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守るもの

ズズズズ、ズシン ズズズズ、ズシン


重々しい地響きと共に地面が揺れる。


バキバキバキバキ・・・・


立ち並んだ太い木々が、まるでマッチ棒のようにへし折られ、倒されていく。


ギャアギャアギャア


驚いた鳥やそこに住む生き物たちが逃げようとして次から次ヘ森から飛び出す。


タッタッタッタッタッタッタ


その中に、コロピッグというピンクの毛に身を包んむイノシシに似た野獣の姿もあった。コロピックは家畜や愛玩用ペットとしても広く飼育され、人間にとってはなじみのある生物だ。しかし、野生のコロピックは繁殖期になると巣作りのために群れを成して大移動をし、それに巻き込まれで甚大な被害をこうむったフロンティアコロニーも少なくはない。今は丁度そのシーズン、どんどん森の中から飛び出してくる。


グガァァァァアアア


森を覆おう巨大な影の中から分かれるようにして飛び出す無数の黒い影が、歓喜の咆哮を上げながら、

その群れに襲い掛かる。


ブヒィ、ブヒィ、ピギィ、


次から次へと襲い掛かる鋭い牙や爪から逃げ惑うコロピッグたち。


オォォォォォォン


そして、大きな唸り声が空も大地もまるですべてを飲み込んでいくかのように響き渡った。

そしてそれはゆっくりであるが、南へと移動してくのであった。




ブロロロロロォォォ

カンカンカン

「おーい、これはどこへ運べばいいんだ?」

「ちょっとそこ危ないよ、どいたどいたぁ!」

「おぎゃあ、おぎゃあ」

「うぇ~ん、うぇ~ん、ママー、どこぉ!?」

「こっちよ、ほら、はぐれないようにしっかり手を握ってなさい!」


平原の運河の中洲にあるフロンティアコロニー『ドゥム・スピーロー』は、他のコロニーから避難してきた人や中央惑星政府から派遣されてきた人で溢れ返っていた。


ザ、ザ、ザ、ザ・・・。


到着した惑星中央政府軍の飛空挺から、トライルブレイザー通称TBの増援部隊が隊列をなして降りてくる。

あの後すぐにロイドたちにもたらされた情報は、更に過酷を極めるものだった。

「ヒュー、すげぇな、あれ、最新型のTBだぜ」

と、そのTB部隊を指差しながらライが口笛を吹く。

「ああ、それもあんなに沢山。それでもこの危機をしのげるかどうかは不安だな。」

と眉をボーンはひそめた。

「ったくよぉ、テラメノムだっけ?その山みたいな化けモンがこっちに向かってるだけでもオオゴトなのによ、しかもそいつが背負ってる山にはディノサウルとかいうドラゴンもどきの巣があって、そいつらも一緒にやってくるって言うじゃんかよ、こりゃどう考えてもお手上げだぜ、」

と首を振りながら両手を高く挙げるライ。

「そういえば、ロイドはそのディノサウルとやりあったんだろ?どうだったんだ?」

ボーンはディノサウルとの戦闘経験があるロイドに尋ねた。

「ああ、あの牙といい、爪といい、あんなのが大群でこのコロニーにやってきたら、ひとたまりもないだろうな・・・。」

ドラゴンを打ち負かし、そしてそのドラゴンよりも更に獰猛なディノサウル。

・・・あの時は不意を付いたから倒せたものの、正面から遣り合って倒せるもののか?・・・

ロイドが険しい顔をしたときだった。

「おーい、そこの三人、くっちゃべってないで手を動かせや!」

ファン爺がロイドたちに向かって怒鳴った。

「へーい。」


いそいそと三人が向かったのはTBの格納庫だった。

そこに着くとロイドは見覚えのある飛空挺が停まっているのを目にした。

「これは・・・デア・ブルーク号か?」

すると、デア・ブルーグ号から次々と降ろされていく大きな荷物の山のほうから声が掛かった。

「おーい、こっちだ」

そっちに行くと荷物のチェックしている一人の音後がいた。

「手伝ってくれるっていうのはお前達かな?・・・うん?見覚えがある顔だとおもったら、

ロイドじゃないか!」

「あの飛空挺を見てもしかしたらと思っていたが、やっぱりフレッドも来てたんだな!」

久しぶりの再会に握手を交わすロイドとフレッド。

「ロイド、知り合いなのか?」

「ああ、この人はフレッド。この前『フォールキャニオン』でお世話になったんだ。Zui-on社のTB専門技師だよ。フレッド、この2人は俺のハンター仲間のライとボーンだ。」

ロイドはライとボーンそしてフレッドを互いに紹介していく。

挨拶が済むとロイドは山積みになった大きな箱を見上げて言った。

「ところでフレッド、これは何が入ってるんだ?」

「これはじゃな・・・・、」

聞いてくれるのを待ってましたとばかりに、そのうちの一つの箱に付いたスイッチを押した。


パシュ!


