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受け継いだ想い

戦闘が始まってもう十数時間の時が流れ、日はすっかり落ち、東の空には月が出てきていた。

ドラゴンの援護にも関わらず、戦況は相変わらずの一進一退で、ディノサウルの数も一向に減ることなく、次々とロイドたちに襲い掛かった。そしてその合間を縫うように、前進を続けながらもテラメノムも衝撃を口から放ってくる。

「くそ、『ドゥム・スピーロー』まで後がない・・・」

数キロ後ろに、運河の中洲にあるコロニーが見えてきた。

「ロイド、あの白いドラゴンが大変ですわ!」

複数のディノサウルに囲まれて逃げようと爪を振るうフリューレがモニターに移った。

しかし、空振りに終わったその背中に尻尾を喰らう。そのままフリューレは力なく落下を始めた。

「フリューレ!」

フルスロットでロケットエンジンを噴かし、ロイドは地面に激突する前に

何とかフリューレを掴む。

「大丈夫か!」

抱きかかえたドラゴンの体が光に包まれて鎧に身をつつんだフリューレが現れた。

ロイドは急いでコクピットのハッチを空けてフリューレをTBの中に収容する。

兜を外し、シートの後ろのほおると、ぐったりとしたフリューレに声をかけた。

「おい、フリューレ、フリューレ、しっかりしろ!」

「う、うん」

目を開けたフリューレを見て安堵の息をロイドはもらした。

「フリューレ、どこか痛むところはないか?」

「う、ん?あれ、あたしは・・・・ここはどこ?」

「俺のTBの中だ。」

膝の上に抱えたフリューレがロイドの顔を見上げた。

「ロ、ロイド?」

「ああ、無事でよかった。」

するとその青い目から急に涙があふれたかとおもうと、

「ロイド、ロイド、会いたかった!」

といいながらロイドの首に手を回してぎゅっとフリューレが抱きついてきた。

「え、あ、フ、フリューレ?!」

突然のことに慌てふためくロイド。

「あらあら、まあまあ、ロイドの彼女さんかしら?」

「あ~あ、ロイドのくせに見せ付けてくれるじゃんかよ!」

「ロイド、隅におけない」

マリアたちの声にはっとなってフリューレは身を離した。

うつむくその金色の髪からのぞく頬が朱色に染まっているのを見てロイドはドキドキしてしまう。

「あ~っと、ロイド、心拍数があがってるぞぉ」

「ロイド、エッチ!」

レイとソフィアがロイドをからかう。

「レイ、ソフィア、そこまででやめてあげなさいな。ところで、ロイド、そのドラゴンのお嬢さんを私達に紹介してくださいませんか?」

「あ、ああ、この人はフリューレだ。この水晶を俺にくれたんだ。」

そうフリューレを紹介ロイドに

「ロイド、今話してる方たちってもしかしてロイドの家族?どこにいらっしゃるの?」

「え~っと、どう説明したらいいんだ?」

とりあえずロイドはフリューレにありのままを説明した。

すると

「きっと、それはマリアさんたちの中にあったドラゴニウムとロイドに渡したこのドラゴニウムの結晶が

そのマリアさんたちの想いに共鳴したからだと思うわ。」

とフリューレはロイドの胸で光る水晶のように透き通ったドラゴニウムに視線を注ぎながら言った。

「これ、ドラゴニウムの結晶だったのか、それにしてもそんなことが起きるなんて・・・」

そう驚いたロイドに通信が入った。

「これより、全飛空挺の最大出力をもってテラメノムに一斉射撃を行う。TB部隊は我々よりも後方に一時避難するように!」

それと共に飛空挺からサイレンが聞こえてきた。おそらくドラゴンたちに対してだろう。

それを聞いたドラゴンたちはさぁっと飛空挺の前をあけた。

「俺たちもいったん下がるぞ」

メガサウルの攻撃で大分飛空挺は減っていたが、それでも20艘近くまだ残っていた。

「エネルギー充填率100%!」

「艦長、他の飛空挺も準備完了との事です!」

「よし、全艦、一斉照射、撃てぇ!」

バシュー!

