援軍
「うわぁあああ」
バキバキバキと木々の枝を折りながらロイドの乗ったTBは森の中に突っ込んだ。
激しい揺れと衝撃がコクピットを襲い・・・そして
ズ、ズン・・・・。
最後に何かにぶつかるようにして止まった。
「かはっ、」
最後の衝撃で肺の中の空気が搾り出される。
「う、くっ、うすぅうー、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
空気を求め、なんとか息を吸い込む。激しく頭が揺さぶられたためか、意識が朦朧とする。
モニターをかすんだ目で見ると、高度計が0を表示しているのを確認することが出来た。
あの状況に関わらず、どうやら命拾いしたらしい。
まだ頭がはっきりしないのか、ビービーと鳴る機体の損傷を知らせるアラートが遠くに聞こえる。
モニターを見ると駆動部のいたるところが赤くなっていて、TBを動かすことは見るからに絶望的だった。
「なんでまた、生き残っちまったんだ。」
頭をシートに預け、ぎゅっと目を閉じる。
かちゃり・・・・
ネックレスについた鳥の羽根のチャームと四角柱の水晶がこすれて音を立てた。
ロイドはそれをぎゅっと右手で握りめる。
「俺は何もかも失っちまった・・・お前達も・・・・帰る家も・・・・」
閉じたまぶたからあふれた涙が頬を伝わり握り締めたこぶしからはみ出た水晶に一滴、二滴と落ちる。
「おまけに、カタキすらも討ってやれないなんて・・・」
やるせない気持ちに、左手で作ったこぶしを振り上げ、自分の太ももにたたきつけた。
「親父。俺はあんたがのこしたもの何一つ守れなかった・・・守りたかったのに、何も出来なかった。
まだコロニーのみんなが戦っているっていうのに、このザマだ・・・俺はどうしたらいいんだ・・・。」
どうすることも出来ず、ロイドの心の中は悔しさと悲しみと虚しさであふれ、嗚咽を漏らして泣く。
「ちくしょう、ちくしょう」
・・・・・・・・・・
「あらあら、ロイド泣いてますの?」
「うわぁ、何、号泣してるんだよ!」
「泣き虫!」
きっと今の俺を見たら、マリアたちはこんな風に言うのだろうな・・・。
「泣いて悪いか、俺はお前達を守れなかったんだからな!」
虚空に向かって、ロイドは叫ぶ。
「守れなかった?何言ってんだよ、あたし達は無事だぞ!」
帰ってくるはずのない返事にロイドは驚いて目を開いた。
「あはは、ロイドの目、真っ赤!」
「ズボンのポケットにハンカチを入れておいたはずですから、ちゃんと拭いててくださいな。」
「ロイド、かっこ悪い」
「こ、この声は・・・マリア、レイ、それにソフィアなのか?今どこにいるんだ?」
するとコクピット内のスピーカーから、
「どこといわれましても・・・ロイドのジャケットをお洗濯していて、突然、ものすごい風が吹いて、
気がついたらロイドの泣き声が聞こえて、そういえばあたし達、どうしてロイドと一緒なのかしら?」
と、いつもどおりのおっとりとしたマリアの声が聞こえた。
「ネックレス・・・」
ソフィアの声にロイドは握り締めた手を開いてネックレスを見た。
すると、真ん中の水晶がぼんやりとブルー、オレンジ、ピンクと点滅していた。
「まlまさか、お前達この中に?」
「う~ん、よくわかんないんだけどね。そうっぽいよね、」
レイ達も良くわかっていないらしい。
「多分、お守り効いた。」
とソフィアがうれしそうに言った。
ロイドにも今起こっている出来事は信じられないものだった。
ドゴォーン
突然、空から爆発の音が響いてきた。
「く、」
おもわず手を挙げると、動くはずのないTBがガクンと動いた。
「これは・・・」
水晶を見ると、あのときのように強い光が灯っていた。
「ロイド、まだやれますか?」
とマリアが静かに聞いてきた。
「ああ、まだ良く理解できないんだけどな、お前達とまた会えて力が沸いてきたよ。」
すると、
「わかりました。わたし達も微力ながら一緒に戦いますわ。私は敵の動きと情報を、レイはロイドの操縦の手助けを、ソフィアはTBのシステム管理を!さぁ、行きますわよ!」