開いたふたの中には見たことのない機材が入ってた。

「これはなんだ?」

正体がわからない三人にフレッドは自慢げに胸を張って言う。

「こいつはTB専用フライユニットじゃよ!」


「「「フライユニット?!」」」

 

と驚きの声を上げる三人。

「まぁ、百聞は一見に如かずじゃ、ためしにこいつに装着してみるかのう。ほら、こっちを持ってくれ」

四人は近くにあったTBに箱の中身を装着していった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「こいつはすげぇな・・・。」

フライユニットを装着したTBを見てライが感嘆の声をもらす。

「このウイングを展開して飛ぶんじゃよ、そしてこの背中のバーニアと直結したロケットエンジンが長時間の空中戦を可能にしてくれるんじゃ。このロケットエンジンは燃費がいい上に両脚部につけた予備のエネルギーパッでTB自体の稼働時もを大幅に増やしてくれるすぐれものじゃ!もちろん、これはどんな型のTBにも装着できるようにしてあるから、ロイド、お前さんのにも装着できるぞい。」

「でも、こんなもの本当に必要なのか?」

ボーンは取り付けたフライユニットの各箇所を一つ一つ確かめながら言った。

「ディノサウルだっけか、あいつらはそれを飛ぶんじゃろ、それにテラメノムじゃったか、高さが800メートルもあるっじゃから、地上から攻撃よりも空中からのほうがいいじゃろて。」

「でも、俺たちは空なんか飛んだことないぞ?」

ロイドは困ったように言った。

「なぁに、敵さんがここに着くまで後10日くらいはあるんじゃろ?十分に飛ぶ訓練をする時間はあるわい。」

「そうか、それに出来る出来ないじゃなくて、やらないとだもんな。」

ロイドはぐっとコブシを握り締める。

「そうじゃよ、そのとうりじゃ。あとな、こっち側の箱には対ディノサウル用の武器がはいってるぞい。ロイドが持って帰ってきたサンプルの分析して作ったものじゃ。後で見といてくれ!」

取り扱い注意とかかれた箱をバンバンとたたきながらフレッドは言った。

「そうと決まったら、さっさと始めるぞい!まずはTBにどんどんフライユニットを装着していくぞ!」


それからロイドたちはTBの調整と飛行訓練に追われ、瞬く間に日は過ぎていった。



そして、とうとう決戦の前夜・・・・。


がやがやがやがや・・・

ギルドの中は惑星中央政府のTB部隊をはじめ、周りのコロニーから集まった有志のTB乗り、そしてロイドを含む『ドゥム・スピーロー』のハンター達でひしめき合っていた。

「皆さんお静かに願います。」

みんなが静まりかえる中、中央惑星政府軍の制服を来た壮年の男性が即席の壇上のうえに上がった。

「諸君、私が明日の作戦指揮執る、惑星中央政府軍第5飛空挺部隊旗艦ブレイズの艦長マグナスだ。

明日戦う敵は人類史上例を見ない化け物だ!しかし、我々の力を合わせればきっとこの困難を乗り越え、ここ『ドゥム・スピーロー』に降りかかろうとする脅威を振り払えると私は信じている!

そして明日という日を生き残り、そして今度は共に勝利の酒を飲もうではないか!」

そういうと、片手に持ったグラスを天井に向かって高々と掲げ

「明日の勝利に、かんぱーい!」

    かんぱーい!!!

決戦前日ではあったが、ささやかな宴が始まった。


ロイドは仲間達とひとしきり飲んだ後、夜風に当たろうと、一人ギルドの外に出た。

老人や子供、非戦闘員は皆すでに他のコロニーに避難しており、コロニーの中は静けさに包まれていた。

今夜は満月、ロイドはギルド前の広場の段差に腰を下ろし、月の光に映し出されたモニュメントを眺めた。

このモニュメントはここフロンティアコロニー『ドゥム・スピーロー』が完成したときに記念碑としてここに作られたものだ。

「いよいよ明日か・・・・」

正直ロイドは明日の勝利を微塵も信じていなかった。もちろん、父親達が開拓したこのコロニーを守りたい、その気持ちに偽りはない。

しかし、ハンターとしてこの星で生き抜いてきたロイドにとっては、どうすることも出来ないことだとわかってしまっていた。

それだけに、ロイドは虚しいこの気持ちに苦しくなる。

たとえ明日生き残れたとしても、このコロニーは消える・・・。

「親父・・・。」

そうつぶやくロイドの瞳に、月の光で浮き上がったモニュメントに彫られた碑文が映る。


・・・そういえば、俺がまだ小さな子供だった頃、よく親父はファン爺達と酔っ払っては大声でここの碑文を囲んでは読み上げたいたっけ。そして迎えに来た俺の頭をぐりぐりしながら、

「俺達はよ、ここに書いてある事をいつも胸にな、そりゃぁ色々あったが何とか開拓して『ドゥム・スピーロー』を作る事ができた。だからこうして読み上げるとよ、俺達は希望を胸に明日もどんな困難にも立ち向かって頑張ろうって力がわいてくるんだよ!」

首を傾げる俺に親父は、俺にもいつかわかる日が来るはずって言ったけど・・・・・・・

「まだわかんないよ、親父・・・希望も何もないんだぜ・・・」

「でも、」

とロイドは立ち上がる。

「最後まで親父の作ったこのコロニーを守って戦うぜ!」

と腰のホルダーから抜き放ったガンスラッシュを月に向かって掲げるのだった。












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