしまう事もあり、ウェイバー卿が我が家に来る機会も減ってしまった。
(私も王城に行きたい……そして王城背景のお兄様を見たい!剣術の稽古も見たい!)
今日も今日とて午後の礼儀作法の授業を受けながら、イケメン不足を嘆いていた。
「アメリア様は本当に飲み込みが早くてらっしゃいますわね!教え甲斐がありますわ……これでは、私のお役御免もすぐですわね」
「恐縮ですわ、メルトス夫人。ですが、まだまだ教えていただきたい事ばかりですわ」
私に上位貴族の作法を教えてくれるのは、お母様の学園時代の先輩だった、メルトス伯爵夫人である。
彼女自身も忙しいだろうに、お母様が私の家庭教師を探していると聞いて、是非自分に任せて欲しいといって、来てくれる事になったのだ。
学園時代にお母様に治癒をしてもらった事を、恩に感じての事らしい。
お陰様で、家庭教師にいじめられるなどという事もなく、夫人は姪に接するかのように、優しくしてくれる。
懇切丁寧な説明やお手本をしてくれるし、質問をしても、嫌な顔ひとつせずに答えて貰えるので、とてもいい先生に師事する事ができて、ありがたい。
お母様には感謝しかない。
「……最近アメリア様はお元気が有りませんわね?ここ数日は笑顔も減ってしまって……心が痛みますわ。……ユリシス様がお忙しくて、寂しく感じていらっしゃるのかしら…?」
「はい……。晩餐ではお会いできますが、午後にゆっくりお会いできる時が減ってしまって……」
「……そうですわね。いくらアメリア様のお作法に問題ないとは言え、王城には招待なく上がることはできませんものね…。ご一緒出来ず、お屋敷でお帰りを待つしか無いのは、幼いアメリア様にはお寂しい事ですわよね……」
「……はい。夫人にまでご心配をお掛けして、申し訳ございませんわ」
イケメン供給不足で萎びているのを、夫人に見抜かれてしまっていたらしい。
実際には少し違うが、25歳にもなって、兄に会えなくて寂しがって元気がないという、残念な理由で心配を掛けてしまった。
私の原動力はイケメンなのだ。
勉強に時間を割く事で誤魔化してはいたが、人生一番の楽しみが減ったのだ。
テンションだだ下がりなのは、仕方がないのである。
お兄様に会える貴重な時間である晩餐だけが、ここ最近の私の元気の源だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その貴重な晩餐の時、お兄様から一通の招待状を受け取った。
「これは……?」
「王城からの招待状だよ。第三王子がアメリアに会ってみたいそうだよ。僕と一緒に来て欲しいって」
「……だ、第三王子様…がですか?」
「そうか……。アメリアにご興味をお持ちになられたか…」
「アメリアにとっては……いい事なのかしら……?」
なんだかお父様の言い方に不安を覚える。
お母様は何やら、判断に迷って居る様子だ。
(第三王子って、本物の王子様ってことよね?!……なんで私?!)
「城に呼ばれて聴取を受けていたんだけど、通う間に、歳が近いのでと言って第三王子を紹介されたんだ。それから第三王子には懇意にして頂いているのだけどね、殿下は僕を庇ったアメリアにご興味がお有りのようなんだ……」
「な…なるほど?」
説明してくれているお兄様自身の表情が、あまり乗り気で無いのが気になった。
「お兄様はあまり乗り気では無いのですか?私はお兄様とご一緒出来るなら嬉しいのですが……」
「うーん……。正直いうと、第三王子がアメリアにご興味を示されるのは、困った事になるのでは無いかな…とは思っているよ…」
(……は!!そうか、興味って事はもしや……)
中身はさておき、見た目は美幼女なのだ…婚約とかそう言う意味でも興味を持たれたりしたら、確かに面倒な事になりそうだ。
イケメンとの恋愛結婚の未来の為にも、王子様との謁見は、穏便かつ大した印象を残さずに、終わらせなければならない。
また面倒な出会いが有るのかと、憂鬱になってきた。
勿論王族ともなると下手な手は打てないので、公爵家よりも手強いだろう。
最悪、回避不可能かも知れない。
(最悪だぁ……!イケメンウォッチングライフがどんどん遠のいてないか?!最近……)
「だけど、王城からの招待を断ることもできないからね…。アメリア、粗相の無いように……頑張るんだよ?」
「……承知しました。メルトス夫人にもお作法は問題ないとお墨付きを頂いておりますので、さらっとご挨拶して、さしたる印象にも残らないように帰ればよいのですよね?!」
「そ、そうだね。ほ、本当に頼んだよ、アメリア……」
「心配だわ…」
「う、うむ…」
(なんだこの家族の反応は?!25歳が全力で挑んでも無理なくらい王城ってヤバイの?!)
私の精神年齢が25歳な事を家族は知らないが、礼儀作法がかなり身についている事は知っているはずだ。
それでもこんなに心配するなんて、王城は魔境なのだろうか?
お兄様はそんな所に召喚されていたのかと思うと、今更心配になる。
「そ、そんなに王城とは恐ろしい所なのですか?!お兄様は、お城でいじめられて居るのではありませんか?!」
「…アメリア、大丈夫。王族は見目に対しても、かなり理性的な方々だから、いじめられてなんかいないよ」
(じゃぁ、何がそんなに心配なんだーー!こ、こわい!)
「そ、そうですか?……とにかく、粗相の無いよう気をつければ…良いのですね?」
「…うん。僕も一緒にいるから、フォローはするからね。頑張ろう」
「…はい!」
「頼んだわよ、ユリシス」
お母様も心配そうに言うので、何かある事は確かだろう。
(なんか不安しかないんだけど……第三王子がヤバイ人とかそういうこと?)
とにかく粗相を心配されていたので、メルトス夫人にも王城へ登る事を話して、王城でのお作法を重点的に見てもらう事にした。
メルトス夫人は、「王城へのお呼ばれだなんて光栄ですわね」と喜んでくれたし、みっちりお作法を教えてくれた。
だけど、家族のような心配をしてはいなかった。
(お兄様達は、何をそんなに不安がってたんだ……?やっぱ私と一緒で、権力での無理矢理な婚約を心配してなのかな……?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、王城へ行く当日になった。
私の今日の装いは、侯爵家の令嬢らしい高級感はあるが、家臣としての控えめな雰囲気も持たせた薄紫色のドレスだ。
今日は、パーティーというわけでもないので、お兄様とのお揃いは控えたのだ。
私を引き立てる色をお母様が選び、コーディネートしてくれた。
お兄様は、いつもお城に上がる時の正装で、落ち着いたグレーのモーニングコートを来ていた。
長い丈のジャケットも似合っていて素敵だ。
(やっぱり、細身のイケメンの正装は最高だなっ!)
ニマニマしながら、お兄様にエスコートされて馬車に乗り込む。
お兄様の隣に座り、薄紫とグレーで二人並ぶと色味が合うなと大きく頷く。
流石はセンスの塊のお母様だ。
「それじゃぁ、行ってらっしゃい。二人とも頑張るのよ」
「「はい。行って参ります」」
お母様に見送られて、私とお兄様、アニーとレイモンドを乗せた馬車は王城へ向かって走り出した。
アニー達は馬車の中で待機にはなるが、着いてきてくれるのだ。
お兄様は馬車の中でも「うーん、不敬になってでも先に言っておくべきなのか…」とウンウン唸っていたが、聞いてみても、「アメリアなら大丈夫だよね」というだけで、教えてはくれなかった。
そして私は、なぜ粗相を心配されたのかを、思い知る事になるのだった。
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