するとメインモニターに『SISTEM NORN』と表示された。
「各駆動系、フライユニットロケットエンジン、オールグリーン」
とソフィアの声。
「ロイドのバイタル確認・・・正常。モーションシステムおよびブレインシステムとの同調も良好っと」
と、レイ。
「う~んと、敵、上空に多数確認できますわ!」
相変わらずのマイペースでマリア。
「『SISTEM NORN』?! マリア、お前達は一体・・・・」
するとマリアはロイドに言った。
「女に秘密はつきものですわ!」
ロイドが上空に上がるとライから通信が入った。
「ロイド、無事だったのか?!」
「ああ、なんとかな」
「ったくよぉ、マジで悪運の強いやつだぜ。」
「ところで、ライ、戦況は?」
「一進一退って感じだな、ディノサウルの野郎、数が多すぎるぜ」
「わかった、俺もそっちに合流する。」
「あ、ロイド、弾の補給忘れんなよ、ボーンも今行ってるからよ。」
「わかった、ありがとう」
通信を終えるとロイドは
「ソフィア、ライフルの弾の残量は?」
「マガジンが5つ」
「そうか、まだいけるな、よし、巻き返すぞ!」
ロイドはディノサウルの群れにライフルを構え突っ込む。
「右から火球3つ来ますわ!」
マリアが警告する。
「あらよっと」
余裕を持って避けることが出来た。
「サンキュー、マリア」
「どういたしまして、次、左から4匹来ますわ。」
ダン、ダン、ダン、ダン
打ち抜かれたディノサウルが落ちていく。
「いい感じだ。」
今まで一人で戦ってきたときとは違う、知らないうちに口元に笑みが浮かんだ。
「ロイド、前後から来ますわ!」
「わかった」
ロイドは頭のサークレットでこれからやろうとするイメージをTBに伝える。
「レイ、どうだいけるか?」
「もちろん!」
まずは前から突っ込んできたディノサウルに向けてライフルを撃つ。
頭を打ち抜いたのを確認して、落ちかけるその体を踏み台にして体をひねった。
「レイ、まかした!」
ザシュ!
姿勢制御をレイに任せ、後ろから迫るディノサウルの首を、勢いに乗せて抜き放っただんびらの剣バスターで断ち切る。
「つぎはどいつだ!」
すると、
「ロイド、あれを見てくれ!」
ボーンの通信に、ロイドはテラメノムの背中から飛び立つ大きな影を見た。
「なんだ、あれもディノサウルなのか?」
姿はディノサウルだがその大きさは通常の3倍はあった。
そして、驚くスピードで飛翔し、TBを跳ね飛ばしていく。
ドォン、ドォン、ドォン
巨大な火球を口から打ち出し、飛空挺に迫る。
回避し損ねた飛空挺に火球が当たり、煙を上げて墜落していく。更にその墜落していく飛空挺に尾の一撃を加え、空中でばらばらにしてしまった。
「なんて強さなんだ・・・」
唖然とした声をライがあげる。
「各TBおよび飛空挺に告ぐ。我々はあの巨大なディノサウルをメガサウルと命名。あのメガサウルの対処を最優先にしてくれ!」
指揮官のマグナスからの通信が入った。
応戦も虚しく、次々に飛空挺がメガサウルの餌食になっていく。周りのTBが応戦するも、周りのディノサウルがそれを邪魔をしている。
「ライ、ボーン、俺たちも行くぞ!」
ロケットエンジンを噴かせ、一気にメガサウルに向かう。
ダン、ダン、ダン
ライフルを撃つが、その速さと周りにいるディノサウルに阻まれ、弾が命中しない。
「ロイド、右から5、左から4、ですわ、」
ライフルで必死に応戦するも、全部は捌ききれない。
「くそ、多すぎる。」
吐き出してくる火球を左肩のシールドでなんとかやり過ごす。
「ロイド、後ろ!」
しかし、ガードした直後でうまく反応できない。
「レイ!」
レイは何とか制御して振り返るが
「だめ、間に合わない!」
次の行動を起こすには時間がなさすぎた。
・・・やられる・・・・
と、目の前に迫ったディノサウルが突然炎に包まれた。
ギヤアゥウウウ
そのまま落ちていくディノサウルの上をさっと白い影が横切った。
ドン、ドン、ドン
周りにいたディノサウルが次々に炎に包まれ落ちていく。
グルルル
モニターに白い鱗に覆われたドラゴンが映し出された。