何条もの光が空を切り裂き、テラメノスの頭、足、背中に突き刺さりそして爆発を起こした。

フォォオオオオオオオオン

苦しそうに体を揺さぶり、そして前のめりになりながら体を地面に倒す。

「やったぞ!」

飛空挺ブレイズのデッキに歓声が沸きあだった。

「やったのか・・・。」

ロイドもその巨体が倒れていく姿をコクピットの中でフリューレと一緒になって見る。

「いやな予感がする・・・」

そうフリューレがつぶやいた。

「え?」

聞き返すロイドに

「ロイド、テラメノムがまた・・・」

一度倒れはしたものの、テラメノムがまたゆっくりと体を起こした。

そして、

グロォォオオオン、グロォォオオオン

テラメノムが口から衝撃を連続して打ち出し始めた。

「ロイド、来ますわ!」

マリアの声に、はっ、となってロイドはその場から離脱する。

後ろにいたTBが巻き込まれて爆発した。

「くそう、ロイド、やばいぜ!」

どんどん打ち出される衝撃に、ディノサウルも巻き込まれていく。

「これじゃぁ敵も味方もないな・・・・」

ボーンがその様子を見ていった。

ドォオン、ドォオン

よけきれない飛空挺が次々と火の手を揚げ、もしくはそのまま爆発していく。

あまりの衝撃の多さに、小回りが利くはずのTBそしてドラゴンたちもその餌食になっていった。

そして、とうとう奥に控えていた旗艦ブレイズに衝撃があたってしまった。

「艦長、左エンジン損傷、エネルギーが低下、推移が保てません。」

「右ブロックに火災発生、このままでは爆発する恐れが・・・」

慌てふためくクルーに

「総員、ただちに本艦から退去せよ!」

飛空挺ブレイズからどんどん脱出用小型艇が出てくる。

マグナスは全員が退去したのを確認すると、全体通信を開いた。

「本艦はこれからテラメノムに向かって特攻する!」

するとその通信にクルーの割り込みが入った。

「艦長、脱出したのではないのですか?まだ間に合います!お逃げください。」

「時代が時代とはいえ、こうしてドラゴンとまた共に戦うことが出来た。ここで、逃げるようなことがあっては彼らに顔向けが出来ん。」

「しかし、艦長!」

「私はこの戦いをも届けることが出来ないが・・・それはお前達に任せる。皆、最後まであきらめるな!」

マグナスは残ったほうのエンジンを最大出力まで開放しテラメノム目がけ突っ込んでいく。

「マグナス艦長ぉー!」

飛空挺ブレイズはテラメノムの背中に激突をし、ものすごい爆発を巻き起こした。

ドゴゴゴゴォーン

テラメノムの体が爆発に飲まれ、爆風がロイドたちを揺さぶった。

普通の飛空挺と違いかなりの重量と大きさを誇る飛空挺ブレイズ号がぶつかったのだ。

誰しもがテラメノムへ相当被害があることは疑わなかった。

しかし、

グロォォオオオン

まるでそんな考えは甘いかというかのように、テラメノムの衝撃が空をなぎ払う。

爆煙をのなかから姿を現したテラメノムは、あの爆発が嘘のように衝撃を撒き散らしながら前進を開始した。

「うあぁぁあああ、たすけてくれぇ」

「くそ、援護はまだか?」

「弾の補充は今どこが担当している?!」

指揮を完全に失い、完全に混乱したTB部隊そして飛空挺にディノサウルとテラメノムの衝撃が蹂躙していく。

「こちら、飛空挺デア・ブルーグ号、マグナス艦長に代わり指揮を執る。各自持ち場にもどれ!」

しかし、完全に崩れてしまったいま、立て直すことは不可能に近かった。

「にげろぉぉ」

一人、また一人と、この混乱した戦場から逃げ出し始めた。

「ロイド、俺たちもそろそろやばくないか?」

ライの通信が入った。

「ロイド、もうここはやばい、逃げよう!」

ボーンからも通信が入る。

「でもそしたら、俺達のコロニーが・・・」

テラメノムと『ドゥムスピーロー』の距離は後わずかもなかった。

「ロイド、このままだと私たちも危ないですわ。」

「ロイド・・・」

マリアの声、そして膝の上のフリューレが不安げに見上げてくる。

離脱しようと転進する飛空挺がいる中、まだあきらめずに戦っているTBが次から次へと倒されていく。

「まだあきらめていない人がいるんだ・・・・戦っているんだ・・・」

・・・・親父、俺はまだあきらめたくない、どうしたらいいんだ・・・

目をつむるロイドの頭の中に父親の顔と、そして父とその仲間が歌っていたあの歌が流れる。

ロイドはその歌を、今の自分の想いとともに口にした。


「   宇宙を漂流し、この星に着いた俺達は

   

    ドラゴンにもらった骨と人の血で作った

    

    この剣を握り締め、ドラゴンと共に歩みだす


    ドラゴンの鋭い爪ほど強くはないけれど、


    空高く舞うあの姿のように気高くはないけれど


    この二本の足で大地を踏みしめる


    たとえ、進む道が血で染まり


    希望を失い絶望の闇に包まれようとも


    この背中に続く者がいる限り


    死を振り返るな


    悲しみを力に 想いを胸に


    受け継いだ命で俺達が希望となり


    引き継ぐ命のために、明日への道を切り開き突き進む!