「フ、フリューレなのか?!」
外部スピカーで問いかけるロイドに、こくんとうなずく。
そしてここは任せろとばかりに、次々にディノサウルに火球を吐いていく。
「ロイド、ドラゴンが乱入してきたぞ!」
ボーンの声に
「ああ、でもどうやら狙いは俺達じゃないらしいな、どうする?ロイド!」
「ディノサウルの注意が向こうに向いているうちに、メガサウルをやるぞ!」
ライとボーンを促して、メガサウルに攻撃を仕掛ける。
ダン、ダン、ダン
ロイド、ライ、ボーンの三方向からメガサウルに向かってライフルを撃つ。
「くそ、あんなにでかいくせに、早すぎて当たらねぇ!」
ライの焦りの声が聞こえる。
「くそ、どうすれば・・・」
「翼を何とかできれば・・・。」
ボーンの声にロイドは。
「ライ、ボーン、俺の前でメガサウルを挟み撃ちしてくれるか?」
「いいけどよ、何か策があるのか?」
「ああ、俺を信じてくれ!」
「わかった、ロイドお前に任せる!」
そして、ロイドはイメージを頭のサークレット送る。
「レイ、できるか?」
「出来る、出来ないじゃないでしょ、ロイド、やるわよ!」
ロイドはガンドレットのなかの手を握り締め、そのときがくるのを待った。
「「ロイド!」」
ライとボーンの声と共に左右に挟み撃ちされたメガサウルが躍り出た。
「レイ、頼む!」
TBの手から、更に上に逃げようとするメガサウルの顔にタイミングよく手榴弾が投げつけられ、炸裂した。
ギャワォオン
突然の爆発に体制を崩すメガサウル。
「いまだ、くらえぇえ」
すでに肉迫してたロイドはバスターで、背中の翼を切り裂いた。
グギャォオオオオ
うめき声を上げながら、そのままメガサウルは墜落し地面に激突した。
「やったか?」
しかし、その巨体ゆえか、結構な高さか落ちたのにもかかわらず、ぐぐぐと巻き上がった砂煙の中から
体を起こす。
「今のうち畳み掛けるぞ!」
トドメを刺そうと地上のメガサウルに向かおうとしたときだった。
ザ、ザザー
まるで盾になるかのようにディノサウルの大群がメガサウルを包む。
「くそ、やばい」
バサ、バサ、バサ
どうやら翼の傷も浅かったようだ。再び飛び上がろうとする。
「だめだ、間にあわねぇ!」
立ちふさがるディノサウルの多さにライがたたらを踏む。
すると、上空から無数の火球がメガサウルたちに降り注いだ。
次々に炎に包まれていくディノサウル。
メガサウルも翼を焼かれ、地面に再び落ちる。
容赦なく降り注ぐ火の雨に、とうとうその体を炎包まれメガサウルは倒れこんだ。
「な、なんだあのドラゴンの大群は・・・」
ボーンの驚く声が聞こえて、上空を見るとドラゴンの大群が翼をはためかせていた。
「ドラゴンが一体こちらに来ますわ。」
マリアが言ったとおり、先頭の緑色のドラゴンがロイドの側ににやってきた。
「オルガだっけ、助かったよ。」
ロイドがお礼を言うと、
「人間、ロイドとかいったか、、別に我々はお前達の加勢に来たわけじゃない。フリューレ様の加勢にやってきただけだ。くれぐれも勘違いするなよ」
「ああ、わかってるさ。」
「あくまでもフリューレ様の護衛として、ついでに、戦ってやろう。くれぐれもディノサウルなんかと間違えて攻撃するなよ、そう、お前達の指揮官にも伝えろ!」
「ああ、助かる!」
ロイドはすぐにマグナスに通信を入れた。
「いまいち事情は飲み込めないが、味方は多いことには変わりない。協力感謝すると伝えてくれ。」
そして
「全TBと飛空挺につぐ、今現れたドラゴンたちは味方だ。みんな思う所はあるかも知れないが、状況が状況だ、共同戦線を張る!各自、間違っても攻撃するなよ!敵に回れたらそれこそ終わりだからな。」
と全体通信がマグナスから入った。
「協力感謝するだってさ」
それを聞いたオルガは
「さぁ、お前達、ディノサウルどもを蹴散らして我々の真の強さ、人間どもに見せつけようぞ!」
グオオォォォオオ!
ドラゴンの大群が空を揺るがすように一斉に咆哮を上げる。
「行くぞ!」
まだまだ沸くように出てくるディノサウルに向かってロイドたちは突っ込んでいった。