    それが俺達トライルブレイザー《開拓者》だ!!!   」


「親父、いまなら分かる気がする。もうコロニーは駄目なのかもしれない。でも、今逃げたら、親父の残してくれたこの想いを俺は受け継ぐことが出来ない。たとえ、この戦いが負けなのだとしても、次に俺達の後に続く者にこの親父達の作った『ドゥムスピーロー』に込められた想いを引き継ぐためにも、俺は最後の最後まであきらめず、そして戦い抜く!」

そう、ロイドは言い放った。

すると、

「すっかり、いっちょまえに言うようになったな」

とファン爺から通信が入る。

「いまの、もしかしてロイドか?」

「あの歌は、モニュメントの・・・」

「そうだな、今あきらめたら息子に合わせる顔がないぜ・・・」

「まだあきらめるのは早い、俺もやるぞ!」

次から次えと通信が入ってくる。

予期もしないことに驚くロイドに

「ごめんなさい、ロイド、思わず、外部スピーカーおよび通信の全回線を開いてしまいました。」

「決まってったぜ、ロイド!」

「ロイド、かっこいい」

と、マリア、レイ、ソフィアが言う。

そして、フリューレは黙って笑みを浮かべてロイドにうなずいた。

「ロイド、俺たちもまだまだやってやるぜ!」

とライとボーンがTBの親指を上に突き上げて合図を送ってきた。

ロイドの言葉を聞いていたオルガも

「お前ら、人間にここまで言われて、俺たちも逃げるわけにはいけないよな、いくぞ、お前等!」

と集まってきたドラゴンに渇を入れる

「よし、みんなで、テラメノムをぶっ潰そうぜ!」


「「「「「「「「オォー!」」」」」」」」」」」


ロイドの言葉に、バラバラになっていたみんなの想いが、ひとつになったときだった。


ロイドの胸のドラゴニウムがひときわ輝き


そして、


ロイドをはじめすべてのTBそして飛空挺、ドラゴンまでもが光り輝き始めた。


「いくぞぉ!」

ドォンドォンドォン

飛空挺から放たれたレーザーが今までにない威力でテラメノムを切り裂く。

「これでもくらえ!」

ライフルから放たれた弾が光の矢となって次々にディノサウルが打ち抜かれ、落ちていく。

ゴォォオオオオオ

ドラゴンたちの火球がディノサウルに、そしてテラメノムに降り注ぎ焼く。

しかし、テラメノムも黙ってはいない。次々に衝撃を吐き出して、TB,ドラゴン、飛空挺を巻き込んでいった。


「フリューレ、巻き込んでごめん。」

膝の上に抱えたドラゴンの少女にロイドは謝る。

「ううん、あたしはロイドの傍にいたくてここまで来たの、だから・・・」

そしてぎゅっとガントレットの上からロイドの手を握る。

「わかった。一緒に行こう」

ロイドは背中からだんひらの剣バスターを抜き放ち正眼に構える。

「いくぞ!」

ロケットブースターを全開にしてテラメノムに向かって突っ込んでいく。

「ロイド、前方からテラメノムの衝撃が来ますわ!」

「く、よけられないな、レイ、どうだ?」

「ちょっとむりかな・・・」

「ここまでなのか・・・」

フリューレは鎧の首元から自分のネックレスを取り出し、握り締め

「お願い、力を貸して・・・」

フリューレの手から光があふれ出して、そしてそれはTB全体を包み込んだ。

バシュウゥ

テラメノムの衝撃をかき消し、そして上昇。光の中から現れたのは、白いドラゴンの鎧をまとった黒いトライルブレイザー。その姿はまるで、見たものがいたとしたら、みんなが口をそろえてこういっただろう、竜人と。

そしてその竜人はその何倍もある剣を上段に振りかざし、

「これでもくらえぇええ」

ロイドはその剣をテラメノムの頭にたたきつけた。


ドォォン

テラメノムはその体を真っ二つにされ、そして声をあげることなく、大地に倒れたのだった。

「や、やったぞぉ!」

「勝った、俺達かったんだ!」

「お父ちゃんは、コロニーを守ったぞぉ!」

次々に上がる歓喜の声。

テラメノムが倒されたのを見て、残ったディノサウルはちりじりに逃げ出した。


「終わったんだな」

元の黒いTBに戻ったコクピットの中でロイドは上空からその様子を眺める。

「終わりましたわね、早速ご馳走をといいたいところですが、このままでは何も出来ませんわ。」

「そうそう、早くあたしらの体をロイドに作り直してもらわないとね!あ、でもマロンちゃん人形が

粉ごなだぁ。」

「忘れてましたわ、わたしのメルルちゃんも・・・あれだけでもギルドに避難させとくんだったぁ!」

「プリンちゃん」

マリアたちはお気に入りの人形が体と共に砕け散ったのを思い出し、嘆く。

「マロン、メルル、それにプリン?それってもしかして『ゲッチュー・フェアリー☆』ですか?」

とフリューレの言葉に

「フリューレも、知ってるの?」

「ええ、小さい頃見てましたし、お人形なら全種類三体ずつあるので、一づつでよければ今度持ってきますよ?」

どうやらここにもマリア達以上の隠れた熱狂的ファンがいたらしい。

「まぁまぁ、それはすごく素敵ですわ。ロイド、早速体のほう頼みますわね!」

「やった~、体も新しくなるし、人形ももらえるし、いいこと尽くしだぜ!」

「大感激」

「喜んでもらえてうれしいです。」

「ったくお前達はよぉ。」

そしてコクピットにはみんなの笑い声がこだましたのだった。




     


    

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